【連載】EducAItion Times
物語の1ページを10秒動画に、Gemini Omniで広がるAI動画づくり
2026年7月6日 06:30
ある夜、前回Geminiの「Storybook」で作ったわが家のオリジナル絵本を読んでいたら、娘がぽつりと言いました。「パパ、このお話、動いたらもっと面白いのに」。
今回ご紹介するのは、この「動いたらもっと面白い」を形にする新機能、Googleの動画生成AI「 Gemini Omni 」です。絵本の1ページを、わずか10秒ほどの短い動画にできます。ただ、実際にやってみると、 「動かす」ことと「物語を立ち上げる」ことは別の作業 だという気づきもありました。手順とあわせて、その大事な気づきもお届けします。
Gemini Omniとは? 絵本を動かす新しい動画生成AI
Gemini Omniは、2026年5月の「Google I/O 2026」で発表された、比較的新しい動画生成モデルです。同日からGeminiアプリなどで順次使えるようになりました。画像・音声・動画・テキストを組み合わせて、1本あたりおよそ10秒の短い動画を生成でき、音声も一緒に作れるのが特徴です。生成された動画には、AI生成であることを示す電子透かし「SynthID」が付きます。
参照に使える素材は 画像が最大5枚、動画が1本まで 。「カメラを少し寄せて」「音は風だけにして」というように、会話形式で何度も修正できるので、子供と一緒に試行錯誤しやすいのが魅力です。
Gemini Omniは無料で使える?料金プランと使える本数
結論から言うと、 Geminiアプリ内での動画生成は無料プランでは使えず、有料のGoogle AIプランが必要です 。ただし、YouTube ShortsのリミックスやYouTube Createなど、18歳以上向けに無料で動画生成を試せる別の入口も用意されています。まず雰囲気を知りたい人は、こうした無料経路から触れてみるのもよいでしょう。
プラン別の動画生成の上限は、Googleの公式ヘルプ(使用量上限)で次のように案内されています(2026年6月時点)。
| プラン | 月額の目安 | 動画生成の上限(1日あたり) |
| Gemini(無料) | 0円 | アプリ内の動画生成は不可(無料はYouTube Shorts等が入口) |
| Google AI Plus | 約1,200円* | 最大2本 |
| Google AI Pro(わが家) | 約2,900円* | 最大3本 |
| Google AI Ultra | 約19,000円* | 最大5本 |
※価格は2026年6月時点の目安です。為替レートやプラン改定の影響で変動する可能性があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。
我が家は中位のGoogle AI Proで、1日3本まで。やってみると、この「3本」という制約がちょうどよく、「あと2本」と思うと、作る前に「どこを動かすか」を親子で話し合うようになりました。なお、上限は需要やモデル更新で頻繁に変わります。最新の本数は利用前に公式ヘルプで確認すると安心です。
1枚の絵から10秒動画へ、Gemini Omni活用の4ステップ
操作の流れを4ステップで紹介します。ポイントは、足し算ではなく「引き算」で考えることです。
●ステップ1:Storybookで動かすページを1枚だけ選ぶ
まず、絵本の中から動かすページを1枚だけ選びます。コツは、“いちばんきれいなページ”ではなく、“気持ちが変わるページ”を選ぶこと。「ためらいが希望に変わる」「ひとりだった子に誰かが近づく」など、心が揺れる場面が短い動画に向いています。まず“何が変わる10秒か”を言葉にしてから選びましょう。
●ステップ2:Gemini を開き、Gemini Omni を呼び出す
お使いのブラウザで Gemini の公式サイト(またはアプリ)を開き、有料の Google AIプランでログインします。動画を作るには、入力欄の「ツール」や機能メニューから動画生成(Gemini Omni)を選びます。前回のStorybookと同じく、Geminiの中から呼び出して使えるので、絵本づくりからそのまま地続きで進められます。
※動画生成は18歳以上・有料プラン向けの機能です。メニューに見当たらない場合は、プランや提供状況、アプリの更新を確認してください。
●ステップ3:「感動的に」ではなく、演出を具体的に指示する
ここがいちばん大事です。「感動的に」のようなあいまいな指示ではなく、動きを具体的に伝えます。動きも音も“ひとつだけ”に絞るのがコツです。たとえば次のようなプロンプトです。
主人公の表情の変化を中心に、動きは最小限に。
最初は少し不安そう、3秒目で安心した表情に変わります。
風で虹色の光が1回だけふわっと広がります。
カメラはゆっくり主人公に寄ります。
音は小さな風の音だけ、BGMは不要です。
子ども向けなので落ち着いたテンポで、刺激は強すぎないように。
●ステップ4:会話で何度も調整し、書き出す
Gemini Omniは会話形式で何度も直せます。初回ですべてを決めず、1回目は動き、2回目は音、3回目はカメラ、と分けて調整するのが成功のコツ。納得できたらダウンロードして書き出します。カメラは“派手さ”より“理解しやすさ”を優先し、「寄る・止まる・少し上を見る」の3つで十分です。
いろいろな動かし方ができる!目的別プロンプト例
