ニュース
Polaris.AI、文科省の教育分野特化型生成AI実証事業に採択
AIで特別支援教育における教員の業務負担軽減を目指す
2025年10月23日 08:10

東大の松尾研発スタートアップであるPolaris.AI株式会社は、文部科学省が実施する「学びの充実など教育課題の解決に向けた教育分野特化の生成AIの実証研究事業」において「特別支援における支援計画等の作成支援による教員の負荷軽減・指導力向上や、自立活動の深化の実現」が採択されたと発表した。特別支援教育における負担軽減と質向上の実現を目指す。
特別支援教育の現場では、児童生徒一人ひとりに応じた「個別の指導計画」を作成する必要があるが、それには学習指導要領や障害・発達段階の理解、自立活動の6区分27項目への理解などが求められる「高度な専門知識の必要性」、一人ひとりの障害の状態に応じて計画を作る「根拠ある計画立案の必要性」、各教科間のつながりや過去の計画との連続性を考慮する「複雑な横断的思考の必要性」といった課題がある。若手教員にとって難易度が高く、教員の経験に左右されないサポート体制が必要とされている。
同事業では、この課題を解決するため生成AIを活用し「専門知識の即座な提供」と「対話型の計画作成支援」を実現。障害種別に応じた指導方法や発達段階に適した手立て、学習指導要領に基づく学習目標など、必要な専門知識を根拠とともに提案、教員の経験や意図を尊重しつつ、目標の適切性や効果的な手立てを説明する。
実証事業の技術的な特徴として「LLMの動的ワークフロー制御(AI Agent)技術」を採用する。これは、単純な質問応答を超え、複雑なタスクを自律的に遂行する最先端技術で、あらかじめ決められたフローではなく児童生徒の実態に応じてAI自身が最適な計画策定プロセスを動的に組み立てる「静的な制御を超えた自律的思考」が可能となる。
さらに、AIが自身の出力を評価し修正する「Reflection技術」を導入することで、計画案の品質向上を図る。RAG(Retrieval-Augmented Generation)技術も組み合わせ、学習指導要領や専門書、過去の指導計画データなどを効果的に参照し、根拠ある提案を実現する。
今後は、特別支援教育における負担軽減と質の向上を実現し、将来的には通常学級における不登校児童生徒や外国にルーツのある児童生徒から、すべての子供に対して「個別最適・協働的な学び」の実現を目指すという。