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日本人学生がティム・クックにプレゼン!iPadの写真でパズルを作成するアプリ

Apple 丸の内でSwift Student Challenge 2024の入賞者を祝うイベントを開催

Apple 丸の内にSwift Student Challenge 2024の入賞者が集まった

 米Appleが毎年開催している学生向けプログラミングコンテスト「Swift Student Challenge」。世界中の学生に参加資格が与えられたグローバルのコンテストで今年も多くのアプリが表彰された。日本からも入賞作品が選ばれ、8月17日、東京のApple 丸の内に同コンテストの入賞者が集まり作品を披露した。

学生デベロッパのコーディングを応援

 Swift Student Challengeは、次世代の学生デベロッパ、クリエイター、起業家をサポートしてコーディングへの情熱を応援するという米Appleの取り組み。細かい規定はあるが、主に世界中の学生に対して参加資格が与えられている。

 同コンテストは、Appleが開発したプログラミング言語「Swift」を使ったアプリのコーディングや開発を行い、アプリの出来を競うもの。2024年のSwift Student Challengeの応募は2024年2月に行われ、すでに審査が終了して350名の受賞者と、卓越した作品を提出した50名の優秀受賞者が選ばれた。

Apple本社に招待された50名の優秀受賞者

 今回、Apple 丸の内でアプリを披露したのは、入賞作品に選ばれた以下の学生たち。今年の入賞者は世界35以上の国と地域から選ばれたという。

開発者区分アプリ名アプリ内容
Nanakoさん大学生LifeWithFlowersフラワーアレンジメント
Reonaさん中学生Cones色覚の確認
Kanさん高校生Mogicひらがなを学ぶ
Keitaroさん大学生PuzzlePix写真からパズルを作成
Masakazさん大学院生Look that way!あっち向いてホイのアプリ
Kyoyaさん大学生Graffitiお絵描きをARするアプリ
紹介された6つのアプリ
6人の開発者たち

 同イベントでは、6つのアプリをそれぞれの開発者が紹介し、相互にアプリについて質問しながら、アプリのコンセプトからこだわった点、作ったきっかけなどを語った。

 開発者は、苦労した点としてアプリを作るときにオリジナリティを出すため、すでにストアにあるアプリを確認することや、周囲の人に試してもらってフィードバックをもらうことが大切と話した。

 また英語の問題にも触れ、Swift Student Challengeの応募に英語が必須のため手間取ったとし、仲間と文章をレビューしてアプリを提出したことなどが語られた。一方で、英語力が必要なのはSwift Student Challengeに限ったことではなく、アプリ開発などを行う上では必要との意見も聞かれた。

 今回登壇した開発者と、6つのアプリについて紹介する。

フラワーアレンジメントと花への興味が深まる「LifeWithFlowers」

 Nanakoさんが開発した「LifeWithFlowers」は、フラワーアレンジメントと花についての興味を深めることができるアプリ。自身の生活に花があり、部屋に花があることで気持ちがリラックスするため、もっと花のある生活ができるようにと開発した。

「LifeWithFlowers」を作ったNanakoさん

 Nanakoさんは、アプリの完成度を上げることにこだわり、花をバスケットに挿入するときにアニメーションを付けることや、どうすれば彩りや空間がユーザーに伝わるかを重視した。特にアプリにチュートリアルを実装することで、ユーザーが「どう操作すればいいかわからない」とならないように工夫したという。

LifeWithFlowersの画面
アプリにチュートリアルを実装

色覚検査について学ぶ「Cones」

 中学生のReonaさんが作成した「Cones」は、色覚の検査について学ぶことができるアプリ。フィルターを使って識別しやすくなるようなアプリにしたという。作成のきっかけについて、自身がメガネをかけていて視力が低いことを話した。

「Cones」を作ったReonaさん

 特に色覚異常の方でも使いやすいように、見やすい色の配置や色覚異常があった場合の表示にこだわっている。色覚異常は医師に判断してもらう必要があるが、アプリである程度判断できるようになっている。

色覚の検査について学べるアプリ
色覚検査で標準的に使われる石原式色覚検査表を活用

日本語に興味を持てるように作ったシミュレーター「Mogic」

 Kanさんが開発した「Mogic」は、日本語が母国語でない人に日本語に興味を持ってもらえるように作ったシミュレーター。ダイヤルに合わせてひらがなを表示し、発音されるというシンプルなもの。

「Mogic」を作ったKanさん

 どこまで要素を削ることができるかを考え、画面右下に触れたときに操作ダイヤルのアニメーションが表示されるようにした。同アプリは、石油ストーブのやかんから水が落ちて蒸発する音から着想し、アート的な仕上がりを意識したという。

