トピック

学校が変わり始めた!先生と子どもが幸せに学ぶために、テクノロジーが実現できること

――EDIX東京 日本マイクロソフトブース 特別レポート

EDIX東京 日本マイクロソフトブース

学校現場でテクノロジーの活用が当たり前になった今、次に実現すべき教育は何か。

学び方や教え方も1人1台端末の活用で少しずつ変わり始め、従来の制度や仕組み、学習内容などの見直しも始まっている。こうした変化に対して、「教育DX(デジタル・トランスフォーメーション)」や「学校DX」という言葉も聞かれるようになり、学校現場は、テクノロジーを単に“使う”だけでなく、テクノロジーを活用してどのように教育を“変えていく”のかが求められるようになった。

こうした問いに対して、日本マイクロソフトは、個別最適な学びの実現に深く関わる「ウェルビーイング(Well-being/幸福度)」の考え方を重視している。同社が提案する、これからの教育に必要なものは何か。2022年5月11日~13日に開催されたEDIX東京の同社のブースをレポートする。

教育版マインクラフトキャラクターがお出迎え。居心地の良い学校を再現

日本マイクロソフトのブースに着いてまず目に飛び込んでくるのは、ブース横の壁一面に描かれた教育版マインクラフトのキャラクターたちだ。これは2022年3月にリリースされたワールド「Active Citizen(行動する市民)」に登場するノーベル平和賞の受賞者たち。

大人の教育関係者しか集まらないEDIX会場の中で、子どもたちに大人気のマインクラフトのキャラクターが大きく描かれていたのは意表を突く演出で、思わず、大人もほっこり。ウェルカム感が伝わってくる。

ブース横に描かれた「Active Citizen」のキャラクター。左から、マララ・ユスフザイ氏、ワンガリ・マータイ氏、アルフレッドノーベル氏

ブースは、木目調で温かみある雰囲気が醸し出されていた。細部に竹やグリーンの樹木を施して、自然の中にある「新しい学校」をイメージ。教室の内、外に関わらず、ICT環境さえあれば、時間や場所にとらわれず、学びが継続できることを表現したという。

日本マイクロソフトのブース。自然の中にある「新しい学校」をイメージし、児童生徒や教員たちにとって居心地の良い空間を演出

また、黒板と机を並べたミニセミナーのスペースでは、オンライン授業が体験できるようになっていた。通常、EDIXのブースでは各講師が対面でセミナーを行なうケースが多いが、マイクロソフトブースでは講師が後ろのブースで解説し、オンライン授業のように講師の顔を前のモニターに映し出すセミナーが展開されていた。講師はリアルタイムで来場者の反応を見ながら進めることで、オンラインでもつながりを感じられる学びが再現されていた。

ソーシャルディスタンスを保ちつつ、少人数のオンラインセッションや個別授業を体験できる
ブースには校門も設けられ、さながら先生のための学び舎という雰囲気

教育版マインクラフトやFlipgrid、クリエイティブな学びで教育の質の向上をめざす

ブースセミナーでは、校務に役立つMicrosoft 365の活用法やアクセシビリティ機能の紹介、さらにはMicrosoft Surfaceの製品紹介やセキュリティ対策まで、さまざまな情報収集や体験ができる講座が用意されていた。

その中のひとつ、教育版マインクラフトを実際に体験できるセミナーでは、来場者が足を止めて、熱心に見ていた。以前であれば、教育版マインクラフトと言っても知らない教育者も多かったが、昨今は知名度も広がり、「実はやってみたい」と話す教育者が増えている。

同セミナーでは、ノーベル平和賞受賞者が登場する「Active Citizen(行動する市民)」のワールドを体験していた。このワールドでは、それぞれの受賞者たちがどのような活動を通して社会平和に貢献したのか、教育版マインクラフト (Minecraft: Education Edition) の中で学べるようになっており、平和へのビジョンを持つことが学習のねらいとなる。

社会全体のウェルビーイング(幸福度)を促進するためのマインドを、子どもたちの大好きな教育版マインクラフトで育むというわけだ。

ノーベル平和賞受賞者が登場する「Active Citizen(行動する市民)」のワールド

来場者は、ケニアのグリーンベルト運動でノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイ氏のストーリーに挑戦。マインクラフトの中に登場するワンガリ氏に話しかけることで、ケニアが抱えている課題が示され、教育版マインクラフト内に再現された世界で、それらの課題を克服しながら学習を進めていく。

