【連載】高橋暁子の「親と先生の気になるネット」

なぜBeReal.で炎上が続くのか、「友達限定」「消える投稿」がリスクに

ネットは日々変化し、子供たちを取り巻く環境も大きく変わっています。本連載では、ITジャーナリスト・高橋暁子さんが、保護者や先生が知っておきたい最新のネット事情をわかりやすく解説します。

BeReal.への投稿をきっかけにした炎上が続いている。新入社員などのBeReal.投稿がXなどで拡散され、顧客情報や社内情報などが流出して大騒動となっているのだ。BeReal.は、Z世代(14〜27歳)が83%を占める(2024年10月時点)SNSであり、決して他人事ではない。BeReal.による炎上が多発する理由と背景、大人ができることを解説したい。

問題投稿をする小学校教員、銀行員、高校生

「授業中にBeReal.で撮影している生徒がいます。講演で取り上げてください」。高校生向け講演の際、BeReal.について依頼されるようになった。

仙台市の小学校、西日本シティ銀行、ミスタードーナツ、ピザーラ、1945年創業の建設機械製造販売会社…… いずれもBeReal.による投稿により炎上 している。

仙台市の小学校に勤務する20代の女性教諭は、学校名や同僚教員の名前が写るパソコン画面を撮影して投稿し、Xで300万回以上閲覧された。「 スマホに撮影を促す通知が届いた ので、深く考えずにやった。軽率な行為で迷惑をかけ、反省している」と話したという。

西日本シティ銀行では、同行の行員が行内で撮影した動画を投稿。映り込んだホワイトボードには、顧客7名の氏名が記載されていた。

ミスタードーナツではレシートが貼り付けられた台紙や数字が記入された表が写り込んだ画像が、ピザーラでは商品棚でふざけたり生地をぶちまけた動画が、建設機械製造販売会社では取引先の社名が写った画像が、流出・拡散されてしまった。

どれも常識的に考えれば、投稿してはいけない写真や動画ばかりだ。それなのになぜ投稿し、炎上が続いているのか。

BeReal.の投稿を焦らせる仕組み、油断させる罠

BeReal.は2020年にフランスで生まれたアプリで、日本では3年ほど前から大流行中だ。インカメラとアウトカメラで同時に撮影する仕組みのため、撮影者と周囲の場が共に写る。 BeReal.で炎上が多発している理由は、アプリの仕組み にある。

BeReal.のアプリ紹介画面

BeReal.の投稿を促す通知は、ランダムに突然来る。「2分以内にBeReal.を投稿しないとほかの友達の投稿が見れません!」と焦らせる文言が表示され、カウントダウンが始まる。投稿する写真には加工できず、保存している写真も使えないため、通知が来たらその場で撮影するしかない。 何とか間に合わせようと慌てることで、問題があるものが写り込んだ写真を投稿 してしまうことになる。

投稿するまで友達の投稿はぼかしがかかって見られないため、投稿を促す仕組みになっている。2分以内に投稿することによって、さらに好きなタイミングで投稿できるようになるというメリットもある。

実際は2分を過ぎても投稿・閲覧できるのだが、「○時間遅れ」と表示されてしまうことを嫌い、間に合わせようという心理が働く。そのため、本来撮影してはいけない時間帯でも、こっそり撮影してしまうことも多くなる。

投稿の公開範囲は、「私の友達のみ」「私の友達+その友達」「グローバル」から選ぶ。投稿は次の通知があるまで見られる仕組みのため、最大24時間で前の投稿は見られなくなる。これも 「友達限定だから」「1日で消えるし」という油断 につながる。

ところが実際は、投稿をキャプチャしたり、収録機能で動画で保存したりすることはできる。問題ある写真などを投稿した場合、反感から外部に拡散する友達もおり、炎上してしまっているのだ。

「プライベートが写りすぎ」2割、問題発生も

筆者の大学で受講生対象に実施した「BeReal.に関するアンケート」によると、「現在利用している」(59%)、「過去に利用していた」(14.6%)を合わせると、 4人に3人が利用経験がある 人気ぶりだ。「授業中に撮影したことがある」(9.7%)、「バイト先で撮影したことがある」(12.5%)、「電車やバスなど乗り物内で撮影したことがある」(16.7%)など、リスクが高い投稿をしている学生も少なくない。