ねらいに合わせて、指示を変えるだけで動画の印象は大きく変わります。そのまま使えるプロンプト例を紹介します。
視聴後に「この子はいま何を感じたのかな?」と話したくなるよう、
表情変化は小さく、でもわかるようにしてください。
音は環境音のみ。言葉は入れません。
小学校低学年が見ても分かりやすいように、動きは1つの変化に絞り、
視線誘導がはっきりする構図にしてください。
視聴後に「どこで気持ちが変わった?」と問いかけやすい余白を残してください。
「なんとなく」から「狙いのある動画」へ。AI動画生成で親子が気づいたこと
実際にやってみると、いくつもの気づきがありました。最初、私は“いちばんきれいな”見開きページを選び、「動画にして」とだけ指示しました。たしかに絵は動きます。光が揺れ、 画面がゆっくり動く。けれど見ているうちに、「これは何を伝えたい動画なんだろう」と手が止まりました。動いてはいるのに、伝えたいことがぼやける形です。
そこで気づいたのが、「どこを・どう動かすか」を先に決める大切さでした。ページを、主人公の表情が変わる場面に選び直し、「3秒目で目線が上がる」「最後に小さく笑う」「音は風の音だけ」と具体的に指示し直すと、同じツールでも結果が違います。
あいまいな指示では“なんとなく動く動画”に、具体的な指示では“伝えたいことのある動画”になります。 いちばんの気づきは、「絵本のページを動かすこと」と「物語を立ち上げること」は別の作業だということです。動かす技術は、AIが肩代わりしてくれます。でも、どの瞬間を・何のために動かすのかを考えるのは、人間の仕事です。そして、その“考える時間” こそが、いちばんの学びではないかと感じております。
もうひとつの気づきは、動画にすると会話が変わることです。静止画だと「かわいいね」で終わる場面も、短い動画にすると「どうして止まったの?」「次は何が起こる?」と問いが生まれます。子供は、できあがった動画を受け取るだけでなく、「次はこうしたい」と提案する演出家の側に回っていく感触がありました。
なぜ「Gemini Omni」を活用するのか
動画生成AIはGemini Omniだけではありません。それでも今回これを選んだのは、「いちばん高機能だから」ではなく、「家庭で、親子で、絵本の1ページを動かす」という目的にいちばん合っていたからです。代表的な4つを並べると、向き不向きがはっきりします。
| ツール | いちばん向く用途 | 今回(家庭で絵本を動かす)の評価 |
| Gemini Omni | 親子で1ページを会話しながら短尺動画にする | ◎ 最適。すでにGeminiで絵本を作っており、同じGemini内で完結できる |
| Google Vids | 先生の授業導入・校内共有用の説明動画 | ○ 学校向け。家庭で1場面を動かす用途にはやや大げさ |
| Adobe Firefly | 生成後の編集・つなぎ・高解像度化 | △ 仕上げ向き。最初の一本を気軽に作る段階には不向き |
| Seedance 2.0 | 画像・音声・動画を複数参照した高度な制御 | △ 高機能だが著作権をめぐる批判・展開停止報道があり、親子・教育では勧めにくい |
第一に、わが家はすでにGemini Storybookでこのお話を作っていました。同じGeminiの中で、作った絵本からそのまま動画化に進めるので、素材も操作も地続きです。
第二に、Gemini Omniは会話形式で何度も直せるため、子供と一緒に試行錯誤しやすい。一方、Seedance 2.0は高機能でも著作権の懸念があり、Fireflyは仕上げ工程向き、Vidsは先生の説明動画向きです。だからこそ今回は、最高機能のツールではなく、目的に最も素直な道具──Gemini Omniを選びました。
活用上の留意点をおさらい
便利だからこそ、次の点を心がけましょう。
- 利用資格の確認:Gemini Omniの動画生成は18歳以上が対象。子供が操作するのではなく、保護者や先生が操作し、子供は「見て・考えて・話す」役割で関わる
- 個人情報の保護:顔写真・本名・学校名・制服・成績情報は入れない。個人向けプランでは一部データが改善目的で扱われうる
- 著作権への配慮:Seedance 2.0のように著作権をめぐる議論のあるツールは、家庭・教育では慎重に
- 学校での利用:家庭利用と校務利用は別物。所属校や教育委員会のポリシーに従い、Workspaceの保護層を確認する
- 料金・上限の確認:プランごとの本数や料金は変動するため、利用前に公式ヘルプで最新情報を確認する
AIは絵本を完成させる道具ではない
「動いたらもっと面白いのに」という娘のひと言から始まった実験は、「動かすこと」と「物語を立ち上げること」は別の作業だ、という気づきにたどり着きました。動かす技術はAI が肩代わりしてくれても、どこを・何のために動かすかを考えるのは人間の仕事です。そして何より、見たあとに親子で交わす会話にこそ価値がありました。
AIは絵本を完成させる仕上げ機ではなく、親子や教室で物語をもう一度発明するための道具です。きれいに動かすことをゴールにせず、「どこを動かす?」「どんな音にする?」「見たあと何を話す?」と一緒に考える時間こそが、子供の主体性と創造力を引き出します。完成した絵本は、ゴールではなく入り口。あなたのご家庭でも、お子さんのひと言から、物語の続きを動かしてみませんか。
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