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生成AIで「伴走する学び」と「働き方改革」を実現、授業・校務に役立つ注目ツールを紹介
―「EDIX東京2025」レポート⑩
2025年5月26日 06:30
教育分野の最新ソリューションが集結する「第16回 EDIX(教育総合展)東京」が、2025年4月23日から25日にかけて東京ビッグサイトで開催された。
今年も各社のブースで生成AI関連のサービスが数多く展示され、教員の業務効率化や児童生徒の多様な学習ニーズに応じた学びの支援、AIとの対話による志望理由書作成支援など、多種多様な製品が見られた。本稿では、その模様をレポートする。
第16回 EDIX(教育 総合展)東京レポート 目次
約9万問から最適な教材を提案する「AIドリル機能」
コニカミノルタジャパン株式会社は、同社が提供する学習eポータルシステム「tomoLinks」に搭載した「先生×AIアシスト機能」のAIドリル機能を提案した。
先生×AIアシストは、児童生徒の学習履歴や解答傾向をAIが分析し、一人ひとりの学習進度や理解度に応じた教材提示を行う。AIドリルは、9万問を超えるデジタルドリルや1万本以上の学習動画と連携しており、教材の豊富さも強みとなっている。習熟度や学習スタイルに併せて、学習方法の選択肢が広がるほか、個別最適な学びの実現を後押ししてくれそうだ。
先生×AIアシストには、児童生徒がチャットでAIに質問できる学習支援機能も搭載。教科の基礎を身に付ける「しっかり学びの場」と、教科・単元に関係なく、児童生徒の興味に沿って深掘りする「探究チャレンジの場」を用意している。
AIのキャラクターや口調を地域または学校のマスコットキャラクターに設定するなど、より親しみやすいようにカスタマイズすることも可能。先生というよりは友達に近い感覚で、学習の伴走をしてくれる壁打ち相手として利用できる。
なお、同社は、すららネット株式会社と連携し、2025年度中に両社のAIを組み合わせた新しい学習支援の仕組みを開始する予定だ。tomoLinksのAIが得意とする包括的な学習定着度分析と、すららドリルのAIによる細かい誤答分析を組み合わせることで、学習のつまずきをより的確に特定し、苦手克服に向けた最適な学びを提案することが可能になる。同社の担当者によると、このAIドリル同士の連携は、初等中等教育における公教育市場では国内初となる試みだという。
さらに、先生×AIアシストを導入した自治体・学校の事例を紹介していた。茨城大学教育学部附属小学校では、自主学習ノートと合わせて活用。90%の児童生徒が「学習を楽しく感じられるようになった」と回答している。
「先生アシストLab」がテストの問題作成から採点までをサポート
ソフトバンク株式会社が開発・提供するのは、教員の働き方改革を支援する生成AIツール「先生AIアシストLab」だ。同ツールは、学習教材や画像をアップロードするだけで、試験問題の作成や採点を自動的に行う機能を備えており、教員の業務効率化を支援する。
先生AIアシストLabでは、学習教材や指導要領、画像をアップロードすると、問題が自動で生成される。問題数や問題形式を選択でき、手書きの教材をPDFで読み込んで活用することも可能だ。作成した問題や解説を編集して、授業や児童生徒に合った内容にアレンジできる。
作成した問題は、生徒にURLで配布。紙で印刷することなく、簡単にテストを実施できる。終了後、ボタン1つで自動採点が可能で記述式問題にも対応。採点基準も、「ひらがなでも正解」「意味が正しければ正解」「特定のキーワードで部分点」など、柔軟な設定が特徴だ。
先生AIアシストLabは、生成AIに関する特別なスキルがなくても簡単に活用できるよう設計されており、生成AIの活用促進と定着化を図ることで、教員の働き方改革をサポートするという。
