トピック

MacBook Neoという選択肢、端末選びとAI活用をどう判断するか

―「10万円台から始める Apple端末×AI活用」セミナーレポート

PCの価格高騰が続くなか、児童生徒や教員の端末をどうするか。多くの学校や自治体は次の端末選びが難しくなっている。

そこで注目したいのが、10万円台前半で購入できる MacBook Neo だ。今年3月に発売されてからリーズナブルな価格で話題を集め、生徒の学習用端末としても、校務用PCとしても選択肢が広がった。

インプレス「こどもとIT」編集部は2026年8月29日、「10万円台から始める Apple端末×AI活用」を開催した(協賛:ダイワボウ情報システム)。第一部では中学・高校・大学のBYAD/BYODを、第二部では校務DXと教員の働き方改革をテーマに、教員と有識者が登壇。参加者が体験できるハンズオンも実施した。当日の様子をレポートする。

授業と校務で活用できる、MacBook Neoの機能を体験

第一部・第二部とも、冒頭の1時間はデバイスメーカーによるMacBook Neoのハンズオンにあてられた。参加者それぞれの机にMacBook NeoとiPadが1台ずつ用意され、進行に合わせて全員で同じ操作を試していく。

MacBook Neoは耐久性の高いアルミニウム製の筐体に、最大16時間のバッテリー駆動時間を備える。ストレージが256GBと512GBの2種類で、512GBのモデルにはキーボード右上にTouch IDが搭載される。カラーは4色展開で、教育現場ではシルバーが選ばれることが多いという

第一部は学習用端末としての使い方が紹介された。書類や画像、メールなど Mac内を横断して探せるSpotlight検索 や、コピーしたURLから QRコードを生成する操作 など日常的に使える機能を体験。また、オンデバイスで動作するAI「 Apple Intelligence 」も取り上げられ、参加者はImage Playgroundを使って キーワードからイラストを生成 した。生成した画像は、Wordなど他社のアプリにそのまま貼り付けられる。

さらに、iPadとの連携へ。Mac側の操作でiPadのカメラを呼び出し、撮影した写真や紙の書類をその場でMacに取り込む機能を試した。 クラウドを経由せずにデータをやり取り できるのは、学校現場でありがたい。

ウェブサイトのリンクからQRコードを作成
MacからiPadのカメラを起動して撮影すると、写真はそのままMacに取り込まれる

第二部は校務用端末としての使い方が紹介された。写真に映りこんだ 人物の顔をなぞるだけでモザイクがかかる機能 や、余計なものを 囲むだけで消すことができる機能 は、いずれも子供の写真を扱うことが多い教員にとって便利だ。また、メモアプリで 音声を録音し、文字起こしから要約までを端末内で処理 する機能は、保護者対応の記録に活用できる。 iPadの写真アプリでコピーした画像をMacに貼り付ける 機能など、業務効率化に役立つiPadとの連携も紹介された。

なぞるだけで顔にぼかしを入れられる
iPadの写真をMacにコピー&ペースト

さらに、管理面では、MDMによる一括設定、セキュリティ更新がOSのアップデートとは別軸で提供されること、AirDropを許可してもログで追跡できること、共用端末向けの認証済みゲストモードや、既存のWindows環境の運用資産を活かしながら移行できる点などが語られた。すでに校務PCとしてMacを導入済みの自治体では、当初OSが変わる不安もあったというが、価格や運用コスト、iPadとの親和性など中長期で検討した結果、Macの採用に至ったと事例も紹介された。

生徒用と校務用、端末を分ける必要はあるのか

第一部に登壇したのは、聖徳学園中学・高等学校の品田健教諭と、近畿大学附属高等学校の乾武司教諭だ。テーマは「選ばない理由って、何なんですか」。価格や管理、使い勝手といった判断材料を、2人の実践をもとに整理していく構成となった。

聖徳学園中学・高等学校の品田健教諭(左)と、近畿大学附属高等学校の乾武司教諭(右)。2015年にApple Distinguished Educatorに認定された同期で、ともに一般社団法人Yohaku Educationに所属

