【連載】どれ使う?プログラミング教育ツール
画像生成AI「DALL-E 2」、気をつけるべき利用のポイントは?(後編)
〜バリエーションを作ったり描き足しもできる!
2023年8月3日 06:40
前編に続いて、画像生成AIの「DALL-E2」(ダリ ツー)を試したレポートをお届けします。「DALL-E2」は、会話型AI「ChatGPT」を開発したOpenAIの画像生成AIシステムです。現在利用は有料になってしまいましたが、2023年4月6日以前にOpenAIの会員になっていると、限定数の画像を生成できるクレジットが付与されています。
画像をもとにバリエーションを作る
「DALL-E2」では、画像をもとにそのバリエーションを作らせることもできます。試しに、私が自分で水彩で描いた絵をアップロードしてみます。
アップロード時には注意が表示されます。画像の権利をよく確認し、特に人が写っている写真は写っている人に同意を得ることや、アップロードしたデータはAIモデルの改善やポリシーの強化に使われたり、チェックされたりする可能性があると伝えています。
4つのバリエーションが生成されました。
タッチも違うし個別に見るといろいろ気になることがありますが、こんな風にバリエーションが作れるということがわかりました。
画像に言葉で指示して別の要素を足す
「DALL-E 2」ではさらに、「Outpainting」で、絵をもとに別の情景を加えてレイアウトしなおしたり、「Inpainging」で絵に別の要素を描き込んだりすることができます。試しに、アップロードした画像の一部を消して、言葉の指示で新たなものを描き足してみました。
こちらも試しに、私が描いた絵をアップロードしてみます。背景を消したり位置を調整したりしたら、絵に描き足す指示をします。元はハンバーガー1個の絵なので、「ハンバーガーとポテトとドリンク」と指示をしてポテトとドリンクを描き足させてみました。
何度か試して複数の候補の中から選んだのがこちら。
すごい、確かに描き足されています。ただ、なんとなくマッチしている感じに見えますが、私はこうは描かないなぁ……という感想。写真でやるとまた全然違ってばっちり馴染んで見えるのかもしれません。
権利などの課題にも敏感になろう
OpenAIが、「DALL-E 2」で生成した画像を公開する際にはその画像を画像生成AIが生成したことを明らかにするよう勧めていることを前回紹介しました。生成した絵を完全に人が描いたかのように誤解させたり、写真が本物で本当に起きた出来事のように思わせたりしないことは大切です。
さらに今回紹介したように、元画像からバリエーションを作ったりアレンジを加えたりするのは、より慎重になる必要があります。
元の絵の作者や元の写真の撮影者など著作者自身ではなく、他の人が許可なく絵や写真をAIで改変して公開することは、著作権上問題になるでしょう。心情的に考えても、著作者に対する敬意を欠く行為です。「DALL-E 2」は、権利関係に配慮するのはもちろんのこと、人が写っている写真は、写っている人の同意をとるようにとも示しています。
言葉の指示で生成する場合でも、画像を元に生成する場合でも、考えなければいけない権利の問題は他にも様々あります。世界では、そもそも、自分の制作物がAIの学習データとして使われることの可否を、制作者自身が選べるべきではないかという議論もあります。
議論の一方で、世の中のスピードは速く、制作の補助として生成AIを積極的に利用する動きも進んでいます。すでに、グラフィック制作ソフトで有名なアドビは、AIの学習データの権利関係に問題がないことを明らかにした上で、生成AIの機能をベータ版として公開し、一部製品にも組み込み始めています。
技術の出始めのときには、拒絶する前に使ってみて、何が問題になりそうか、何がクリアできそうか、自分はどう使うか、自分なりのスタンスを定める機会と時間をもつことが大切です。何かひっかかるな……ということは見過ごさずに議論したり、問題提起するのも重要。保護者主導、先生主導で子供たちと一緒に試してみて、話し合う機会にしてみるのもいいですね。