【連載】どれ使う?プログラミング教育ツール

【書籍プレゼント】イギリス生まれ、お話でわかるプログラミング絵本が日本で発売

アルゴリズムから変数まで基本コンセプトがわかる!!

お話でわかるプログラミングシリーズ1冊目の「アルゴリズムを考えよう:ウォーターパークにあつまれ!」

かわいいロボットたちが活躍する楽しいストーリーでプログラミングの考え方を学べる絵本、お話でわかるプログラミングシリーズの「アルゴリズムを考えよう:ウォーターパークにあつまれ!」(ケイトリン・シウ作、マルセロ・バダリ絵、狩野さやか訳・解説/ほるぷ出版)が出ました!こちらは全6冊のシリーズとなっていて、今回紹介するのは、その1冊目。

プログラミングの基本になる知識を日常のストーリーに置き換えて自然と理解できる内容で、明るくポップなイラストレーションが印象的です。原書はイギリスで出版されていて、日本での出版にあたり、私が翻訳と解説を担当しています。原書を見て相談を受けたときに「あぁこういう絵本が欲しかった!!!」と瞬時に思ったくらい、プログラミング教育の現場で便利に使える要素がいっぱいです!

6冊のシリーズ絵本でプログラミングの基本コンセプトをおさえる

「お話でわかるプログラミング」シリーズは、プログラミングでおさえておきたい基本の考え方を、ロボットたちのストーリーで自然と学べる絵本です。

最初は「アルゴリズム」がどんなものなのかを知るところから始まって、アルゴリズムとプログラムの3つの基本形である「順次」「反復」「分岐」の考え方、プログラミングで必須の「変数」の役割と使い方、さらに、プログラミングの前段階として問題を分析的に捉える「分解する」という考え方について、それぞれが独立した一冊の絵本になっています。

「お話でわかるプログラミング」のシリーズの6冊

●「お話でわかるプログラミング」のシリーズの6冊
「アルゴリズムを考えよう: ウォーターパークにあつまれ!」
「順次のかたちで考えよう: はじめての学校」
「反復のかたちで考えよう: ツリーハウスをつくろう!」
「分岐のかたちで考えよう:たんじょうびパーティー大作戦!」
「分解して考えよう: ロックンロールしようよ!」
「変数をつかって考えよう: 本づくりにちょうせん!」

2022年12月に発売されたのは、1冊目の「アルゴリズムを考えよう〜ウォーターパークにあつまれ!」で、あとに続く5冊は2023年2月に発売されます。図書館向けの製本、流通、価格で一般書店には並びにくいのですが、ネット書店等で購入することができます。

個性的なロボットたちのお話で、自然にコンセプトを理解

シリーズの絵本ごとに個性的なロボットたちが次々に登場して、ロボットたちの日常のできごとでストーリーが展開。例えば「アルゴリズムを考えよう」は、大好きなウォーターパークにどうやったらたどりつけるか……というストーリーで、アルゴリズムのことがわかるようになっています。

楽しいストーリーで自然とできてしまう

ストーリーの流れの中で、「やってみよう!」「考えてみよう!」などのページがところどころ登場し、読者自身の日常に置き換えて考えを深めることもできます。

といっても、文字だらけのページが間にはさまる解説本タイプではなく、絵本の一部として一気に読み通せる構成ですから、小さなお子さんでも大丈夫です。対象年齢は小学校1年生からで、絵本全体を通して、小さなお子さんでもわかりやすい言葉や表現を選んで訳しています。

絵本のポップで元気が出るイラストレーションと色づかいが私は大好きで、ロボットたちの性格づけもなかなかいい感じ。ときどき、「あ、またこの子が出てきた!」と脇役として再登場するロボットもいたりして、6冊通して一貫した世界観で描かれています。

サングラスをとるとけっこうおとなしそうな顔をしている主人公のロボット(左)。「やってみよう!」のコーナーも絵本の一部として自然に読み進められる(右)

体系的に知識を学ぶことで、子どもたちのプログラミング体験を補強

2020年から始まった日本の小学校段階のプログラミング教育では、新しい教科としてプログラミングの授業が設置されているわけではなく、通常の教科などの時間で、プログラミング体験を取り入れることになっています。

授業時間や内容は学校裁量が大きく、授業時間の確保も難しいとされる中、学校によって実施状況はさまざまです。私がちょっと残念だなと思うのは、小学校のプログラミング教育は、「プログラミング的思考」を育むことを重視する一方で、教科書もなく、この絵本で取り上げているようなプログラミングの基本の考え方を体系立てて学習する情報や教材が少ないことです。

