【連載】高橋暁子の「親と先生の気になるネット」

未成年のSNS利用をどう見守る? 学校と家庭でできる対策とは

ネットは日々変化し、子供たちを取り巻く環境も大きく変わっています。本連載では、ITジャーナリスト・高橋暁子さんが、保護者や先生が知っておきたい最新のネット事情をわかりやすく解説します。

夏休みも終盤に差し掛かってきた。子供たちがスマートフォンやインターネットに触れる時間がいつもより増え、不安を感じている保護者も多いのではないだろうか。長期休暇は、SNSによるトラブルが増える時期でもある。「うちの子は大丈夫」と思っていても、ネットの向こうではさまざまな危険が潜んでいる。

今、SNSをめぐって国内外でどのような被害が起きているのか。そして、子供たちを守るために、学校や家庭で何ができるのか。動向を踏まえながら考えてみたい。

「まだ小学生だから」は通用しない、低年齢化するSNS利用と被害

子供たちが巻き込まれる犯罪やトラブルは、 SNSがきっかけ となるケースが増えている。「まだ小学生だから大丈夫」と考える保護者もいるかもしれないが、今や、SNSは小学生にとっても身近な存在だ。

こども家庭庁の「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果」によると、スマートフォンを利用している10歳以上の小学生のうち、「主にSNSをしている」と回答した割合は68.2%。中学生では90.0%に達している。

さらに気がかりなのが、低年齢の子供たちの利用だ。スマートフォンやパソコン、タブレット端末、学校から配布された端末など、インターネットを利用できる機器全体で見ると、6~9歳でも21.4%がSNSを利用していることがわかった。

6歳から9歳の21.4%がSNSを利用(出典:「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果」こども家庭庁)

多くのSNSでは利用規約で13歳以上という年齢制限が設けられており、LINEも12歳以上の利用が推奨されている。それにもかかわらず、実際には多くの小学生がSNSを利用しており、被害に遭うケースが後を絶たない。

実際、警察庁の「令和7年における少年非行及び子供の性被害の状況について」によると、SNSをきっかけとした未成年者の性被害は高止まりしている。中でも、誘拐などの重要犯罪は増加傾向にあり、 小学生の被害は過去最多 となった。

小学生の被害(年齢別・性別・罪種別)(出典:「令和7年における少年非行及び子供の性被害の状況について」生活安全局人身安全・少年課)

年齢に合ったアプリを利用し、正しい年齢で登録を

こうした被害が起きているのは、日本だけではない。オーストラリアでは16歳未満のSNSを規制しているが、それに踏み切る発端となったのも、当時16歳の少年が受けた性被害だった。ネット上で18歳と名乗る女性から求められ、裸の写真を送ったところ、相手は中年男性で、金銭を要求された上、写真を拡散される被害に遭ったという。

では、年齢による利用規制は、効果を上げているのだろうか。英国の医学誌に掲載された調査によると、オーストラリアでSNSの利用を禁止された16歳未満のユーザーのうち、85%が規制後もSNSを利用していたという。年上の友人にアカウントを作ってもらう、規制対象外のSNSに移る、VPN(仮想プライベートネットワーク)で国外からのアクセスを装うなど、子供たちはさまざまな方法で抜け道を見つけている。

一方、日本で議論されているのは、SNSそのものの利用禁止ではなく、年齢確認の厳格化だ。そもそもSNSは幼い子供にとって使いこなすのが難しく、リスクが大きい。まずは、年齢制限を守り、それに満たない子供は使わない。それだけでも、子供がリスクにさらされる機会を減らすことにつながる。

また、対象年齢に達した後も、正しい年齢で登録することが重要だ。SNSによっては、知らない大人からのメッセージやコメントを制限する「 ティーンアカウント 」など、年齢に応じて子供を保護する仕組みが用意されている。大切なのは「はやっているから」「みんなが使っているから」という理由だけでSNSをやらないこと。自分の年齢に合ったアプリを利用し、正しい年齢で登録する大切さを子供たちにも伝えていきたい。

小学生のネット利用は約4時間、高校生は6時間44分

子供のインターネット利用では、利用時間の長さも注意したいところである。こども家庭庁の前述の調査によると、インターネットを利用している青少年の平均利用時間は、前年度から約25分増え、1日あたり約5時間27分にのぼった。なかでも、高校生は約6時間44分と長く、中学生の約5時間24分、小学生(10歳以上)の約3時間54分を大きく上回る。睡眠時間などを除けば、起きている時間の大半をインターネットに費やしていることになる。

青少年のインターネット利用状況(利用時間)(出典:「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果」こども家庭庁)

あくまで平均なので、1日7時間以上インターネットを使う子供も少なくない状態だ。しかも、年齢が上がるほどその割合は増え、14歳で24.5%、15歳で32.5%、そして17歳に至っては約4割の38.9%が、1日7時間以上をインターネットに費やしている。

過剰な利用は、心身にも影響を及ぼす。久里浜医療センターの「ネット・ゲーム使用と生活習慣に関する実態調査」によると、SNSの病的な使用が疑われる10代は、男性で7.1%、女性で7.0%にのぼる。あくまで「疑い」であり、実際の数はこれよりも少なくなるとも考えられるが、すでに過剰な利用に陥っている子供が一定数いることは間違いなさそうだ。