子どもたちは楽しみながらノーベル平和賞受賞者の功績を仮想的に体験することで、より良い世界のあり方について考えられるようになっている。

オンライン授業形式で操作方法も丁寧に解説
ワンガリ氏に話しかけることで課題をクリアしていく

このような学習に教育版マインクラフトを使うメリットは、何といっても“子どもたちが大好きだから”の一言に尽きる。マインクラフトというだけで、学習にワクワクし、自然と子ども同士のコミュニケーションが活性化され、コラボレーションが生まれるからだ。それは、教育版マインクラフトを学びに取り入れた多くの教育者が語っていることだ。

教育版マインクラフトには、学校の授業で活用できるワールドが多数用意されている。今回の「Active Citizen」のようなウェルビーイングに関わるものから、インターネット上での正しい振る舞いを身につける「CyberSafe:Home Sweet Hmm」といったものなど、Future-ready skillsと呼ばれる、将来に必要な知識やスキルが学べるワールドが充実している。

多様なテーマを扱う教育版マインクラフトのワールド

もうひとつ、マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)によるパネルディスカッションも紹介しよう。「英語教育や外部との連携」と題したセッションでは、工学院大学附属中学校・高等学校の中川千穂教諭、青森県つがる市立森田小学校の前多昌顕教諭、兵庫県立視覚特別支援学校の圓井健史教諭の3名が登壇し、マイクロソフトが提供する教育向け動画ソーシャルプラットフォーム「Flipgrid」の活用事例について語られた。

司会:日本マイクロソフト田中達彦氏(画面左上)、兵庫県立視覚特別支援学校の圓井健史教諭(右上)、工学院大学附属中学校・高等学校の中川千穂教諭(左下)、青森県つがる市立森田小学校の前多昌顕教諭(右下)

Flipgridは、動画による投稿やコメントを通じて子ども同士が交流できる教育向けのプラットフォーム。前多教諭はFlipgridの良さについて、非同期で交流できるところを挙げる。「小学校の場合、海外と交流学習をするには時差の調整が大変なのですが、Flipgridの場合は非同期なので、互いの良い時間帯に取り組めるのがいいです。リアルタイムの交流では緊張して話せない子も、Flipgridでは自分のペースで取り組めます」と同教諭は話す。

Flipgridのサイトページ。無料で利用可能。世界中で使われている

「Flipgridは、生徒たちが多様性に触れられるのが良いです」と語るのは中川教諭。いくら多様性が大事だと言われていても、生徒たちが学習の中でそれを体験するのはむずかしい。「その点、Flipgridであれば、伝える相手が見えて本物の英語で交流する機会をつくりやすいです。海外の生徒と話す中で多様性に触れ、アイデンティティーを感じ始め、自分の独自性に気づいていくような深い学びができます」と話す。

圓井教諭は、「動画を投稿する、コメントを書くなど、SNSのように交流できる点がメリットです」と言及。教員が見守りながら、子どもたちがSNS上での振る舞い方などを学べる点が良いという。「将来に必要なスキルを育てていけるツールであると思います」と同教諭は述べた。

このように、これからの学びはさらにテクノロジーの活用が進み、どんどん外の世界に広がっていくだろう。前多教諭は「どこに住んでいようが、地球全体が教室だと思って使えるツール」と述べており、Flipgridがもたらす可能性を語ってくれた。

これからの教育に必要なソリューションとは?

ブース内では、マイクロソフトが考える、これからの教育に必要なソリューションについて、テーマごとに「~~先生」と名付けられたテーブルが用意されていた。個人授業のような雰囲気で話せる演出が醸し出されている。

「公正な教育実現先生」のテーブル。ほかにも、「安心安全セキュリティ先生」「授業支援先生」など、さまざまな先生テーブルがあった

マイクロソフトでは1人1台端末の活用が当たり前になった今、より一層、教育の質の向上を図るためには、「インクルーシブなデザイン」「ウェルビーイング(幸福度)を促進する」「学びを加速する」という3つの環境が重要だと提案している。コロナ禍で、すべての児童生徒にとって公正な学びを提供する大切さが再認識され、次に求められる教育環境も変わってきているのだ。