冒頭、両教諭が述べたのは「生徒用と校務用で端末を分ける必要はあるのか」という点だ。教員のほうが高度な作業をするから性能の高い端末を、という考え方は実態に合わなくなっている。品田教諭は「教員でゲームをつくる人ってどれくらいいるんでしょうか。今は教員よりも生徒のほうが高度なことをやりたがっている。むしろ生徒に良い端末を与えたほうがいい」と語った。

Macの良さとして両教諭が挙げたのは、丈夫さ、バッテリー、セキュリティに加え、 カメラ、ディスプレイ、マイク、スピーカー の4点。乾教諭は「学校のなかで端末を見ている時間は実は長い。撮ったものが美しく見えるディスプレイの良さは地味に効いてくる」と学習の質に影響を与える点も示唆した。

学校用端末に求められる要素として挙げられた項目。赤枠で囲まれたカメラ、ディスプレイ、マイク、スピーカーの4点が、両教諭がとくに重視するポイントだ

バッテリーについては、品田教諭が自身の稼働記録を提示。ある月曜日は移動を含めて約10時間、うち授業が4時間40分だったが、18時の講義終了時点でも残量は20%あった。ACアダプターは持ち歩いたことがなく、マウスも使わない。授業に持参するのは本体と映像出力用のハブ、ポインターだけ。教室を移動する教員にとって、荷物が減る意味は小さくない。

品田教諭が示したある月曜日の稼働記録。7時から19時まで、移動と授業準備を挟みながら10時間稼働し、授業は計280分

故障率についても言及があった。乾教諭はMacの故障率の低さに触れたうえで、要因は本体の丈夫さだけではなく「生徒も結構大事にする。愛着の湧く端末だから」と述べた。品田教諭は、修理費だけでなく、対応する担当者の時間や、修理を待つ教員・生徒の時間も含めて考える必要があると指摘した。

Macの活用について、近畿大学附属高校は、iPadを全員に配付したうえで、実習教室を予約すればMacBookを自由に使える環境を用意している。パソコン教室のiMacでは情報の授業でプログラミングを行い、動画編集の際は自分のiPadとAirDropで連携させる。乾教諭は「 Windowsを使っていた頃に比べて教員の操作説明が減った。生徒たちは長い文章を打つならMac、動画編集の最後の詰めは大きい画面で、というように使い分けている 」と話す。IBコースでは2年次にMacを買う機会を設けており、任意にもかかわらずほぼ全員が購入するという。

聖徳学園は中高全員にiPadを配付したうえで、貸出用のMacBook Proを用意している。また3年前に開設したデータサイエンスコースでは、MacBook Airを導入。今年の1年生からは、MacBook Neoに切り替えた。2年生からはストレージが多い点で「 Neoが羨ましい 」といった声が出るという。Airは128GB、Neoは256GB。 生徒が気にしているのは処理性能ではなく、保存できる量 だ。写真や動画などデータが日々たまっていく使い方をしていれば、当然といえる。

聖徳学園のデータサイエンスコースの様子。2年生はMacBook Air、1年生はMacBook Neoを使う

教員用端末についても、両校とも選択の余地を設けている。聖徳学園は数年前から選択制を導入。近畿大学附属高校では、支給されるWindows機とは別に、自費でMacを持ち込む教員が4割に達したという。品田教諭は「生徒も先生も、やりたいことに合わせてツールを選べるのがベスト」と述べた。

ここまでの話を受けて、最後にそれでもMacを選ばない理由があるとしたら何だろうか、と両氏は会場に投げかける。Windowsでしか動かないアプリがあるのか、高いのに使えない端末だと思い込んでないか、Macに触ったことがないから不安なだけではないか。品田教諭は「もし生徒が同じようなことを言ってきたら、どうしますか」と問いかけ、セッションを締めくくった。

校務のAI活用、「できる」より先に「安心」を設計する

第二部に登壇したのは、関西大学初等部の堀力斗教諭。生成AIガイドブックの策定と、校務での実践について語った。

関西大学初等部の堀力斗教諭。同校は2010年開校で、思考スキルを育てる「ミューズ学習」と1人1台のiPad活用で知られる。Apple Distinguished Educator、大阪大学大学院医学系研究科招聘教員