プログラミングってそもそも何のためにやるのか、アルゴリズムって何なのか、プログラムを組み立てる基本構造は決まっていて、それぞれどんな考え方なのか……そうした知識は決して難しいものではなく、簡単な言葉と表現で説明することができます。

このシリーズの絵本は、各巻のテーマを日常の出来事に置き換えたストーリーでとにかくわかりやすく伝えてくれますから、授業でプログラミングをやる際に、先生が考え方を噛み砕いて教えるのにとても便利です。例えば、授業の内容に合う一冊を選んで絵本のストーリーで考え方に親しんでから、実際のプログラミング活動に入るという使い方ができます。学校や教室に絵本が並んでいれば、体験的なプログラミング活動の考え方をあとから子どもたちが自主的に補強することもできるでしょう。

また、プログラミングスクールで、プログラムの3つの基本構造や、変数の役割をもっと小さな子にもわかる言葉でわかりやすく伝えたいんだけどなぁ……なんてときにも便利。待合コーナーなどに置いておけば、子どもたちやお迎えの保護者が手に取って自然と目にしてくれそうです。

「プログラミング的思考」を育むのにもぴったり!

イギリスでは初等教育のナショナルカリキュラムに「Computing(コンピューティング)」という教科があり、コンピューターに関する知識やプログラミング、問題解決の手法としての「Computational Thinking(コンピュテーショナル・シンキング)」などを学ぶことになっています。

「Computational Thinking」というのは、コンピューターを利用して課題解決する際の考え方の手法で、プログラミングにはもちろん、日常の課題解決にも役立てられるとされています。

こうした背景から、今回の絵本シリーズのように、プログラミングで使う考え方を、日常のストーリーで伝えたり、コンピューターなしのアクティビティで気軽に触れられるようにするのは、ごく自然な流れなのです。なお、絵本の各巻のテーマは、どれも「Computing」の初等教育(Key Stage1、KeyStage2:5/6才~10/11才)の学習内容としてナショナルカリキュラムに記載されているものばかりです。

日本の小学校のプログラミング教育で重視されている「プログラミング的思考」は「Computationl Thinking」の訳語ではありませんが、「Computational Thinking」の考え方をふまえて独自に定義されています。英語圏の教材には親和性の高いものも多く、この絵本シリーズもそのひとつです。

「絵本を読む“だけ”でプログラミング的思考が身につく」というわけではありませんが、絵本で考え方に親しんだ上で実際のプログラミング活動に入ったり、プログラミング活動と組み合わせて絵本を通じて考え方を補強したりすると相乗効果は抜群で、プログラミング的思考を育むのにぴったりです。

なお、絵本は考え方をストーリーを通じて理解する内容なので、日本向けに、実際のプログラミングとの関係性がすっきりわかる解説を巻末に書き下ろしています。後続の巻では、子ども向けのビジュアルプログラミング言語Scratchでの具体例も掲載しています。絵本のストーリーですっと考え方が頭に入れば、プログラングにより親しみを持って取り組めるでしょう。

先生や保護者など大人向けの解説があるので安心

翻訳とはいえ、単語ひとつでも、英語が持つ意味の範囲と、日本語が持つ意味の範囲が違うので、著者の意図を汲みながら、日本語で小さな子どもたちがわかりやすい表現はどれか、どの専門用語を使うのが最適か、など、繰り返し検討しながら翻訳しました。ロボットたちが活躍するとても楽しくわかりやすい素敵な絵本なので、地域の図書館や学校、プログラミングスクールなどで購入され、多くの人に親しんでもらえるようになったらうれしいです。

どんな絵本シリーズなのかまずは知ってもらえるよう、シリーズ1冊目「アルゴリズムを考えよう」のプレゼントがあります! 小さな子どもたちも気軽にプログラミングの考え方に触れる機会が増えますように!

★抽選で5名様に書籍プレゼント!
お話でわかるプログラミングシリーズ「アルゴリズムを考えよう:ウォーターパークにあつまれ!」(ケイトリン・シウ作、マルセロ・バダリ絵、狩野さやか訳・解説/ほるぷ出版、定価2,750円税込)を抽選で5名様にプレゼントします。
ご希望の方は、 こちらの応募フォーム に必要事項をご記入ください。 応募締切は1月20日(金)まで 。当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。

「どれ使う?プログラミング教育ツール」これまでの記事

2019年~2022年4月まで「窓の杜」掲載

狩野さやか

株式会社Studio947のデザイナー・ライター。ウェブサイトやアプリのデザイン・制作、技術書籍の執筆に携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、子ども向けプログラミングやICT教育について情報発信している。