SNSの病的使用疑い(SMDS)の該当者は、10代の男性が7.1%で、10代の女性は7.0%(出典:「ネット・ゲーム使用と生活習慣に関する実態調査 令和7年度研究報告書」久里浜医療センター)

無限スクロールでやめにくい仕組み、アメリカでは訴訟に発展

なぜ、これほどまでにインターネットを手放せなくなるのか。背景の一つに、動画やSNSの“ やめにくさ ”がある。青少年の利用内容を見ると、小中高生のいずれも「動画視聴」が9割前後でトップ。高校生では「コミュニケーション」(92.7%)、中学生や小学生では「ゲーム」(それぞれ87.1%、85.5%)の割合も高い。どれも、いったん始めるとつい長居してしまうサービスばかりだ。

アメリカでは、こうした”やめにくさ”をめぐり、訴訟にも発展している。子供の頃にSNS依存になったとして、若い女性がInstagramの運営元Metaと、YouTubeの運営元Googleを訴えたのだ。ロサンゼルスの州裁判所は、両社の責任を認め、損害賠償を命じた。原告側は、両社が「中毒性のある仕組み」を作りだし、子供たちがそうした状況にさらされることを防ぐ責任を果たさなかったと主張している。

そのときに問題のひとつとして指摘されたのが、 無限スクロール だ。ページを切り替えなくても、スクロールするだけで次々と動画が表示されるため、やめるきっかけをつかみにくい。裁判でも問題視されるほど、ショート動画などの依存性は高いといえるだろう。

では、どう抑えればいいのか。まず取り入れたいのが、機能による制限だ。この訴訟の後、 YouTubeでは、ショート動画を非表示できる ようになった。表示させないだけで利用を抑えられるので、うまく活用してほしい。また、ショート動画以外にも、SNSやゲームで依存してしまうケースもある。これについても、ペアレンタルコントロール機能やアプリに用意されている利用時間制限機能などを使うと、時間の制限が可能だ。

とはいえ、機能に頼るだけでは十分とはいえない。そもそも 子供の使い方に影響を与えているのは、一番身近な大人 でもあるからだ。

セゾン自動車火災保険のスマホ依存の実態調査(2023年11月)では、親のスマートフォン使用時間が「1日3時間以上」の家庭では、子供の使用時間も同じように長くなる傾向がみられた。まずは、大人が自身の使い方を振り返り、うまく自制しながら使う姿を子供に見せたい。そのうえで、スマートフォン以外の時間の過ごし方を教えたり、子供が自分で使い方や時間をコントロールできるよう手助けをするといいだろう。

親のスマートフォン使用時間が「1日3時間以上」の場合、子供のスマートフォン使用時間も同様に長くなる傾向(出典「年代別にスマホ依存の実態を調査」セゾン自動車火災保険株式会社)

学校や家庭連携での見守りと会話が大切

家庭での関わりに加えて、もう一つ欠かせないのが学校と家庭による連携した見守りだ。ネットいじめや誹謗(ひぼう)中傷、SNSの過度な利用が自殺念慮や摂食障害につながることなども問題視されている。

やっかいなのは、こうした問題が見えにくくなっていることだ。かつてはネットいじめや誹謗中傷は、ネットパトロールで見つけることができたが、最近ではLINEなどの閉じられた空間で行われたり、匿名で誹謗中傷が行われたりするため、外から見つけにくい。

だからこそ、子供が被害者・加害側のどちらにもなっていないか、普段から学校や家庭で話を聞く機会を設け、早期発見することが何より大切だ。学校であれば、匿名アンケートのほか、「STANDBY」などの匿名通報アプリを利用したり、全員へのヒアリング、目安箱の設置などが考えられる。家庭では、親子の会話の時間を設け、困ったことがあったら相談してもらえる関係を築いておきたい。

親子の会話は、考えの偏りを防ぐうえで重要だ。SNSばかり見ていると、自分と似た考えばかりに触れ、特定の考えに偏る「 エコーチェンバー現象 」に陥りやすい。家族で会話する機会や、ニュースやテレビなどで異なる意見に触れる機会を意図的に増やすことで考えの偏りに気付きやすくなるのではないだろうか。

子供のSNS利用には、確かに問題も多い。しかし、子供にとってSNSは、友人とつながり、情報を得るための大切な手段でもある。なかにはSNSがセーフティネットとなっている子供もいるのだ。単純に取り上げたり、制限したりするのではなく、スマートフォンやネットで何を見て、誰とつながり、何を面白いと感じているのか。この夏休みにじっくり話してみてほしい。大人も子供も、自分の使い方を見つめ直すきっかけになるのではないだろうか。

高橋暁子

ITジャーナリスト。 LINE・Twitter・Facebook・InstagramをはじめとしたSNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α新書)、『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)ほか著作多数。書籍、雑誌、ウェブメディアなどの記事の執筆、監修、講演、セミナーなどを手がける。http://akiakatsuki.com/