また、同社は児童生徒の心のケアを支援するツールとして、感情分析の生成AI活用サービス「メンタリ」を提供している。同サービスは、児童生徒のアンケート回答を即座にAIが分析。リスクを検知すると教員に通知する。
リスクが検知された児童生徒は、AIチャットで初期相談を行うことが可能。アンケート結果とAIチャットの内容が教員に共有されるため、面談前の状況把握に役立つ。さらに、心療内科医や専門家が監修した対応アドバイスも提供され、教員が児童生徒の心のケアを適切に行えるよう支援する。
大学入試の志望理由書作成・指導を支援する「副担任mirAI」
大学入試において総合型選抜を選択する生徒が増え、志望理由書や小論文指導の重要度が増している。その一方で、個別指導にかける教員の負担増といった新たな課題も見逃せない。こうした背景から、生成AIを活用した製品が注目を集めていた。
株式会社NOLTYプランナーズが、2025年4月に提供開始した「副担任mirAI志望理由書作成サポート」(以下、副担任mirAI)もその1つだ。
副担任mirAIは、AIを活用して生徒の志望理由書作成を支援するサービス。mirAI先生とのチャット形式の対話を通じて、自己PRとなる「頑張ったこと」や「学びたいこと」などを深掘りする仕組みになっている。
AIは記載項目に関する具体的な質問を投げかけ、生徒の自己理解を促す。これにより、生徒は自身の経験や考えを整理しやすくなり、質の高い志望理由書を作成できるようになる。
教員は「生徒がAIとやりとりした内容」「AIが気付いた引き継ぎ事項」を確認できるため、生徒の指導にかかる業務負担が大幅に軽減されるほか、添削作業が大幅に削減される。モニター利用校では、約80%の教員が指導時間削減と初稿の質向上を実感したという。
児童生徒の思考を深め、所見を自動生成する「ClassCloud」
株式会社Mikulakは、学習・校務一体型アプリ「ClassCloud」に搭載したAI機能を紹介。「ClassCloud」は、AIを搭載した共同編集ホワイトボードを提供しており、児童生徒の成果物や投稿を教員がリアルタイムで閲覧できる。同社はAI機能に関する特許を2つ出願。1つ目はAIが児童生徒の学びを深める「AIリアルタイムフィードバック」、2つ目は学習履歴から所見を自動生成する機能だ。
AIリアルタイムフィードバックは、ホワイトボード上の情報から児童生徒にフィードバックが可能。入力内容に対して質問を投げかけることで、机間指導のようなイメージで児童生徒をサポートできる。
所見の自動生成機能では、ホワイトボードの情報をもとに児童生徒の変容を確認しながら、評価を行う。管理画面では所見の元となる投稿を参照できるほか、児童生徒のチャット履歴も確認可能。また、ClassCloud外での様子も追加情報として読み込むことができる。
生成AIが生徒情報の共有やデータに基づいた指導判断を支援
株式会社ヨリソルは、クラウド型校務支援「ヨミトル」に生成AI機能を搭載。教員の業務負担を軽減し、個別最適な学びや生徒の多様なニーズに対応するための有効なソリューションを提案した。
ヨミトルは、教員と生徒のさまざまな情報を管理・活用できるプラットフォーム。EDIXでは、登録済みの生徒情報からAIが生徒の紹介文を自動生成する機能や、データ分析結果からAIが解説文を自動生成する機能を紹介。教員間での生徒情報の共有やデータに基づいた指導判断を支援する。
AIを活用したテスト機能が搭載されているのも特徴の1つ。教員が登録したテストを生徒が解くと自動採点が行われる。生徒の誤答に対する解説や、苦手克服のための類似設問をAIが自動生成する機能が個別最適な学習支援に役立つ。
生成AI活用が教育分野の大きなトレンドとなるなか、今回のEDIXでは具体的な課題やニーズに対応したソリューションが注目を集めていた。従来の「導入すべきかどうか」という段階から「どう活用するか」に舵を切る流れのなか、これらのサービスは、多忙な教員の業務負担を軽減し、個別最適な学びや児童生徒の多様なニーズに対応するための有効なツールのひとつになるはずだ。