マイクロソフトが提案する、これからの教育に必要な環境

●インクルーシブなデザイン
だれ一人取り残さない学びを実現するためには、インクルーシブな環境が求められるが、これはマイクロソフト製品を使うことで環境が整備できる。同社の製品にはアクセシビリティが標準搭載されており、身体的な不自由だけでなく、コミュニケーションの不自由に対しても、さまざまなツールが用意されている。

たとえば、教育現場で重宝されているのが、音声読み上げ機能「イマーシブリーダー」だMicrosoft WindowsとMicrosoft 365に標準搭載されており、学習する際の困難を軽減してくれる。また日本だけで提供されている機能になるが、UDデジタル教科書体も標準搭載となり、合理的配慮も実現している。

さらに昨今増えているのが、母国語を日本語としない子どもたちへの配慮だ。これにはMicrosoft Translatorが有効だという。Microsoft PowerPointでプレゼンテーションをする際など、プレゼンターの声を自動字幕で表示し、内容理解を促せる。学ぶ上でのさまざまな壁や、ハードルをテクノロジーで取り除き、より学びやすい環境を提供している。

ブースセミナーでは、さまざまなアクセシビリティを紹介。イマーシブリーダーを体験する場面も

●ウェルビーイング(幸福度)を促進する
コロナ禍では、学校に行きたくても行けない状況が続いたり、学校に行っても学校行事や部活動が制限されたりと、思うように楽しめず、ストレスを抱える児童生徒が増えている。そんな子どもたちの心のケアが重視されるようなり、児童生徒のウェルビーイングを高めていくことが大切になってきている。

マイクロソフトでは、児童生徒の心の状況を把握するツールとして、Microsoft Teams for Education(以下 Teams)の中に「Reflect(リフレクト)」と呼ばれるアプリを追加した。朝、教員が「今日の気持ちを教えてください」と質問を簡単に送ることができ、児童生徒は、その日の気分や学習に対するモチベーションなど、自分の気持ちや感情に合ったマークを選び、に伝えることができる。

こうしたやり取りを通して、教員に自分の想いを伝えるだけでなく、児童生徒自身がさまざまな感情を認識し、自分はどんな気持ちなのかを把握するのにも役立つという。感情を可視化することで、何か困っている児童生徒に対して、早い段階で手助けできるのもメリットだ。

児童生徒の心の状況を把握するツール「Reflect(リフレクト)」。自分の気持ちを選んで教員に送る

またTeamsでは、「称賛」アプリを使ってバッジを送り合う機能もある。教員から児童生徒へ、あるいは児童生徒同士で、感謝や称賛の気持ちを送り合うことで、互いに自己肯定感を高め、ウェルビーイングを満たしていくことができる。ほかにも、教員は児童生徒に送った称賛バッジを集計する機能もあり、声掛けの振り返りに生かすこともできるという。

Teamsでは、仲間や教員に称賛バッジを送り合うこともできる
現在、使えるバッジは12種類

●学びを加速する
コロナ禍では世界中の教育現場でテクノロジーの活用が進み、この数年で学習効果を高めるようなサービスが数多く生まれている。マイクロソフトがリリースしたAIを活用した音読の練習機能「Reading Progress(音読の練習)」もそのひとつ。これはTeamsのアプリで、教員はTeamsを通して音読の課題を割り当てることができ、児童生徒から提出された音読データはReading ProgressによってAIが正解度を判定する。

教員画面では、児童生徒が提出した音読の間違った部分や正解度が一目でわかる

教員がすべての生徒の音読データを聞くのはむずかしいが、Reading Progressを使うことで教員の負担を軽減。一方、生徒の方も何度も練習して正解度100%めざしたりするなど、やり直しをしながら熱心に取り組むケースもあるという。自分の音読結果が可視化されることで、自信を持ったり、達成感につながるようだ。

このように、今回のEDIX東京に出展されたマイクロソフトのブースでは、さまざまなソリューションを見ることができ、教育がさらに進化していく未来を感じることができた。ほかにも、これからの教育に欠かせない安心安全なセキュリティ環境や教員の働き方改革、さらには端末管理・運用など、多くの課題解決につながるソリューションが展示されおり、”これがあれば、教育はもっと良くなる”を実感できた。

日本マイクロソフトでは、そうしたソリューションをまとめた冊子を会場で配布しており、同社のサイトでも公開している。ぜひ、この機会に手に取って未来の教育に役立てていただきたい。

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