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Duolingoが問うAI時代の英語教育、4技能評価と「学びの過程」をどう見るか

Duolingo, Inc.が「Duolingo English Test リーダーシップセミナー」を開催(撮影:編集部)

Duolingo, Inc.は、東京・渋谷のTRUNK(HOTEL) CAT STREETで6月10日、大学関係者向けセミナー「Duolingo English Test リーダーシップセミナー」を開催した。会場には大学の入試や国際化、英語教育に携わる関係者が集まり、 生成AI時代の英語教育や英語力評価のあり方 について理解を深めた。

4技能を測るDET、日本での導入が拡大

Duolingo, Inc.が提供する「Duolingo English Test」(以下、DET)は、テストセンターに行かずに受験でき、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの4技能をオンラインで測定する英語能力認定試験だ。

「Duolingo English Test」の構成要素と問題形式(出典:Duolingo, Inc.)
Head of Duolingo English Test, Japan 長坂秋人氏(撮影:編集部)

Head of Duolingo English Test, Japanの長坂秋人氏によると、日本国内の導入済み高等教育プログラム数は90を超え、この6カ月で2.2倍に成長したという。

長坂氏は、活用の広がりを入試、国際留学、英語教育の3つの場面に分けて紹介。入試での活用例としては、一橋大学、九州大学、筑波大学、東京大学、東北大学、名古屋大学、北海道大学、横浜国立大学、立命館大学、早稲田大学などの名前を挙げた。

日本の数多くの大学が「Duolingo English Test」を導入(出典:Duolingo, Inc.)
Senior Director of Institutional Growth, Duolingo English Test Jennifer Dewar氏

Senior Director of Institutional Growth, Duolingo English TestのJennifer Dewar氏は開会にあたり、「日本の英語教育には強固な基盤がある一方で、評価は長年、読む・聞くの2技能に重点が置かれてきた」と説明した。世界では、話す・書く・読む・聞くの4技能を、大学での学びや仕事、国際的な交流の場で使う力が求められているという。Dewar氏は「Duolingoは、英語テストの提供者にとどまらず、日本の教育機関のパートナーでありたい」と語った。

AIは学習者の表現を広げる支援ツール

4技能をどう測るかという議論は、大学で英語をどう学び、どう評価するかという課題にもつながっていく。生成AIの登場により、英語で考えを表現する方法や、文章を作る過程の見取り方も変わりつつある。

英語教育におけるAI活用と、成果物から学習過程への評価転換(出典:Duolingo, Inc.)

立命館大学 生命科学部 教授の山中 司氏は、英語を母語としない学習者にとって、AIは「 表現の不足を補う支援ツール 」になり得ると説明した。AIについては「自分が思っている以上に、自分の言いたいことを表してくれる」と述べ、学習者の表現を広げる可能性を示した。

一方で、AIを学習に取り入れるには、授業の中でどのように使うのかを設計する必要がある。山中氏は、AIが教員の役割を置き換えるのではなく、 学生がAIと対話しながら学ぶ場面 が加わると説明。教師には、学生がAIとどう関わりながら学ぶのかを支える役割があるとした。

京大の初年次ライティング、全工程にAIを組み込む

京都大学国際高等教育院 附属国際学術言語教育センター 准教授 金丸敏幸氏(撮影:編集部)

京都大学国際高等教育院 附属国際学術言語教育センター 准教授の金丸敏幸氏は、「アカデミックライティング」の授業を例に、英語レポート作成におけるAI活用を紹介した。この授業では、トピックの決定、リサーチ、アウトライン作成、ドラフト、レビュー・修正といったレポート作成の各工程で、学生がAIを活用しているという。

金丸氏が重視するのは、 学生自身が考えながらAIを使う授業設計 だ。学生はまず、自分でテーマを考え、プランニングや下書きを行う。そのうえで、学術論文を探す際には「Elicit(イリシット)」、論文の内容を読み解く際にはGoogleの「NotebookLM」を使い、得られた情報をドラフトに反映していく。AIを使って関連する論文を探し、内容を読み解くことで、学生は自分の専攻とは異なる分野にも視野を広げながら、英語で考察を深められるようになっているという。

