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教育版マイクラで、AIの原則とプログラミングを学ぼう
――教育版マインクラフト ワールド紹介その⑪
2024年1月10日 12:03
教育版マインクラフトは、毎年12月第1週のコンピューター教育週間に合わせて、Minecraft Hour of Codeの新作をリリースしてきた。「こどもとIT」でも過去に「Hour of Code 2020(インクルージョン)」、「Hour of Code 2021 (タイムクラフト)」を記事で取り上げている。
2023年に公開された新作のテーマは「AI」。ChatGPTなどの生成AIが社会で普及し、AIとの関わり方が大切になってきた今の子供たち。AIの仕組みや活用についてマインクラフトで楽しく学べる「Minecraft Hour of Code: Generation AI」を紹介しよう。
誰でも無料、スマホやタブレットですぐに試せる
Hour of Codeの一連のワールドは、デモレッスンとして誰でも無料でPCやスマホから体験できる。まずは、アプリのダウンロードから冒険の世界に入るまでを見ていこう。
教育版マインクラフトの公式サイトの右上にある「ダウンロード」をクリック。
すると、機種別にアプリのダウンロードやインストール方法をまとめたページに移動する。対象となる機種は、Windows、Mac、Chromebook、iPad/iPhone、アンドロイドのスマホとタブレットとかなり幅広い。ダウンロードはリンク先のストアアプリから行うが、Mac版だけは、インストーラのダウンロードとなる。
インストールして、アプリを起動すると、サインインをうながす画面が表示される。サインイン用のアカウントは、学校、クラブ、プログラミング教室などが管理発行しているものになる。ここでは、サインインしないでデモレッスンとして体験していこう。画面内の「アカウントをお持ちでない場合は、体験版レッスンをお試しください」をクリックすると、サインインなしで先に進める。
「利用規約に同意する」をチェックして「プレイ」をクリックすると、教育版マインクラフトのデモレッスンに進む。メニューの「レッスンを開始」をクリックしよう。
「Hour of Code 2023 AI世代」を選ぼう。詳細画面に進むと、ワールドの簡単な説明などが表示される。「ワールドの作成」ボタンをクリックして進もう。
なお、デモレッスンの場合、途中で保存ができないので、時間を取って取り組んだ方がいいだろう。数名に試してもらったが、およそ1時間程度で終了できる内容となっている。
初めての人でもチュートリアルで安心
Hour of Code 2023の世界へ入ると、まずはじまるのは基本操作のチュートリアル。マイクラがはじめての人でも、画面上の案内に従って基本操作から体験できるので、この部分だけでもおすすめだ。
また、今の教育版マインクラフトは、iPadやアンドロイドのタブレット、スマホでも利用可能。その場合は、タッチ操作で進めることになるため、チュートリアルにも両方が用意されている。なお、チュートリアルのスキップは執筆時点では表示されていなかった。
チュートリアルでは、マイクラの基本中の基本、視点操作、プレイヤーの移動、ブロックの設置と破壊、ボタンやNPCのクリックが続けて出てくるので1つずつやっていこう。
最後にボタンをタップすると、目の前のあやしいゲート(ポータルと呼んでいる)に飛び込める。勇気を出してくぐろう。
謎のAIとミッションを解決していこう
画面が変わり、どうやら自分の部屋にやってきたようだ。まず「あなた(つまり自分)」の会話からはじまる。数学のテスト結果が楽しみとか自分じゃないよな……と思う人も多そうだが、指示通り、パソコンの方に移動してクリックしてみよう。
するとびっくり。さっきまであったパソコンが教育版でお馴染みのエージェントと呼ばれるロボットになってしまった。しかし、このエージェント、少しぼけているのか、話していることがよくわからない。とりあえず言われるままついていこう。
