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マイクロソフト、生成AI「Bing Chat」の教育利用について説明会を実施
学習や校務における活用例を紹介
2023年9月8日 12:03
日本マイクロソフトは、同社の生成AI「Microsoft Bing AI」を活用した実証事業の進め方について、最新機能を交えて紹介するオンラインセミナーを8月25日に教職員など学校関係者向けに開催した。
文科省の公募に向けた緊急セミナー
このセミナーは文部科学省がChatGPTなど生成AIを学校で活用の実証に取り組む「リーディングDXスクール事業追加公募(生成AIパイロット校)」を公募(8月31日で締め切り)していたため、急ぎ開催したもの。
マイクロソフト社の担当者が、ChatGPTのベースになっているOpenAIの最新GPTモデルとBingの検索アルゴリズムを組み合わせた「Bing Chat」について説明、概要から学習や校務での活用例を紹介した。
Bing Chatについて説明したのはマイクロソフトディベロップメント株式会社 Bing開発統括部プロダクトマネージャーの山岸真人氏。まず、Bing Chatを提供する検索エンジン、Bing.comから説明した。
Bing ChatとChatGPTの違いはBingの最新情報を反映の有無
Bing.comはマイクロソフトが開発した検索エンジンである。200以上の国や地域で使われており、100種類以上の言語に対応している。特定のエリアだけでなく、世界中で広く使われている検索エンジンを開発しているのは、今のところGoogleとBingのみで、Bingは通常の検索だけでなく、無料で使えるBing Chatという新しい検索サービスを2023年2月にリリースした。
Bing Chatは通常の検索とは違い、チャット形式で人に話しかけるように問いかけることで、友達のように情報を返してくれる、従来の検索とは全く違うものになるという。
特徴的なものとしては3つあり、今までのように検索結果のリンクをたどって情報をまとめるのではなくそれをBingがやってくれること、話しかけるように自然な言葉で問いかけることで検索結果を得られること、そして、何か作りたいときに検索をするが、それを先取りしてメールの下書きや献立の作成などを作らせることができることなどと紹介、最先端のAIを使ったことで非常に精度の高い、パワフルな検索結果を提供することができるという。
Bing ChatはChatGPTを開発したOpenAI社とのコラボレーションで実現した機能だが、話題のChatGPTとの違いは、ChatGPTで使っている言語モデルの最先端の「GPT-4」を検索向けに少しカスタマイズしていること。
具体的にはGPT-4が持っているデータは少し古いものになるため、新しい情報で検索できるよう、Bingが持つ関連度と鮮度が高いWeb情報と検索アルゴリズムを組み合わせた。そのため、直前に起きた事柄の情報でも検索結果として返すことが、ChatGPTとの大きな違いだとした。
マイクロソフトが安全をコミット
またBing Chatでは、AIを使った際に発生する懸念点や事故について、あらゆる問題に対処をすることをコミットしている。情報漏洩や問題を起こすような検索結果を返さないように対応し、どう対応しているかもオープンに説明、ガイドラインを作成するなど誰もが安全にAIのテクノロジーを使ってより多くのことができるようになることもマイクロソフトとしてコミットしているという。
さらに、Bing Chatが安心して使えるという理解を深めるため、力を入れていることは情報の参照元をはっきりさせること。返した情報に対して、詳細情報としてどのWebサイトのデータから回答を生成したのかを表示、参照元にジャンプして確認することができるようなデザインとしている。そのため、教育の現場でも安心して使ってもらえるツールになっているとした。
なお、教育でのBing Chatの利用方法として、現在、Microsoft 365 EducationのアカウントではBing Chatが使用できないため、ログインなしか個人用アカウントでの利用になる。9月末には、教職員のサブスクリプションプランであるMicrosoft 365 A5 Faculty、Microsoft 365 A35 FacultyアカウントでBing Chat Enterpriseが利用可能になる予定。
また、チャット使用の回数制限があるため、個人用のマイクロソフトアカウントでログインして利用することがおすすめとなることや、WebブラウザはMicrosoft Edgeを使うことなど、現時点でのBing Chat利用方法についても説明した。
導入についても、Bing Chatに触れて慣れてもらう導入期から、授業ではグループワークで使ってみる普及期、そして、家庭での何か調べたいときに使う発展期まで3段階のステップで展開していくことを、おすすめの活用のひとつとして紹介した。
教科でのBing Chatの活用法、画像入力にも対応
各教科での具体的な活用として調べ学習を紹介。Bing Chatの回答から引用元などをチェックし、正しいと思ったら下書きとして採用する。
また、画像も「絵を描いて」などとBingに聞いて描いてもらった絵を資料で使うなどの活用もある。
家庭科で調理実習をグループでするには、レシピの検索だけでなくアレンジの案まで出してくれるように聞くことや、なにか内容に漏れがないかを確かめるツールとしての使い方もあるとした。
また、Bing Chatへの質問はテキストだけでなく画像の入力も可能。例えば美術の授業で他作品との比較の参考にするという活用も可能。クラブ活動でも練習メニューや安全面での注意点の確認などに活用でき、家での学びにも役立つという。
英語は会話相手や文法チェック、英語サイト要約など幅広く使える
活用のなかでも特に強調したところは英語について。「言語モデル」のAIというだけに言語関連は非常に得意だとし、外国語の学習には非常に多くの使い方があるという。
英会話の相手として使え、自分の好きなことを聞いて会話を楽しむこともできる。さらに自分の描いた英文法のチェックや、微妙な表現の違いについてもアドバイスしてもらうこともできる。
また、Bing ChatはEdgeというWebブラウザで使うことになるため、英語の情報を表示させながら、Bingのボタンを押してそのままBing Chatを使うことができ、そのままサイトの要約を英語でさせることや、要約からクイズを作らせることも可能。その際に英語のレベルの指定をして反映させることもできる。
教員向けには校務でも活用
Bing Chatの活用は生徒側だけではなく、教員の校務のサポートもさせることができる。例えば、教え方のヒントを集めることが可能。また、Webブラウザで開いているPDFの文書を要約することもでき、資料を早読みし、深読みすべきところを判断することも可能。
また、メールや配布資料の下書き作成もでき、500文字で作成するよう文字数指定もできるほか、画像の生成にも対応し、授業で使うスライドの画像を作らせることもできる。
マイクロソフトでは、今回のBing Chat以外にも生成AIのサービスを提供している。現在の教育用アカウントでは使えないが、Bingには法人向けにBing Chat Enterpriseを提供している。マイクロソフトが情報を取得しないでかたちでBing Chatを提供するもので、機密情報を扱いながら生成AIを使える方法を用意しているという。
また、最近では企業や自治体でOpenAIやChatGPTを採用というニュースが流れてくることがあるが、Azure OpenAI Serviceを使っている。Azure OpenAI ServiceではChatGPTやBing Chatではできないことができるようになる。
Azure OpenAI Serviceを使って台湾では英語学習で活用する事例があり、台湾の文部科学省に相当する省庁が、2023年春から生成AIを使った英会話のトレーニングを提供している。
また、生成AIを先生がさらに活用するにあたっては、事前に知識を身につける必要もある。現在は英語版しかないが「Empower ducators to explore the potential of artificial intelligence」としてAIを教育現場で使うときにどうすればいいのかなどをコンテンツをマイクロソフトのオンライントレーニング「Microsoft Learn」のなかに用意しているほか、日本語のコンテンツも準備しているという。