ただし、AIを介してリサーチや推敲(すいこう)が進むほど、提出されたレポートだけでは見えない部分も出てくる。学生がどのようにAIを使い、どの情報を自分の考えに取り入れたのか。評価では、その過程にも目を向ける必要がある。

提出物だけでは見えない学びを、どう評価するか

立命館大学 生命科学部 教授の山中 司氏(撮影:編集部)

山中氏は、生成AIによって文法や構成の整った文章を作りやすくなったことで、 学生の思考やつまずき、学びの変化 をどう見るかがより重要になっていると話した。

そこで必要になるのが、学習の過程を見る「 プロセス評価 」だ。下書きや振り返り、教員のフィードバックなどを蓄積し、学生がどのように考えを深めてきたのかを見取る。ただし、そうした記録を教員が一つ一つ確認する負担は大きい。

山中氏は「プロセスを全部評価することは、技術的に可能になってきた」と話す。現在は、AIが授業内の記録を読み込み、学生の思考や修正の流れを把握することも可能になってきているという。

金丸氏は、評価のあり方に加えて、AI時代にどのような学びの力を育てるのかにも目を向けている。

これまでの教育では、学習者が自分で目標を立て、学び方を調整する「Self-Regulated Learning(自己調整学習)」が重視されてきた。一方、生成AIを使う学びでは、AIの答えを受け取るだけでなく、その応答を手がかりに問いを立て直し、自分の考えを深めていく力が求められる。金丸氏は、こうしたAIと関わりながら学びを調整する考え方を「Co-Regulated Learning」として紹介した。

生成AI時代の高等教育における学習目標と評価の変化(出典:Duolingo, Inc.)

さらに金丸氏は、「AI活用を個人の学びにとどめず、 チームでの学びにも広げて捉える必要がある 」と述べた。AIによって情報収集や整理のハードルが下がるからこそ、個人が何をできるかだけでなく、AIを使いながら他者と協働し、より高い目標に向かう力をどう育てるかが課題になるという。

山中氏は、20年後、30年後にはAIがさらに日常化していることを前置きし、「生身の英語力だけを測るテストや授業でよいのか」と問いかけた。金丸氏も、今後の英語教育では、AIを使いこなしながら英語でコミュニケーションする力が鍵になるとし、共通の目的に向けてやり取りを続ける力を「コミュニケーションのレジリエンス」と表現した。

株式会社ベネッセコーポレーション 代表取締役社長 岩瀬大輔氏(撮影:編集部)

また、基調講演には株式会社ベネッセコーポレーション 代表取締役社長の岩瀬大輔氏が登壇し、AI時代に求められるグローバル人材について語った。

岩瀬氏は、大学教育には「考える力、疑う力、問い続ける力」といった「深い知性」の育成が求められると強調。「AIは知的好奇心旺盛な人に力を与えるツールであり、 良いプロンプトにするには知識や批判的思考力が不可欠 」と述べ、AIが情報を整理し文章を整える時代だからこそ、何を問い、どの情報を信じ、どう判断するのかが問われるとした。

生成AIの普及により、英語で考えを表現する方法や、学びの過程の捉え方は変わりつつある。DETやDuolingoの活用は、英語を学び、力を測る機会の広がりにつながるものだ。今回のセミナーからは、英語教育の焦点が、英語を正しく使う力にとどまらず、AIや他者と関わりながら考え、伝え続ける力へと広がりつつあることが感じられた。

本多 恵

フリーライター/編集者。ゲーム誌・Web媒体、育児系メディアでの執筆を経て、現在は教育ICT分野を中心に取材・執筆。学校現場のICT活用や教育DX、生成AI、特別支援分野でのICT活用を追う。ゲームや遊びを学びにつなげるエデュテインメントにも関心を持つ。小学生2人を育てる母として、保護者の視点を大切にし、AI時代の学びの今を現場の空気とともに伝えている。