話を整理してみると、どうやらAIを使ったシステムにいろいろな問題が起きており、見つかった4つの原則を過去の出来事にあてはめて改善しなければならないという。AIの原則がわからなくても、サポートしてくれる4台のガイドたちとミッションをクリアしていけばよいようだ。まずは、最初のガイドのところまで、ブロックを並べて橋をかけて進もう。
ランチを提供するシステムを改修しよう
連れてこられたのは、学校のカフェテリアのようだ。「わたし」が作ったシステムらしいのだが、問題があるという。AIの機能を正しく使っていなかったので直してほしいというのだ。
動きを見ていると、車椅子に乗った人にご飯が提供されていない。機械の前に人がいるかどうか正しく識別していないようだ。AIを使った自動検知は世の中にあふれているので、こんなところに問題があっては困る。
自動検知が正しく動くように、プログラムを訂正しよう。このプログラムの場合、人が前にいるかどうかの判断を「スマート」にしていなかったことが原因らしい。修正すると、全員が笑顔に。ここでの原則は、「公平性とインクルーシブ」。この原則を踏まえていればよかったわけだ。
ミッションが終わると今学んだAIの原則が追加され、エージェントが徐々に力を取り戻していく。別のガイドのところまでいって次のミッションに進もう。このあと各ミッションへ進む途中に、橋をかける課題がそれぞれ用意されている。プログラムもだんだんと難しくなるが、プロンプトで橋を生成する体験もさりげなく入っている。
芝刈り機のプログラムを直そう
次は、どうやら子どもの頃にやらかした事案らしい。庭の芝刈り機に問題があって、芝だけでなくスプリンクラーまで破壊してしまったようだ。そりゃあ、親に怒られるよなと思いつつ、プログラムを直していこう。
プログラムを直すと、無事にスプリンクラ−をよけて芝刈り機が動くようになる。ここで学習したのは「信頼性と安全性」の原則だ。身近なロボットやシステムには絶対必要なことがよくわかるミッションだ。
ゴミ回収ロボを再教育
次のミッションの場は、町の中。すでにロボット技術がだいぶ進んでいるようで、ゴミを収集するAI鳥のロボットや大型の自動運転車もあるようだ。ところが、AI鳥の様子がおかしい。
プログラムの中をMakeCodeで見ることはできるものの「ブラックボックス」になっているという。そのため、ミッションではAI鳥を探してスキャンすることから取り掛かる。町が結構広く、筆者は迷子になりかけた。
その後、プログラムの改良をすれば、無事にAI鳥がゴミを回収してくれるようになる。ここで学ぶ原則は「透明性と説明責任」。
4つの原則を身につけ「責任あるAI」へ進化させよう
最後のミッションは、昨今、特に関心が高まっている「プライバシーとセキュリティ」がテーマ。自動ロックのシステムに問題が見つかり、それをAIを使って解決していく。
全てのミッションが終わると、謎のAIだったエージェントが「責任あるAI」へと成長している。さらにスクーターに変形する。なんと、そんな機能があったとは……と驚きつつ、最後の場所に移動しよう。ここは、ぜひ、ご自身でやってみてほしい。
全てが終わると、自分好みのワールドを生成してもらえる。修了証明書ももらっておこう。
AIとともに生きる時代
Hour of Code 2023で、くり返し出てくる言葉が「責任あるAI」だ。この言葉は、最近、AI機能「Copilot」をリリースしたマイクロソフト社が掲げており、前出の4つの原則も、同社が公表している「責任あるAIの基本原則」にまとめられている。
教育版マインクラフトには、これに関連して「デジタルシティズンシップ」「サイバーセキュリティ」についても体験できるワールドが用意されているので、学校やクラブ、プログラミング教室などでも試していただきたい。
なお、本稿執筆時点では、一部未翻訳の部分もあったが、全体として進めるには問題ないだろう。AIとの関わりがますます増えていくであろう子供たちに、マインクラフトを通してAIに親しみ、4つの原則を知ってもらいたい。
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