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教育現場の「つながる」と「守り」を強化せよ──EDIXで見たセキュリティとネットワークの最前線
―「EDIX東京2025」レポート②
2025年5月1日 06:30
4月23日から25日にかけて、東京ビッグサイトで「第16回EDIX(教育総合展)東京」が開催された。デジタル化の進展や教員の働き方改革を受け、学校のネットワーク環境に関する展示も注目すべき分野である。本稿では、そうしたネットワークやセキュリティ関連の製品やソリューションを紹介する。
第16回 EDIX(教育 総合展)東京レポート 目次
TP-Link、コスパ重視のWi-Fi 7対応アクセスポイント
ティーピーリンクジャパン株式会社(TP-Link)は、Wi-Fi 7対応の無線アクセスポイント製品を大きく展示した。Wi-Fi 7は、従来の方式に比べて高速で遅延が少なく、同社が現在販売している機器では最大11Gbpsの通信速度をサポートする。これにより、今後さらに活用が進むと見られるデジタル教材において「無線LANが遅くてコンテンツが使いづらい」という課題の解消が期待される。
Wi-Fi 7の高速通信を利用するには、端末側も同規格に対応している必要がある。その点を踏まえ、TP-LinkはWi-Fi 7対応の無線アクセスポイントを、従来製品から大幅に価格があがらないように設定しているという。ブーススタッフによると、「ネットワーク機器は長期間使用するものだからこそ、将来を見通した投資としてWi-Fi 7対応製品を勧めたい」と説明している。
大きな特徴となるのは、同社がアピールする価格だ。TP-Linkは、Wi-Fi 7対応の無線アクセスポイントの導入例として、ハードウェア買い切り型の販売モデルを展開しており、導入時に機器のライセンス費用や管理ツールの費用が発生しない。そのため、保守費用に予算を充てられる点を強調している。
またブースでは、学校のネットワークやセキュリティにTP-Link製品を活用する事例を多数紹介。学生寮向けには、コンセント埋め込み型の無線LANアクセスポイントやWi-Fi 7対応の新製品「EAP720-WE」も展示された。
幼稚園・保育園の見守りカメラとしてはTapoシリーズを展示。アプリを使って園内の様子を保護者にシェアできる。
そのほか、幼稚園・保育園や塾など小〜中規模ネットワーク向けに、メッシュWi-Fi対応の無線ルーター「Deco」シリーズも展示。1台を教室の有線ネットワークに接続すれば、他の教室に設置したDecoを子機として無線で利用できる点が特徴である。
インヴェンティット 広告をブロックできるWebフィルタリング「AdGuard DNS」
インヴェンティット株式会社のブースでは、DNSベースのWebフィルタリング「AdGuard DNS」を展示していた。
AdGuard DNSの特徴は、広告と不適切コンテンツの両方をブロックできる点にある。これにより、詐欺サイトやオンラインカジノなどの不適切な広告の表示を防ぐだけでなく、大量の通信が発生する動画やアニメーションを多用したリッチ広告をブロックできる。学校のネットワークは回線が細く、逼迫する事態も課題になっているが、広告をブロックすることで改善できるという。
またAdGuard DNSでは、ブロックした数や実際の通信数を管理画面で可視化する機能もあるため、ネットワークのアセスメント(調査)にも役立つ、とブースのスタッフは説明していた。
インヴェンティットのブースでは、教育業界でも増えているサイバー攻撃について、グランセキュノロジ―株式会社 代表取締役社長 横濱友一氏が講演を行った。同氏によると、近年はアジア太平洋地域でサイバー攻撃が急増していることに加え、教育機関がセキュリティアップデートの遅れなどから標的になりやすいと指摘。またAIによる自動化された攻撃も登場しており、防御側もAIを活用した対策が求められていると述べた。
ほかにも、横濱氏は複数のデバイスが連携して不正行為を行う「ボットネット」についても取り上げた。実際に数千台規模のデバイスが攻撃に悪用されるケースもあり、学校の端末がその対象になる可能性も有り得るという。今後さらに教育現場のデジタル化を進めるためにも、セキュリティ対策の強化が必須であると語った。
バッファロー 文部科学省の調査項目をカバーしたネットワークアセスメント
株式会社バッファローのブースでは、ネットワークアセスメント(診断)サービスや無線アクセスポイントを展示していた。ネットワークアセスメントとは、学校内のネットワークを分析・診断し、課題がある場合は問題点や改善点を提示するもの。