堀教諭がまず紹介したのは、児童30人分の説明文を評価する場面だ。評価基準となるルーブリックをAIとの対話で固め、個人名を伏せて番号を振った答案を渡すと、3分半で全体の評価と評価理由が返る。そこからAIが出した客観的な評価と教師自身の評価と照らし合わせて達成度を見直していく。堀教諭は「照らし合わせや見直しの時間を入れても、 AIを使う方が断然早く、ボリュームのある仕事が簡単になっていく 」とAI活用の効果を語った。

児童30人分の評価フィードバックは170分から55分に。評価基準を考える20分と、全件を確認する30分は削らなかった

問題は、生成AIが便利だと示しても教員が使わないことだ 。児童の文章を入力してよいのか。AIに評価させてよいのか。使う以前の段階で不安がつきまとう。堀教諭は「AI活用を止めてるのは、使い方を知らないことではなく、使っていい範囲がわからないからではないか」と考えた。

では、保護者はどうか。堀教諭は在籍児童の保護者221名に無記名のオンライン調査を行った。知りたかったのは賛成か反対かではなく、何を大事にしているか、どう使わせてほしいと願っているかということだった。

結果は、一律禁止を望む声が8.1%にとどまる一方、 71.5%が「考える力が落ちる」ことを懸念 していた。保護者が知りたかったのは、 学校は何のためにAIを使わせ、子供にどんな力を育てたいのか 、その説明を求める声が多く寄せられた。つまり、保護者は「学校の方針が見えない」ことへの不安、教員は「どこまでやっていいか分からない」という不安があり、どちらも判断の物差しがないという点で同じ状態にあった。 そうしたことから、明文化したAIガイドブックの制作につながっていったという。

関西大学初等部が保護者221名を対象に実施した調査の結果

策定にあたっては、小中高と大学の教職員による委員会を設置。小学校で決めたルールが中学校で通用しないのでは意味がないため、高校卒業までを見通し、そこから逆算して小学校段階の内容を決めた。そのうえで、当時の5年生が文部科学省のガイドラインと保護者アンケートの結果をもとに、どんなガイドブックにしたいかを議論し、最終的に5つの合言葉が生まれた。堀氏は、「大人が決めたルールを守ってねとガイドブックを渡すよりも、 自分たちで話し合って固めたルールのほうが守る 」と語る。今のガイドブックも完成品とせず、今年の5年生が更新していくという。

5年生の議論から生まれた5つの合言葉。ひとりで決めない、まず自分でやる、本当か確かめる、名前・写真は入れない、時間を決める

このガイドブックの設計は校務で使う場面にも適用する。入力してよい情報か。AIに任せてよい判断か。人間はどこで確認するか。最終責任は誰か。堀氏は「AIにできるかではなく、 どこまで任せるかを決めなければいけない 」と語る。

AIが引き受けるのは作業で、判断は人が持つ。そうして生まれた時間を何に使うか。堀教諭は「AIで教師を減らしたいわけではありません。教師にしかできない仕事を増やしたい」と語り、子供がどう学ぶか、どんな力をつけたいかに時間をかけていきたいと締めくくった。

関西大学初等部の職員室。各席にはiMacが配備されており、教員はそれとは別にMacBookとiPadを持ち歩く。堀氏は2013年の着任までMacを触ったことがなく、当初は心理的なハードルが高かったと振り返る

2027年7月、セキュリティ対応は「義務」になる

第二部にはもう一人、デジタル庁で教育分野のプロジェクトマネージャーを務める稲田 友氏が登壇した。同氏は、NTTドコモビジネス株式会社に所属しながら、デジタル庁の発足時から兼業で勤務している。

稲田 友氏。デジタル庁で教育分野のプロジェクトマネージャーを兼業する。NTTドコモビジネスでは約600万人が利用する学習プラットフォームの責任者を務める

稲田氏は、現在、文部科学省が取り組んでいる 教育特化型AI の取組について見解を述べた。「一部報道では教育特化型AIを国が作るという報道もあるが、実態としては、国がAIを作るというよりは、 民間等が作る教育特化型AIの基盤となるデータを、国がしっかり整備していく ことだ」と解説した。

