レポート
製品・サービス
幼稚園や保育園も進むIT化。連絡帳から学習ロボットまで、ITツールがどんどん身近に
――第13回教育総合展「EDIX東京」展示会場レポート⑭
2022年6月14日 14:03
2022年5月11日から3日間にわたって開催された第13回教育総合展「EDIX東京」では、保育園や幼稚園に向けた製品・サービスを展示する「保育・幼稚園ICT化 EXPO」も同時開催された。保育士の働き方改革や、保育・教育の質を高めるのに有効なソリューションが数多く展示。本稿では、今年の春に保育園から幼稚園へ進級した子どもを持つ筆者が保護者目線を交えながらレポートする。
第13回 EDIX(教育 総合展)東京レポート 目次
業務の効率化と、保育・教育の質向上もめざすICTシステム「コドモン」
保育園や幼稚園、学童保育など、さまざまなこども施設で活用できるICTシステム「CoDMON」(以下:コドモン)は、登降園管理や入退室管理、保護者連絡、帳簿作成など日々の業務を効率化できるツールだ。アプリの操作もシンプルなうえ、保育料の計算やシフトの管理といった事務処理までトータルにサポートする機能が充実している。
なかでも目を引いた機能は、デジタル連絡帳だ。タブレットやスマートフォンからコドモンの保護者アプリを使って、保育者が検温や午睡・給食の状況などを簡単に入力ができ、写真付きで保護者に共有できる。業務時間を削減できたうえ、保育者が子どもたちに目を向ける時間が増えたと、導入園から好評だというのだ。
また写真付きの連絡帳を通して、子どもたちの活動を視覚的に記録する活動は、「保育ドキュメンテーション」と呼ばれる、保育や教育の質を向上させる方法のひとつとして注目を集めている。活字だけでなく写真で記録を残すことで、子どもたちは今どんな活動に興味があるのか、一人ひとりに目を向けることができる。
子どもたちの日常の細かな変化を保育士同士で共有し、それを保護者と共有することで活動に対する理解もより得やすくなる。コドモンではICTによる業務改善とあわせて、こうしたドキュメンテーションの活用をサポートし、保育や教育の質の向上を後押ししている。
英語指導が未経験の先生も使える、英語学習支援システム「パパッとえいご」
2020年度から小学校で英語教育が必修化されたことを受け、幼児期からの英語教育の需要が高まっている。未就学児の習い事ランキングでは、水泳に次いで英会話・英語教室が上位に。そうしたニーズに合わせて、降園後の課外活動に英語教育を取り入れる園も増えており、大手英会話スクールのECCは、幼稚園・保育園向けに英語学習支援システム「パパッとえいご」を提供している。
パパッとえいごは、園のテレビと専用端末をつなぐだけで、英語の指導経験のない先生でも簡単にレッスンが行なえる学習支援システムだ。現在、ECCジュニアでは降園後の幼稚園・保育園に英語講師を派遣する事業を展開しているが、パパっとえいごは講師を派遣できないエリアに好評だという。
専用端末には子どもの発達特性に応じたカリキュラムが収録されており、体操や歌、英語による絵本の読み聞かせや単語の学習が行なえる。週1回の固定の曜日で実施される課外活動や、朝の短い時間を利用して毎日取り組めることも魅力的だ。導入後は専任スタッフによるサポートに加え、保護者向けに活動の内容を伝える「えいごだより」を発行。保護者としても、子どもが幼稚園でどのようなレッスンに参加しているか知る機会があるのがうれしい。
ECCジュニアではパパっとえいごの他にも、英会話とプログラミングを組み合わせたコースを展開している。幼稚園の定員割れが課題となっているが、こうした多様なカリキュラムの導入は園を選ぶうえで魅力につながりそうだ。
自動撮影カメラを活用して、日常の園生活を自然な表情で撮影できる
株式会社フォトクリエイトが提供するスクールフォト販売サービス「スナップスナップ」は、カメラマンが撮影した学校行事などの写真を閲覧・購入できるサービス。同社はキャノン株式会社が開発した自動撮影カメラ「PowerShot PICK」を活用して、保育施設の撮影を自動化する新サービス「自動撮影カメラプラン」を開始。EDIXの会場では、そのデモを披露した。