授業にデジタル教材などが取り入れられるにつれ、「ログインに時間がかかる」「一斉にインターネット接続しようとするとつながらない」といったネットワーク環境の問題が指摘されている。そこで文部科学省では、学校のネットワーク環境の調査(アセスメント)について、補助率3分の1、1校あたり補助上限100万円の「ネットワークアセスメント実施促進事業」を実施している。
バッファローでは、文部科学省が提示する調査項目をカバーしたネットワークアセスメント実施サービスを提供。ネットワーク環境調査と無線調査(Wi-Fi調査)の2種類の調査メニューを用意している。
ネットワーク環境調査は、学校のルーターまたは集約スイッチに測定機器を取り付けて、スループット(通信速度)やレイテンシー(通信遅延)、トラフィック(通信量)などを調査する。また無線調査では、Wi-Fiの電波状況を専用アプリを使って調査して可視化。調査結果は報告書として学校に提出する。
そのほか、同ブースでは校内ネットワーク全体の安定化について、さまざまなケースにおける推奨製品を紹介。例えば、体育館や講堂などでは同時接続可能台数768台(理論値)のWi-Fi 6E対応アクセスポイント「WAPM-AXETR」、各教室用として同時接続可能台数512台(理論値)の「WAPM-AX8R」などを展示していた。
CISCO 教育委員会の事情に合わせた運用管理が可能に
シスコシステムズ合同会社(以下、Cisco)のブースでは、クラウド管理型ネットワークソリューション「Cisco Meraki」や、DNSベースのWebフィルタリング「Umbrella DNS」の展示をしていた。
Merakiは、100%クラウドで管理できるネットワークだ。Wi-Fiアクセスポイントや、ネットワークスイッチ、セキュリティアプライアンスのネットワーク機器を、クラウドで一括管理でき、設定や状態、ネットワーク構成などがクラウドからわかる。なおブースでは、GIGAスクール第2期に向けて、Wi-Fi 7やWi-Fi 6E対応アクセスポイントも展示されていた。
さらにネットワーク機器だけでなく、スマートカメラや温湿度・空気質・ドア開閉などのセンサーも用意されており、それらの情報もクラウドからモニターできる。
ブースでの説明によると、MerakiはGIGAスクールで1万以上の学校で採用されているとのことだった。「運用管理が楽」というのを特徴として、そこが現場に評価されているという。
運用管理が楽になる具体例としては、教育委員会の担当者は任期で交代し、新しい担当者はネットワーク構成を詳しく知らず、図面はあっても増設されていたりするケースがある。Merakiであれば、こうしたネットワーク情報がすぐわかるわけだ。そのほか、運用を業者に任せている場合でも、トラブルが起きたときに早く直すには運用しやすいソリューションが必要と提案しているとのことだった。
Umbrella DNSは、危険なサイトなどへのアクセスをブロックするDNSベースのWebフィルタリングサービスだ。端末からWebブラウザーなどでインターネットにアクセスするときに、アクセス先サイトをUmbrella DNSでチェックし、ブロック対象であれば本物ではなくブロックページにアクセスさせる。
学習系の端末にあらかじめUmbrella DNSのエージェントをインストールしておくことで、アダルトやゲームなどの100ぐらいのカテゴリーについてサイトをブロックできる。広告のカテゴリーも用意されているため、リッチな広告によってネットワーク回線が逼迫したりするのを防ぐこともできる。
Webフィルタリングの中でUmbrella DNSの特徴として、Ciscoが世界中のネットワーク機器から集めて分析した情報をもとにしているため、データソースが新しく正確だ、とブースでは説明していた。
なお、Umbrella DNSと合わせて、校務系のためのSASEソリューション「Cisco Secure Access」も展示していた。SASE(Secure Access Service Edge)とは、社内ネットワークや社内で使うクラウドサービスなどの入口をクラウドに集約して、そこでセキュリティチェックなどを行うものだ。
現在、校務をクラウド化する教育委員会も増えており、その他の部分と合わせてセキュリティを考えるにあたって、CiscoがSASEを提案しているとのこと。実績としては、「大きな教育委員会で3件ほど受注をいただいて、いま構築しているところ」との話だった。