さらに、「ほかの人が投稿した写真に、プライベートが映り込みすぎていた」(19.4%)、「自分が映した写真に、プライベートが映り込みすぎていた」(3.5%)、「ほかの人が投稿してはいけない時間帯に投稿していた」(4.2%)、「許可を得ていない他人が映っているが、気にせず投稿した」(5.6%)など、明らかな問題行動も見られる。実際に、 自分が投稿した写真が問題になったり、投稿してはいけない時間帯に投稿したりしたことで問題になった学生もいる ようだ。

BeReal.に関するアンケート(大学1〜4年生144名対象、2026年4月15日実施)

高校生や大学生のメインのSNSはInstagramだ。しかし、Instagramは基本的に「映える」写真を投稿する場のため、コミュニケーション目的の場合は、24時間で消える「ストーリーズ」に投稿することが多い。

一方、BeReal.は加工ができず、普段の姿やいる場所などをそのまま見せ合うアプリであるため、親しい関係性でつながることが多い。お互いに普段の姿を見せ合えることも、つながりを感じられて人気となっている理由だ。「いつもなら絶対に撮影しない普段の姿が写るから、いい記録になるし、日記みたいで面白い」という話も聞く。

BeReal.を日常的に使っていた学生が就職し、それまでと同じように投稿した結果、炎上している。社会人になると守秘義務が生じ、信頼を損ねる行為で会社に損害を与えるリスクを知らぬまま、立場だけ変わっていたのだ。

「2分以内」は義務ではない。投稿する場合は、投稿を隅々まで見返し、問題あるものが写り込んでいないか確認してから投稿すること。 社会人になったら、アプリをやめるのも1つの選択肢 なのではないか。

なぜ炎上の歴史は繰り返されるのか

日本のSNSによる炎上の歴史は長い。2013年頃にはTwitter(現X)による不適切投稿が多発し、「バカッター」などと呼ばれた。その後、2019年頃から起きたInstagramの不適切投稿による炎上は、「バカスタグラム」とも言われた。テキストよりも画像、画像よりも動画の方が情報量が多く、個人が特定されることで、より一層炎上しやすくなった。

その後、炎上や個人情報流出の恐ろしさなどについての教育が進み、徐々に全体公開投稿による炎上は下火になっていった。代わりに近年増えてきたのが、 「友達限定公開(鍵アカウント)」「一定時間で消える投稿」による炎上 だ。

最近目立っているのが、鍵をかけたInstagramアカウントのストーリーズによる炎上である。ほとんどは友達限定で公開されるが、Instagramの友達は真の友達とは限らない。そのためフォロワーから外部のSNSに拡散されるなどして、炎上するケースが多い。

今年は、そのトレンドがBeReal.に移りつつある。ストーリーズと同じで、やはり友達限定公開の上、一定時間で消える投稿だ。しかも 焦らされる仕組みによって、慌てて撮られた写真などが投稿 されている。炎上する理由がそろっているというわけだ。

多くの大人は、「なぜこれほど報道されているのに、また似たような炎上が続くのか」という疑問を持つかもしれない。それはニュースを見ず、SNSでしか情報を得ない若者が多いためだ。大学生でも、新聞やテレビで情報を得る学生は少数派である。そのため、 話題になっていても当事者たちに届いていない ことが考えられる。

また、西日本シティ銀行の例では、2024年に投稿されたものが蒸し返されて炎上している。2023年に回転寿司チェーンの炎上が続いたときも、次々と古い投稿が掘り返されて炎上が続いていた。過去の投稿が掘り返され、あえて探し出されて炎上することも多いのだ。

炎上の歴史は繰り返されており、その度に個人が特定され、ネット上でさらしものにされ続けている。社会人になって投稿した場合は、処罰対象となったり、会社から訴えられるリスクもある。

「まだアプリを使っていないから大丈夫」という考えは危険だ。子供はいつの間にか成長し、新しいアプリを使い始める。大人に告げずにこっそり使うことも多い。最近使い始めた子供たちは、過去の炎上事件の恐ろしさを知らず、同じように問題投稿をして炎上を繰り返し、デジタルタトゥーになることがある。

我々ができることは、このような事件が起きた際に、 反面教師として子供にしっかりと問題点や、適切な使い方を伝えていくこと だろう。

高橋暁子

ITジャーナリスト。 LINE・Twitter・Facebook・InstagramをはじめとしたSNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α新書)、『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)ほか著作多数。書籍、雑誌、ウェブメディアなどの記事の執筆、監修、講演、セミナーなどを手がける。http://akiakatsuki.com/