PowerShot PICKは、自動で人の顔を検知して撮影できる自動撮影カメラ。360度回転が可能で、たとえば保育室のテーブルに置くだけで、子どもの日常活動を自然な表情で撮影することができる。
保育園や幼稚園では通常、先生が撮影するケースと撮影事業者に依頼するケースに分かれる。小規模の園では保育士や教職員が撮影することも多く、そうした場合は、撮った画像を選別し、写真を壁に掲示するといった業務が発生する。
一方で、PowerShot PICKは撮った写真を自動的に選別し、半目やブレなどの失敗ショットは失敗フォルダに振り分けられる。園は月に一度、撮影した写真を「スナップスナップ」に転送するだけで、保護者への販売、発送を一任できる。コロナ禍で行事が縮小し、保護者の参観が減るなか、教職員の業務を増やさずに、子どもたちの日常風景や成長記録を写真に残せるのは保護者としても嬉しいサービスだ。
園バスの位置をLINEで知らせてくれる「バスwaCoCo」
1,200施設以上でIP無線機の導入実績を持つ株式会社ニシハタシステムも、EDIXに出展。ボタンひとつでつながり、大規模災害時でも発信規制の影響を受けないIP無線機は安心への備えとして多くの園で導入されている。NTTドコモの電波か、Wi-Fiが使える環境であれば、屋内や地下に関係なく日本全国で利用可能だ。
同ブースでは、園バスの位置をLINEでお知らせしてくれるバスロケーションサービス「バスwaCoCo」も紹介。IP無線機とあわせて活用する機能で、「時間になってもなかなかバスが来ない」、「余裕だと思って向かったが、すでに到着していた」という事態を解消してくれる。
バスwaCoCoを使うと、現在園バスがどこを走っているのか、LINEに地図が送られてくる。園側は朝の忙しい時間帯に舞い込むバスへの問い合わせが減少し、保護者側はバスを待ち続ける不安を解消できる。幼稚園・保育園だけでなく習い事や学童の送迎でも活用できそうだ。
AIロボット「ユニボ」が褒めてくれる新たな学習システム
古河産業株式会社のブースでは、株式会社エデュゲートが展開するロボット先生「ユニボ」が目を引いた。これはユニロボット社が開発したロボット「unibo」との会話によって学習を進める学習支援システムで、都内の個別指導塾や算数教室に導入されている。
「(問題が)合ってた? 間違ってた?」と話しかけてきたり、会話の内容によって液晶に表示された表情が泣いたり、笑ったりとくるくる変わる様子が愛らしい。
ユニボ先生を使った学習は、まずIDカードをユニボにかざし、各問題集に印刷されたQRコードを読み込んで行なう。ユニボと会話しながら提示された問題を解き、その正誤に応じて短い解説動画を提示する流れだ。学習内容は学年に応じた教科学習を中心に、小さい年齢に向けた簡単なゲームも展開している。
株式会社エデュゲート代表の鈴木博文氏によると、ユニボを使った学習は教員とのコミュニケーションが上手くいかない子どもこそ、高い親和性が見られるという。なかなか教員に「分からない」と言えない児童が、ユニボが相手だと素直に「分からない」と言えるそうだ。
また、広島県三次市では小学校の複式学級で実証事業が行なわれており、1人の教員が複数の児童を指導するシーンで活躍している。エデュゲートではユニボと連動して、家庭での学習を提供するアプリ「ユニボ算数」も配信。児童生徒の学習履歴を保存し、学習状況を確認できる機能も開発している。
直に触れ、会話できる存在としてロボットを活用することは、子どもたちの学習意欲を刺激する良いきっかけとなる。タブレットや電子ドリルを活用した学習に並んで、こうしたロボットを活用したソリューションが広がることを期待したい。
以上、「保育・幼稚園ICT化 EXPO」で展示されていた製品・サービスの一部をお届けした。子どもが小さいうちは、保護者も手がかかるため、園側がICT活用を進めてくれると家庭の負担も減る。良いサービスを活用し、互いの負担軽減や多様なサービスが受けられる環境に今後も期待したい。