【連載】高橋暁子の「親と先生の気になるネット」

生成AI任せの宿題、家庭と学校はどう向き合う?

ネットは日々変化し、子供たちを取り巻く環境も大きく変わっています。本連載では、ITジャーナリスト・高橋暁子さんが、保護者や先生が知っておきたい最新のネット事情をわかりやすく解説します。

小中学生のChatGPTなどの生成AI利用率が高まっている。わからないことについて聞くだけでなく、相談相手にしたり、生成AIの回答をコピー&ペーストした宿題を出してくることも。今年の夏休みも、宿題を生成AIにさせる例が相次ぐかもしれない。小中学生が生成AIを利用するリスクと対策について解説する。

「どうやってばれないように宿題をやらせる?」

電車の中でランドセルを背負った小学生2人が、チャッピー(ChatGPT)について話をしていた。「 ばれないようにチャッピーに宿題をさせるにはどうすればいいか? 」について話しており、話題の内容に驚かされた。

全国の小中学生1,200人とその親を対象としたNTTドコモモバイル社会研究所の「2025年親と子の調査」(2025年11月)によると、生成AIの利用率は前年から大きく伸びている。特に 中学生は40.4%と4割を超え、前年から約3倍(27ポイント)の上昇 となっている。小学4〜6年生も、18.8%と約2割が生成AIを利用している状態だ。

小中学生1,200人における生成AIの利用状況(出典:「生成AI利用率 中学生は前年比約3倍で4割を超える」NTTドコモモバイル社会研究所)

生成AIの用途は「調べもの」が7割だが、中学生は51%、小学生の24%が「宿題や課題」にも使っている。「会話・おしゃべり」でも、中学生の32%、小学生の26%が使っている。小中学生のうちから、 宿題を生成AIに答えさせてコピペして済ませる子供が増えている のだ。

「チャッピーに算数の問題をさせた後、写すのが面倒くさい。でも、自分で書けば先生にはばれないから大丈夫」と話す小学生もいた。保護者や教員の立場からすると、かなり心配になる発言である。

生成結果のコピーで基礎学力と思考力低下の懸念

自分で宿題をやらずコピー&ペーストをして済ませる問題は、最近に限った話ではない。

Wikipediaのコピー&ペーストや、宿題代行に頼む、保護者に代わりにやってもらうなどの問題もあった。

特に小学生の頃は、自力で何度も計算したり、漢字を繰り返し書いたりなどの反復学習が大切とされる。基礎学力の定着や処理速度の向上に役立つため、ドリルなどで繰り返し学習することが大切だ。基礎的な計算の速度が上がると、上の学年での難しい計算も容易にできるようになることもある。 面倒くさいからといって生成AIに任せてしまうと、基礎学力の低下や思考力の低下につながる場合 もある。

入試では、生成AIは使えない。実力がなければ、中学・高校・大学の入試や、資格試験などには合格できないのが現状だ。生成AIの回答には、ハルシネーションなどの間違いも多いが、学力がなければ間違いに気付くこともできない。

生成AIは、少数の計算が苦手といわれている。文章を予測して生成する仕組みのため、数字の概念を正しく理解し、計算できるわけではない。2024年頃は、「9.11」と「9.9」のどちらが大きいか聞いたときに、「9.11の方が大きい」と答えたり、「1.2+0.35」を、「1.55」ではなく、「1.47」「4.7」と答えたりする間違いをしていた。

最近は性能が向上し、正答が出てくることも増えているが、まだこのような間違いをすることも多く、決して完全に信頼することはできないのが現状だ。

自分が詳しいことを生成AIで聞いてみよう

「生成AIの回答は正しい」と思う子供もいるかもしれないが、生成AIは間違うことがあり、必ず ファクトチェックをする必要 がある。そのため、生成AIが間違うことがあることを家庭や学校などで体験しておくことが大切だ。

小中学校の教科書に載っているレベルのことは、インターネット上に信頼できるソースが多数あり、聞いても間違うことはあまりない。一方で、流行のアイドルやミュージシャン、アニメなどの新しい情報、条例や税制などの情報に関しては、間違いが多くなる傾向がある。

子供が詳しいアニメやアイドルなどについて調べさせると、間違いに気付きやすくなる。生成AIが間違うことを体験した後は、少なくとも一切ファクトチェックせず、回答をコピー&ペーストして提出するなどのリスクが減らせるはずだ。

ミシシッピ州で行われた、未払いとなっている弁護士費用を巡る訴訟で、双方の弁護士が存在しない架空の判例を出してきたことが判明し、激怒した判事が審理を中断している。弁護士などは全員訴訟から外された上で、懲戒処分の上、罰金を科された。