最低限の要素でアプリを構成
ダイヤルに合わせてひらがなが表示され、ひらがなが発音される

写真から世界にひとつだけのパズルを作成できる「PuzzlePix」

 Keitaroさんが作成した「PuzzlePix」はiPadの中にある写真から、世界にひとつだけのパズルを作成できるアプリ。小学生の妹が時間を持て余していたときに、パズルで遊んでいた昔を思い出し、写真からパズルを作成することを思い付いた。

「PuzzlePix」を作ったKeitaroさん

 Keitaroさんの妹がアプリの作成途中に「めちゃくちゃハマってくれた」とし、多くのフィードバックをもらったという。フィードバックを受けてパズルを4ピースから徐々に増やせるよう改良して、難しいパズルがいきなり出現しないように調整。思い出の写真でオリジナルのパズルを作りたいときにおすすめだという。

iPadにある写真からパズルを作成できる
パズルの作成画面

 Keitaroさんは、Swift Student Challengeの優秀受賞者の1人に選ばれ、Apple本社で開催されたイベントに招待された。WWDC24(Worldwide Developers Conference)にも参加し、Appleの最高経営責任者(CEO)であるティム・クック氏の前で「PuzzlePix」をプレゼンテーションした。

Appleの最高経営責任者(CEO)であるティム・クック氏と話すKeitaroさん

 Keitaroさんの作品について、ティム・クック氏は「Keitaroさんの才能や創意工夫、そして技術に対する秀でた情熱にとても感銘を受けました。Keitaroさんの未来が楽しみです」とコメントしている。

iPadのカメラを使って、あっち向いてホイができる「Look that way!」

 続いて、Masakazさんのアプリは「Look that way!」。英語の題名が付いているが、日本でおなじみの「あっち向いてホイ」をするアプリ。同アプリの特徴は、カメラを使って自分の顔の向きを判定してゲームを進めていくこと。

「Look that way!」を作ったMasakazさん

 アプリ開発のきっかけとしては、自分の祖父が家から出られず、認知機能も低下しているように感じたため。体を動かしながら頭を使えるゲームアプリを考えたという。お正月の遊びである羽根突きから着想し、負けると画面上の自分の顔に墨で落書きがされていくという機能を追加。楽しさを高めている。

カメラを使い、自分の顔の向きであっち向いてホイをする
負けると画面上の顔に落書きがされる。正月の遊びの羽根突きから着想

空間にお絵描きができる「Graffiti」

 「Graffiti」はiPadとApple Pencilを使い、描いた絵をカメラに映った壁など空間に配置し、あたかも実際に絵を置いたように見えるというARアプリ。作者はKyoyaさん。

「Graffiti」を作ったKyoyaさん

 Kyoyaさん自身、絵を描くのは得意ではないのだが「それでも描いてみたい」という気持ちがあり、どんな人でも楽しめるように「絵を空中に置けるアプリ」を作ってみたくなったという。

絵を描いて画面に配置すると、カメラの撮影位置に絵が表示される
絵や手書き文字を配置して、カメラの方向を変化させても空間の絵の位置は変わらない

 そして「作品を作る」ことに注目するのではなく、みんなで絵を描いて、みんなと一緒に楽しむ体験を大事にしてもらいたいという気持ちで作ったとのこと。会場からApple Vision Proへの対応について問われると、Kyoyaさんは作成がApple Vision Pro登場前だったとして「面白そうなので、いつか移植できたらいいな」と希望を語った。

開発者はお互いにアプリの特徴や疑問点を確認するほか、来場者からの質問にも答えた

アプリの体験を通じて発見や笑顔が広がる

 各アプリの紹介後、iPadを利用したアプリの体験会が実施された。来場者は、開発者の6人にアプリの使い方や操作方法などを聞きながら、思い思いにアプリを操作して楽しんだ。開発者の6人も、来場者がアプリを動かす姿を見て、新しい気付きやアップデートのヒントを得られたのではないだろうか。

「Graffiti」や「LifeWithFlowers」を操作する親子
「Graffiti」で自分の描いた絵を映す来場者
Masakazさんに「Look that way!」の操作方法を聞く来場者
「Graffiti」のソースコードを確認する来場者
「LifeWithFlowers」について来場者と話すNanakoさん
Kyoyaさんに聞きながら「Graffiti」を操作する来場者
Apple 丸の内は日本最大の直営店として、ワークショップやセッションを日々開催している
正田拓也