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マイクラ、micro:bit、ロボット、EDIX東京で見たプログラミング教材を紹介
――第13回教育総合展「EDIX東京」展示会場レポート⑦
2022年5月26日 06:35
今年もEDIX東京の季節がやってきた。しかも、今年はなんと4年ぶりの国際展示場ビッグサイト西館での開催となった。昨年、一昨年のコロナ禍と比べて、展示の広さや来場者数も増え、”ビッグサイトよ、私は帰ってきた”感がある。
本稿では、EDIX内の第3回STEAM EXPOを中心にプログラミング教育関連の教材やトピックをお届けする。
第13回 EDIX(教育 総合展)東京レポート 目次
「情報Ⅰ」に使える定番教材からロボットプログラミングまで
今年の4月からはじまった高校の「情報Ⅰ」は、実際に社会で活躍するAIやロボットのプログラミングにまで踏み込んでいるのが特徴の1つ。AIやロボットも既に社会で普及し始め、大手外食チェーンの店舗などでは配膳用のロボットが動き回る時代。子どもの頃からそんなロボットを見ていれば、その仕組みも気になるはずだ。
そんな背景もあってか、EDIXではお馴染みの株式会社スイッチサイエンスのブースで、micro:bitを使った配膳ロボシステムが展示されていた。一生懸命回っているロボが、なかなか健気である。単にロボを動かしているだけでなく、1つのシステムとしてオーダーされたテーブル番号がちゃんとロボに伝わるような仕掛けを実装していた。ここまでの連携が、従来のカリキュラムからのステップアップなのだろう。
また、一部で噂になっていたロボットカーリングも展示。micro:bitのエコシステムの裾野が広がってきた感じがする。
今回のEDIXでは、久しぶりに海外ベンダーの出展も目についた。
こちらもお馴染みのDFRobotは、主力教材である「BOSON」シリーズや、micro:bitを搭載できる3輪駆動のミニロボット「micro:Maqueen」 を展示。Maqueenといえば、やや大型の上位モデル「micro:Maqueen Plus V2」もあるが、展示されていたのは、以前と同じもの。教材として使うには、良いサイズ感なのだろう。
韓国のRoboRisen Co., Ltd.が提供するプログラミング教材「pingpong」は、キューブ型のパーツを中心に組み立てるロボットだ。プログラミングツールも、Scratchベースから、Pythonまでそろえ、AI時代のコーディングに対応していた。
一方で、低学年や未就学児までを対象にした、文字を使わないロボットプログラミングは、相変わらずの人気のようである。ロボットのデザインもかなりこなれてきた印象。この業界でも”カワイイ”は正義なのであろうか。株式会社ICONが展示していた「Kumita(クミータ)」では月額課金のサブスクリプションモデルの提案など、アプローチも変わってきたようだ。
そんな中、ユカイ工学株式会社のブースでは、いつものように面白げなロボットが並んでいた。ピコピコハンマーを搭載したロボットや、単に指を口に入れると吸ってくれるだけのロボット。なんだそりゃと思って、実際に指を入れてみたら、懐かしい感覚が。赤ちゃんの口に指を入れると吸われる、あの感覚を再現したとのこと。うーん、こういうのもありか。
広がるプログラミング教室向け教材の裾野
小学校でのプログラミング教育が既に必修化していることもあってか、学校向けというよりは民間の教室向けのプログラミング教材が目についた。中には0才からのプログラミングから、大学入試を踏まえてしっかりプログラミング的思考を養うことを謳うものまである。
また今回のEDIXは、ブースセミナーも多数開催されており、来場者が実際に触って体験できる場も充実していた。ほかにも、民間スクールがプログラミングを扱いやすいよう、独自のタブレットアプリを開発したり、専用テキストやワークブックを取りそろえるなど、サポートを充実させている企業も多かった。
マイクロソフトブースでも教育版マインクラフトの体験セミナーが開催
マインクラフトを使ったプログラミング教育を展示しているブースも何カ所かあった。筆者が見かけたのは、プロマインクラフターのタツナミ氏が構築したワールドを利用してプログラミングを学ぶ「プロクラ」(株式会社KEC Miriz)と、進行用プログラムに従ってマインクラフトとMakecodeを使って課題を解決していく「くらふとらーにんぐ」(システム・エボリューション株式会社)である。
そして、なんと日本マイクロソフトブースでも、さまざまな教育ソリューションを紹介するのに加えて、教育版マインクラフトの体験セミナーをやっていたのには驚いた。机に並んだSurfaceとWindows PCを利用し、この3月にリリースされたワールド「活動する市民(Active Citizen)」をやってみるミニセミナーだ。
別の時間枠では、マインクラフトを使った教育活動に長年取り組まれている、MIEE(マイクロソフト教育イノベーター)が登壇した映像パネルディスカッションも行なわれ、関心を集めていた。特に教育系ユーチューバーでもある青山学院中等部講師の安藤氏は、プログラミング環境としてのマインクラフトについて熱く語っており、「マイクラだけでいいんじゃないか」とまで言っていた。
この日本マイクロソフトのブースの壁面には、「活動する市民(Active Citizen)」に登場するキャラクターの中の3人(ノーベル氏、ワンガリ・マータイ氏、マララ・ユスフザイ氏)が描かれており、ちょっとした撮影スポットになっていた。当然のように、写真を撮ってもらったが、一生懸命、腕を上げたつもりがあとで見たら全然だった。
なお、EDIX東京前にご案内したように、インプレスのブースには教育版マインクラフトの解説冊子が置かれていた。多くの教育関係者にお持ち帰りいただいたようである。6/15~17に開催されるEDIX関西(会場:インテックス大阪)でも配布予定と聞いているので、関西方面の方も是非お手にとって頂きたい。
変わるGIGAスクール以降のプログラミング教育の意味
老舗の株式会社アーテックは、今回も広いブースで多数の教材を展示。小学校から高校、さらには大学まで活用できるプログラミング教材を並べていた。
くもん出版のブースでは、元小金井市立前原小学校の校長で、現在は合同会社MAZDA Incredible Lab CEO松田孝氏によるミニセミナーが行なわれていた。
松田氏によると、GIGAスクール以降、児童たちはかなりパソコン慣れをしているようだ。当たり前のように使えるタブレット端末が手元にあれば、子どもたちは大人が思う以上のスピードで慣れていく。キーボード入力にしても、苦手意識が芽生える前に遊びながら習熟していける。
そういう意味で、「キーボードが怖くないなら、最初からテキストプログラミングでもいいのではないか」というのが松田氏の主張の1つ。高校の情報Ⅰまでの流れを見て、Python、JavaScriptにつながるIchigoJam Basicを提案されていた。IchigoJamと聞くと基板から完成させる子ども向けパソコンのイメージが強いが、現在ではWebベースで使える「IchigoJam Web」もあり、GIGA端末でも手軽に使えるテキストプログラミング環境の1つになっている。
子どもたちの周りでは、Scratch、Viscuitといった親しみのあるプログラミング環境から、社会で使われているプログラミング言語、教育版マインクラフトと実にさまざまなものが使えるようになってきている。
そんな中、「当人たちにとって意味のある活動にプログラミングを使う」ことが肝心で、思いついたときにプログラミングでき、話し合える仲間がいる場所がますます重要になってくるだろう。GIGAスクール以降、学校のクラブ活動の充実もさることながら、より広い社会の受け皿として、地域の良心的なプログラミング教室は選択肢になっていくのかもしれないと思った。