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マイクロソフト、AI活用で変わる新しい学びをEDIXで展示
「EDIX東京2024」レポート
2024年5月9日 07:50
教育に関する日本最大級の展示会「EDIX東京2024」が、5月8日から10日にかけて東京ビッグサイト西展示棟で開催されている。
日本マイクロソフトのブースでは「AI in Education」をコンセプトに、教育現場にAI技術を取り入れるさまざまなソリューションを中心に展示していた。
また、特別セミナーとしては3日間で40以上のセッションを開催。さらに、教室形式でMicrosoftソリューションを活用した体験授業(ハンズオン)を教職員などに開催していた。
そのほか、各社の教育向けPCも一斉展示していた。
第15回 EDIX(教育 総合展)東京レポート 目次
渋谷区教育委員会が生成AI導入について語るセミナー
初日のセミナーの1つとして開催されたセッション「渋谷区における生成AIの導入と教員の利活用」では、教員が生成AIを活用するために渋谷区が取り組んでいる内容が紹介された。登壇したのは、渋谷区教育委員会でICT側を担当する林 海斗氏(教育政策課教育ICT政策係 主事)と、教育側を担当する柳田 俊氏(教育指導課指導主事)。
背景として、文部科学省・東京都・渋谷区のそれぞれが教育における生成AIを推進していることがあった。そこでまず、教員向けのAI活用からスタート。生成AIの有効性を教員に実感してもらい、校務の効率化に取り組むというものだ。柳田氏は、教員の役割が変化し、1 on 1に時間をかけるのを実現するためにも、文書作成やテストの採点・集計、トラブル対応などにかける時間を効率化するものだと語る。
生成AI導入の課題としては、生成AIの安全性などについての不信・不安感と、実務でどう使うかの懸念の2つがある。これについて、4つの手が打たれた。
まず、入力したデータがサービス側に収集されて学習などに利用されないよう、Microsoftの「Azure OpenAI Services」と、「Copilot」の商用データ保護を採用した。
2つ目は、教員用生成AIガイドラインの策定。私物のスマートフォンからの利用や、生成物を確認せずそのまま使用することなどを禁止するといった事項を明確化した。
3つ目は、教員研修の実施。全員が受講する全体研修と、より踏み込んだ応用についてリードする人を育てるモデル校研修を予定している。
4つ目は、業務特化型のサンプルAIの作成。高度なプロンプト(質問文)技術がわからなくても業務に精通した回答が得られるよう、生成AIワーキンググループを設けて、プロンプトを作成・調整し、チューニングを行った。
このサンプルAIとして、現在「保護者だより作成」「トラブル対応・相談」「探究学習指導案作成」の3つを作成している。セッションでは、実際にトラブル対応についての相談について、通常のチャット形式のAIに尋ねた場合は一般論が回答されるのに対し、業務特化型のサンプルAIでは、教員がすぐに実践できる内容が回答される様子がデモされた。
今後として、渋谷区教育委員会では、教員1人1人に与えられたMicrosoft 365ライセンスでCopilotをどう活用して業務を効率化できるか模索すると説明。業務の負担を軽減して、教員が子供たちと接する時間を増やせる環境を作りたいとの思いが語られた。
AIで学びを支援する「Learning Accelerators」
展示エリアでは、授業の中で使うための「Students」と、教員が使うための「Teachers」および学校に向けた「Schools」に分けて、Microsoftソリューションが紹介された。
「Students」のカテゴリーでは、AIで学びを支援する「Learning Accelerators」を中心に展示していた。
Learning AcceleratorsのAI音読練習ツール「Reading Coach」では、コンピューターに表示された例文を児童生徒が音読すると、AIが診断や採点をしてくれる。間違った部分や苦手な箇所が表示されるので、教員はそこを重点的に指導できる。さらに、例文もAIが作ってくれるという。
Learning AcceleratorsとしてはほかにもAIを活用したツールが用意されており、プレゼンのスピーチを練習する「Speaker Coach」や、検索におけるファクトチェックなどの情報リテラシーの育成にも役立つ「Search Coach」などが紹介されていた。
そのほかStudentsのカテゴリーでは、Webベースの画像ツール「Microsoft Designer」のAIによる画像生成や編集機能のほか、同じくWebベースの動画編集ツール「Microsoft Clipchamp」のAI機能、動画による教育SNS「Flip」なども展示されていた。
教員の働き方効率化や、クラウドによる学習と教務の一本化
Teachersのカテゴリーでは、元教員の日本マイクロソフト社員が考えた、教員のシーン別にMicrosofftのツール利用による働き方の効率化をまとめた小冊子「元教員が本気で考えた、働き方を劇的に変えるICTの小技 10」を配布。そこで紹介されている、Microsoft Bookingsを使った面談の予約や、Microsoft Formsなどを使った保護者との連携などを展示していた。
Schoolsのカテゴリーとしては、鴻巣市教育委員会の事例を紹介。学習と教務の両方でMicrosoft 365 Educationを使うことで、パソコンのデータ保存の制限や2台持ちの必要などから開放されることを紹介していた。
また、秋田県教育委員会が、Microsoft 365 A5とMicrosoft Azureを採用して統合校務支援システムをクラウド化した事例も紹介していた。
生成AIの教育活用は、今後さらに学び方・働き方改革の手段として学校現場で広がっていくことが想定できる。マイクロソフトのブースにはさまざまな事例やツールが展示されているほか、セミナーも多数開催されており、生成AIの最新実践・事例に触れられる内容となっている。