【連載】どれ使う?プログラミング教育ツール

話題の「ChatGPT」、親として知っておきたいこと(前編)

13歳から利用可能、18歳未満の場合は保護者の許可が必要

「会話のように質問するだけで、AIがなんでも答えてくれる世の中になったらしい」……と、最近「ChatGPT」の話題をSNSやニュースで見聞きした方も多いはず。とはいえ、どのようなものなのかを試したことがない方や、新しい技術をどんなふうに受け止めたらよいのか分からないという方も多いでしょう。

そこで、ChatGPTがどんなものなのか、使用レポートを前後編の2回に分けてお届けします。今回は、利用時に意識したいことや注意点などを中心に、最初の質問をするところまでをご紹介します。

会話形式で答えてくれるAIモデル

話題のChatGPTは、AIの研究開発を行うOpenAIによって開発された、テキストの会話形式で応答をするAIのモデルです。AIモデルというのは、膨大な情報をさまざまな方法で学習させて作られるAIの仕組みのこと。モデルによってできることは違い、ChatGPTの場合は、会話形式で入力された言葉に対する適切な返答を生成することができます。

自然な会話文で質問に答えられるだけでもちょっと驚くナチュラルさなのですが、それだけでなく、会話の履歴を把握していて関連質問に答えられたり、間違いを認めたり、不適切な要求は拒否したりするようにできています。日本語での応答にも対応しています。

OpenAIのウェブサイトのChatGPTのページから、ChatGPTのリサーチプレビューを無料で利用できます。リサーチプレビューというのは正式なサービスではなく、研究段階で公開してフィードバックを集めるためのものです。

OpenAIのChatGPTのページ。[Try ChatGPT]ボタンで入る

利用には、OpenAIのアカウントが必要です。指示にしたがって登録を済ませれば、すぐに利用ができます。ここでは年齢を聞かれることはないのですが、Terms of Use(利用規約)には、サービスを使うには、13歳以上であること、また、18歳未満の場合は保護者の許可が必要とあります(※)。お子さんの年齢に応じて対応しましょう。

※記事公開時点での情報です

アカウントを作るには[Sing up]から登録。メールアドレスか、Googleアカウント、Microsoftアカウントで登録できる。認証用に電話番号も求められる

作成したアカウントで[Log in]すると、まず3つのダイアログが出てきます。こういうものは読まないでどんどん飛ばしてしまう方もいると思いますが、今回のように新しい技術を使うときは、このあたりの前提を押さえておくのが大切な学びになりますから、しっかり読んでおきましょう。

ChatGPTの位置づけを知っておこう

<1つ目のダイアログ>

【日本語訳】
これは無料のリサーチプレビューです。
・外部からのフィードバックをもらい、システムを改善してより安全にするのが目的です。
・安全対策をしていますが、ときには間違った情報や誤解を招く情報を出したり、攻撃的もしくは偏見のある内容を出すかもしれません。そのようなアドバイスを(ユーザーに対して)しているわけではありません。

ここでのポイントは、ChatGPTは、時々間違うということ、また、ユーザーが不適切な要求を投げかけても拒否するように学習させてあるものの、それでも時には攻撃的だったり偏見のある情報を生成してしまうかもしれないよ、ということです。

でもそれは決してChatGPTがそうした考え方を推奨しているわけではなく、アドバイスとして言っているわけでもないということを理解しておきましょう。このリサーチプレビューは、そういった不適切なアウトプットがあった場合にユーザーからフィードバックを得ることで、より安全性を高められるように改善するという目的もあるわけです。

<2つ目のダイアログ>

【日本語訳】
データの収集方法
・(ChatGPTのリサーチプレビューでの)会話は、システム改善のためにAIトレーナーが見るかもしれません。
・センシティブな情報を会話で共有しないでください。

ここでのポイントは、ChatGPTでする会話は、AIモデル改善のために使われるので、AIトレーナーが読む可能性があるということです。だから、個人情報や他人に知られたくないようなセンシティブな内容などを会話に入力するのはやめてくださいね、と注意を促しています。