文部科学省が示した「 AI for Education 」は4層構造になっている。土台がGIGAスクールや校務DXのインフラ整備、その上に学習指導要領のデジタル化などデータの整備、さらにその上に教育用AIの実証、そしてルール策定が重なる。2027年度の概算要求にも、実証研究とデータ整備が事業として盛り込まれた。

文部科学省が示した「AI for Education」の構造。インフラ整備とデータ整備を土台に、教育分野に特化したAIの実証が位置づけられている

一方で、次世代校務システムの整備率は6.1%にとどまる。これを2028年までに100%へ引き上げる計画だが、さらに重くのしかかるのがセキュリティ対応の変化だ。これまでガイドラインという依頼にとどまっていた水準が、 2027年から法律になる 。なかでも現場への影響として稲田氏が挙げたのは、公共調達を伴わず無償で利用しているクラウドサービスの扱いだ。「生成AIを学校独自に無料で使っているようなものは本当に大丈夫なのか、 データの処理がどこで行われているのかを確認することが求められる 」と述べた。

2026年6月の省令公布から2027年7月1日の施行まで。経過措置が認められる項目は限られる

では、教育特化型AIとはどのようなものか。稲田氏は教育現場の不安として多い「個人情報・セキュリティの不安」と「教職員が使いこなせるか」の2つが求められる条件になると述べた。

個人情報については、文部科学省のガイドラインは、再学習に使われる場合は個人情報保護法違反になりうると示しているが、稲田氏は「学校設置者が個人情報の取り扱いについて適切な運用ルールをつくるのは難しい」と指摘する。その結果、自治体が独自に作るガイドラインは「個人情報は入力しない」という規定になってしまっているものが多い。そのため、子供の名前を番号に置き換えて使う教員もいるが、前処理に手間がかかり、楽になるはずが時間を使ってしまう。情報を与えずにAIを使っても一般的な答えしか得られない。必要なのは、教員が手作業で隠すのではなく、 システム側が個人情報を検知して秘匿化し、教員が見るときには復元されている仕組み だ。

さらに、教員が使いこなせるかどうかという障壁についても、毎回、教員が授業の内容を書きこんでプロンプトを作るのは現実的ではない。別のアプリで時間割があり、振り返りをしていればそのデータを活用する。その方が働き方改革につながる。稲田氏は開発中の教育特化型AIのデモも紹介。児童名が伏せられた状態で生成AIに渡り、返ってきた結果は教員の画面で実名に復元された様子を示した。

稲田氏は「先生が使うものは、個人情報もシステムでしっかり守りつつ、使いやすいものでなければならない」と述べ、今後はこうした形の教育特化型AIが登場していくだろうとセッションを締めくくった。

教員が「気にかけたほうが良い子は誰か」と尋ねると、児童ごとの様子と声かけのポイントが返ってくる。生成AIに渡る際は児童名が伏せられ、教員の画面では実名に戻る。教員が個人情報を隠す作業は発生しない

会場では個別相談と関連製品の展示も

会場には個別相談コーナーも設けられ、端末の更改やMacの管理・運用、校務支援システムの対応状況といったテーマで、参加者が直接質問できる時間が用意された。また併設された展示スペースには、MacBook Neoの実機のほか、MacBook Neoに対応した Satechiの マウス や 5-in-1マルチポートアダプター 、 6ポートハブ (国内代理店は株式会社プリンストン)や、 フランス製のMacBook Neo保護ケース「MW Sandy Color」 (国内代理店はグレイスリンクス・エンタープライズ株式会社)などが並んだ。参加者は講演の合間に手に取ってみたり、製品を囲みながら交流したりした。

PCの価格高騰が続くなか、次の端末をどう選ぶか。今回のセミナーで示されたのは、価格やスペックだけでなく、日々の使い勝手、管理の手間、校務DXにおけるAI活用の考え方や、国の動向まで幅広い内容が網羅された。今後は、端末更改と校務システムの整備、セキュリティ対応が重なる時期にあたるが、学びが広がる判断の材料をいまのうちに揃えておきたい。