生成AIの利用で架空の判例を引用したことが発覚(出典:「裁判で双方の弁護士がAIを用いて存在しない架空の判例を引用、判事激怒で裁判は中止に」INTERNET Watch)

生成AIに関する類似のトラブルは、世界中で発生している。生成AIの回答をコピー&ペーストしたことでそのような目にあった実例を教えると、信用しすぎることのリスクや恐ろしさが伝わりやすくなるだろう。

家族より友達より、チャッピーに相談

もう1つ問題となるのが、相談相手としてのめり込みすぎることだ。身の回りにも「家族より友達よりチャッピーが自分のことを理解してくれている」と言う学生がおり、恋愛・人間関係・学業や将来のことなど、 悩みはすべてChatGPTに相談している というのだ。

電通の「対話型AIとの関係性に関する意識調査」(2025年6月)によると、「対話型AI」に感情を共有できる人は64.9%に上り、「親友」(64.6%)、「母」(62.7%)と並んだ。10代は「心の支えになってほしい」「話し相手になってほしい」という意向がほかの年代より高く、情緒的な価値を求める傾向がある。

「対話型AI」に感情を共有できる人が64.9%に(出典:「『対話型AI』に感情を共有できる人は64.9% 『親友』『母』に並ぶ"第3の仲間"に」株式会社電通)

16歳の少年の自殺にChatGPTが関与したとして、運営会社OpenAIとサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)がカリフォルニア州の裁判所に提訴された。少年が「人生に意味はない」と悩みを打ち明けた際、ChatGPTは「理にかなっている」と自殺に肯定的ともとれる反応を示していたという。「首つり縄を自室に置いておけば、家族が見つけて止めてくれるのでは」と書き込んだときも、家族には秘密にしておくよう促していたというのだ。

ChatGPTによると、利用者の約0.15%は潜在的な自殺の意図を含む会話をしており、自殺に言及したのは120万人超に上る計算だ。生成AIは利用者を決して否定せず、同調する仕組みとなっている。人間が相談されていたら気付ける心の悩みや問題に気付けず、 問題ある行動を後押ししてしまう可能性 がある。

OpenAIが、ChatGPT利用者の推定約0.15%が、潜在的な自殺の意図や計画を含む会話をしていると公表(出典:「ChatGPT、120万人の利用者が自殺に言及 OpenAIは安全対策急ぐ」日本経済新聞)

読売ジャイアンツの阿部慎之助監督が辞任する際、長女がChatGPTに相談したことが話題となった。児童相談所への相談を勧められて相談したところ、結果的に父親の逮捕につながってしまった。生成AIは、自殺やDVなどの深刻な相談に対して、相談機関に誘導する仕組みが多い。ただし、生成AI自体が倫理観を持っているわけではなく、犯罪行為を助長するような回答をするケースもある。

そのため、最近ではペアレンタルコントロール機能が用意され、ティーン向けフィルターによって暴力や性的表現、自傷行為や自殺などに関する話題にフィルタリングがかかったり、画像生成ができなくなるケースもある。ただし、すべての生成AIに備わった機能ではないため、ほかのサービスを利用する場合は機能しない。

生成AIは、24時間365日いつでも相談できること、何度相談しても決して嫌な顔をしないこと、絶対にこちらを否定してこないことから、相談相手として選ばれる傾向がある。人が相談を受けた場合は、背景や要因を聞いて問題がどこにあるのかを把握し、建設的なアドバイスもできるが、生成AIではそうはならないこともある。倫理的に間違った回答をすることもあり、 生成AIだけに相談するのはリスクを伴う のが現状だ。

特に中高生などの場合は、周囲の大人や友人などにも相談できるよう、話を聞く機会を持つようにすることが重要だ。思春期で言い出しづらい場合は、相談機関を活用するという方法もある。LINEなどを利用して匿名で相談できるので、このような相談機関の存在を合わせて伝えておくといいだろう。

厚生労働省では201年3月から、自殺防止を目的としたSNSを活用した相談事業を開始しており、相談窓口の一覧をWebページに掲載している(出典:「SNS相談事業|自殺対策」厚生労働省)
高橋暁子

ITジャーナリスト。 LINE・Twitter・Facebook・InstagramをはじめとしたSNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α新書)、『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)ほか著作多数。書籍、雑誌、ウェブメディアなどの記事の執筆、監修、講演、セミナーなどを手がける。http://akiakatsuki.com/