<3つ目のダイアログ>

【日本語訳】
フィードバックをお待ちしています!
・このシステムは会話形式に最適化されています。どの返答が良かったとか、良くなかったということを教えてください。
・Discordでもフィードバックを受け付けています。

ここでのポイントは、改善のためにフィードバックをどんどん寄せてね、ということです。会話ひとつひとつに、「いいね/よくないね」の手の形のアイコンがあるので気軽に評価できます。また、グループチャットのDiscordに参加してフィードバックをシェアしてね、と協力を呼びかけています。

すぐにチャットスタート

ダイアログを読み終わったら、こんな画面が表示されます。とりあえず、最初の質問を入力するだけです。日本語を入力しても大丈夫です。

あえて、どのくらいの認識力なのかを試すために、あまりはっきりしない表現で語りかけてみます。

「パンダを見に行きたいんだけど……」

「!」までつけて共感を示して、ていねいに説明してくれる

こんなふうに話しかけるだけで、なんとここまで答えてくれました!(この会話の続きは後編の記事で詳細を紹介します)

ChatGPTは人が作ったシステムという意識を持つことが大切

ちょっと使ってみただけでも、これだけの言葉の投げかけでよくまぁ返答してくれて……と驚かされるのですが、かといって、冒頭で書いたような「AIがなんでも答えてくれる世の中になっちゃった」というのとはちょっと違います。

AIモデルには学習させる膨大なデータが必要で、ChatGPTはインターネット上の膨大なテキスト情報のうち一定の基準で選ばれた情報が学習データになっています。とはいえ、リアルタイムでインターネットにつながって学習データを収集しているわけではなく、2021年以降の世界や出来事についての情報は限られています。

ChatGPTは間違った情報を示すこともあるので、ChatGPTのFAQには、「ChatGPTの返答が合っているかどうかチェックすることをお勧めします」とはっきり書かれています。リサーチプレビューの利用者としては、間違った解答には積極的に「よくないね」アイコンでフィードバックし協力したいところです。

パンダの説明に実は間違いが混ざっている。カナダのトロント動物園では2018年にパンダの展示を終了している

また、FAQの「なんでAIはそんなにリアルで生きているみたいな感じがするのですか?」という問いには、AIモデルが、インターネット上の人間が書いた会話を含む大量の文章を学習データにしてトレーニングされているから、生成される返答も人が話しているように見える、と説明しています。

そして、システムがそういうふうに設計されているから、その結果として出力されているという意識を持っておくことが大切ですよ、という趣旨のことが書かれています。AIが生き物のように何か感情や意図をもって答えたり、何かアドバイスをしたりしているわけではなく、設計されたシステムのアウトプットにすぎない、というわけです。

技術の使い手としての距離感が大切

こんなふうに、新しい技術に対して、適度な距離感を持って接することって大切だなと思うのです。「AIすごい」と妄信するのでもなく、「AIだめじゃん」と遠ざけるのでもなく、自分が技術の使い手としての主導権を持って、どう使うのが自分にとって効率的で、自分の能力を拡張させられるのか……という視点で付き合うことが大切だと思います。

「AIには膨大な学習データが存在する」くらいの超大雑把な技術のイメージを持つだけでも、使い手としてのスタンスを保ちやすくなります。さらに、AIにどうやって大量なデータを学習させるのかということに興味をもって、機械学習やディープラーニングについての簡単な解説を探して読んでみるともう一歩具体的なイメージを持てます。そういうことがきっかけでAIモデルを作る側にまわりたいと志すお子さんもいるかもしれません。

技術に対する興味を持つためにも、まずは、新しい技術を使ってみて、どんなことができるのか、驚いたり面白がったりしながらいろいろ試してみるのがやっぱり大切。後編は、ChatGPTで試したパンダについてのチャットの続きをお届けします!!(後編はこちらから

「どれ使う?プログラミング教育ツール」これまでの記事

2019年~2022年4月まで「窓の杜」掲載

狩野さやか

株式会社Studio947のデザイナー・ライター。ウェブサイトやアプリのデザイン・制作、技術書籍の執筆に携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、子ども向けプログラミングやICT教育について情報発信している。