【連載】どれ使う?プログラミング教育ツール

「ChatGPT」との話し方!結構いろいろ間違ってたり?(後編)

自然な会話形式でさまざまなやりとりができるAIモデル「ChatGPT」を使ってみたレポートの後編。前編は、最初の質問をしてみるところまでの流れと、ChatGPTを利用するにあたり知っておいた方がよい前提についてご紹介しました。今回はもっと会話を進めてみましょう。前編もあわせてご覧ください。

会話形式で答えてくれるAIモデル〜こんな聞き方でも答えてくれる……!

さて、前編は、ChatGPTに「パンダを見に行きたいんだけど……」と、独り言なのか質問なのか微妙な文章で語りかけ、こんな返答があったところまでをご紹介しました。意図のはっきりしない発話にまともに返答してくれるのが、まずすごい。こちらの状況が絞り込めないので、ワールドワイドな壮大な回答です。

はっきりしない発話にも推測して回答する

ここで関連質問をしてみます。ChatGPTは前の会話をふまえて回答できるのが特徴です。また最低限の言葉で「東京で見るには?」と聞いてみます。その回答がこちら。上野動物園をおすすめしてくれました。

細やかなアドバイスも添えて上野動物園をすすめてくれた

ChatGPTの学習データは、2021年以降の情報は限られているので、先日シャンシャンが中国に返還された情報がキャッチできていないのは当然です。同様に、2021年に生まれた双子のシャオシャオとレイレイの情報も反映されていません。しかし、シャンシャンは日本で初めて誕生したパンダではないので、ちょっと内容に間違いがまざっています。実は前編の記事でも紹介した通り、一つ目の返答の内容にも、一部間違いがあります。

上野のパンダについてさらに深掘りして聞いてみます。

「上野動物園で飼育されているパンダについて教えて。」

上野動物園のパンダについてくわしく説明。最もらしいがその内容は……

詳細な説明をしてくれているのですが、本当は、オスが「リーリー」で、メスが「シンシン」。中国からきたのは2011年なので、来た年や貸与が延長された年も違います。ChatGPTは、間違いの指摘を認めるのも特徴ということなので、間違いを指摘してみることにしました。

「あれ?オスが「リーリー」で、メスが「シンシン」みたいだけど……」。

間違いを認めてお詫びする。しかし訂正しているようで間違っているまま

ちゃんと間違いを認めてお詫びをされてしまいました。ちゃんと訂正するんだ……! と思ったものの、よくみるとやはり間違ったままです。丁寧なお詫びの言葉が並ぶので、間違った情報を繰り返していることに一瞬気づきませんでした。ていねいな会話文というのは、それだけで説得力を上げてしまうものなのだな……と実感して、ちょっとヒヤリとしました。

ちなみチャットのスレッドを別にして、英語で同じような手順で聞いてみると、日本で見られるパンダに関する情報の精度はさらに下がりました。AIモデルは膨大な情報を学習させてできていますから、学習データの英語の情報と日本語の情報の違いも影響しているのかもしれませんし、ちょっとした聞き方の違いも影響しているかもしれません。

万能ではなくて、向いている用途、向いていない用途がある

パンダの質問はこの辺にして、例えば、明日の天気を聞いたらどうなるでしょうか?

こんなふうに、ちゃんと断られました。ChatGPTはリアルタイムでインターネットにつながって学習データを収集しているわけではなく、学習データは2021年以降のものは限られているので、「明日の天気」のような情報は答えられないのです。

また、パンダの例でもわかった通り、情報が間違っていることもありますから、ChatGPTは、インターネットの情報検索のような感覚で何かを調べるのには向いていません。ChatGPTが生成した文章が、何の情報をもとにそう判断して回答を生成したかがわからないので、結局、記述が正しいかどうかは、別の手段で調べなければならないのです。これでは、不安で情報源として使えません。それなら最初からGoogle等で検索をして、情報の出所を確認しながら信頼性を判断して調べる方が、確実で速いということになります。

一方で、ChatGPTが会話形式で応答する力や、自然な文章で端的に表現する力は、本当にびっくりしてしまいますし、さまざまな可能性を感じさせられます。知的な主導権は人間が持ち、すでに自分がある程度よく知っていて情報の真偽の判定ができるような分野で、自分の作業効率を上げる目的で使うのが良いのではないかと感じています。

例えば、一定の条件で複数のパターンの文章を例示させてインスピレーションを得たり、手作業では面倒な記述をさせて効率アップしたりするという用途に使うと、とても便利です。

手作業では面倒な文章の成形に使える。もっと大量な項目数で面倒なルールだとさらに便利

新しい技術に興味をもつきっかけに

ChatGPTのような新しいものが出てきたときに、「AIがなんでも答えてくれる」と手放しで受け止めるのではなく、こうしてリサーチプレビューの制限や特徴を確認しながら使ってみると、なんでもできる万能なものではないことも実感できるはず。むしろそれが、AIに興味を持つきっかけになるのではないでしょうか。

ChatGPT自体の精度はもっと上がっていくでしょうし、機能パーツのようにしてさまざまなシステムの一部に組み込めるAPIも有償で提供が始まりました。日々状況は変化していて、ChatGPTを開発するOpenAIに出資しているMicrosoftは、検索エンジンBingなどに、ChatGPTを強化してカスタマイズしたAIモデルを組み込んだプレビュー版を発表して話題になってます。GoogleもBardという会話型AIサービスを開発中であることをすでに発表しています。

こうした新しい技術の出始めに機能を試せる機会は貴重です。大人がまずは興味を持って試してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

なお、早速授業に取り入れてみる先生も出てきています。東京学芸大学附属小金井小学校の公開授業で、道徳の授業で、AI搭載Bingを先生がデモンストレーションして見せた事例があり、感想レポートをICT toolboxに書きましたので、ぜひチェックしてみてください。

「どれ使う?プログラミング教育ツール」これまでの記事

2019年~2022年4月まで「窓の杜」掲載

狩野さやか

株式会社Studio947のデザイナー・ライター。ウェブサイトやアプリのデザイン・制作、技術書籍の執筆に携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、子ども向けプログラミングやICT教育について情報発信している。