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マイクロソフトが語る、海外の教育機関で進むAI活用とそのインパクト

AIが教育分野に多くの機会をもたらす
米マイクロソフトコーポレーション 教育マーケティング副社長 ペイジ・ジョンソン氏

日本マイクロソフト株式会社は2月20日、東京ビッグサイトでビジネスリーダーと開発者を対象にしたAIイベント「Microsoft AI Tour」を開催した。そのうち、「教育分野におけるAI活用の新たな可能性について」と題したセミナーでは、米マイクロソフトコーポレーションの教育マーケティング副社長であるペイジ・ジョンソン氏が、教育分野でのAI技術の重要性とその効果について述べた。

ジョンソン氏は、AI技術は教育のアクセシビリティとパーソナライゼーションの向上に寄与するほか、多忙な教師の業務効率化を高める手段となると述べた。たとえば、マイクロソフトのツールを用いることで、児童・生徒の学習計画やアセスメントを自動化できると紹介。

生成AIにまつわる不安要素に対し、マイクロソフトは対策を取る(画像は米マイクロソフトコーポレーション インダストリーアドバイザー 阪口福太郎氏のスライドより)

また、教育現場はサイバー攻撃の標的となることが多く、データの侵害は深刻な問題になっている。学生のデータは高い価値を持ち、攻撃者にとっては学生が若ければ若いほど長期にわたりその個人データが悪用できるからだ。学校が頭を悩ませるこの問題に対して、Copilotは専門知識がなくてもセキュアに、安全に利用できるよう設計されているとアピールした。

さらにジョンソン氏は、今後の労働市場においてAIスキルの重要性が増していくと指摘した。LinkedInでは求人情報の多くがAIスキルを要求しており、学校ではAI教育を無視できない状況にあるという。これからの学生はAIを学び、AIスキルを獲得していることが求められていると語った。

45%の教師が効率化の可能性を認識し、投資した1ドルあたり3.42ドルのリターンがあるという

マイクロソフトは責任あるAIフレームワークを基に製品を開発しており、教職員の業務効率化の向上が最も重要だと述べた。マイクロソフトが公開した「Work Trend Index」などの調査によれば、業務におけるAI活用に対して、45%の教師が効率化の可能性を認識しており、メールの自動化やアクティビティのブレインストーミングなどで時間削減が可能であるとしている。

また、教育環境の改善には、投資した1ドルあたり平均3.42ドルのリターンがあるとの結果が報告されていると紹介した。

海外で進むCopilotの活用

海外ではすでに多くの教育機関がマイクロソフトのCopilotを活用している。ウィチタ公立学校では、4万人の生徒に対してCopilotを用いたシステムで学習のパーソナライズを実現。また、スウェーデンのリンコピン大学では、教職員のブレインストーミングを効率化した。インディアナ大学は、Microsoft 365 Copilotの初期導入により、教職員の時間削減をWord、Excel、Teamsを通じて実現している。

ほかにも、カリフォルニア州立高等学校では、学生の成功とそのサポートのためにDynamics 365を活用。台湾教育部は英語教育にフォーカスし、3万人をサポートしている。さらに、アラブ首長国連邦では、AIチューターを用いたパーソナライズされた教育が提供されているなど、海外の教育機関ではCopilotの活用が進んでいる。

米マイクロソフトコーポレーション CMO 沼本健氏

後半で登壇した米マイクロソフトコーポレーションのCMO沼本健氏は、参加者とのQ&AセッションでAIの進化と教育分野への応用について語った。教育と技術、業界の協力は非常に重要であり、学校において実現可能なAIの活用が求められているという。沼本氏は、教育現場におけるAIの参入障壁を下げる例として、音読練習に活用できるAIツール「Reading Coarch」を挙げ、わかりやすい形で提供していくと述べた。

会場からは、教育現場にある「見えないもの」や「理解できないもの」を使う際の恐怖感に対しアドバイスを求められ、沼本氏は新しいテクノロジーやAIに限った話ではなく、使っている人が有志を募りコミュニティで地道に利用を拡げていく重要性を語った。