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マイクラでネットのルールが身につくコンテンツ「ホームスイートホーム?」
――教育版マインクラフト ワールド紹介その⑧
2022年10月7日 12:03
昨今、子どもたちがスマホやゲーム機、さらにはGIGAスクール端末などでインターネットを利用する機会が増えている。それに伴い、ネット上でのトラブルを未然に防ぐ方法や、ネット上のルール、マナーなどを身につけておくことが求められるようになった。さらには、「よきデジタル市民になる」という文脈で「デジタルシティズンシップ」というテーマが語られることも増えてきた。
そこで、今回はネットを安全に使うための基本ルールについて、実際によくある4つの事例をアドベンチャー形式で体験していくワールド「CYBERCRAFT: HOME SWEET HMM」(⽇本語名「サイバーセーフ︓ホームスイートホーム︖」)というワールドを取りあげよう。
統合版でも無料でマーケットプレイスから利用可能なので、ゲーム機でマイクラを楽しんでいるお子さんにもぜひお試しいただきたい。
ネットで起こるトラブルを楽しみながら体験するアドベンチャー
では、さっそくいつものように世界の中に入っていこう。ライブラリから、「主題テーマ」-「デジタル市民権」カテゴリーから選ぶことができる。
余談だが、このワールドの日本語表記は「ホームスイート ホーム?」のように「?」が最後についている。文字化けとかではなく、本当についているのである。原題(HOME SWEET HMM)を直訳すると「ホーム スイート うーむ?」なのだが、さすがにわかりづらい、と判断したのだろう。翻訳チームのご苦労がしのばれる。
ワールドが生成されると、プレイヤーは家の中に出現する。部屋の中を見渡すと、「信頼できる大人」のNPC(※)が待っている。。日本的に言えば「保護者」や「先生」といったところか。
※Non Player Characterの略。プレイヤーが操作できないキャラクターのことで、ワールド内を案内したり、問題を出題したりする。
大人に話しかけると、誰かが家のドアのところに来たようだ。ドアを開く前に誰が来たのか確認しよう。どうやら、マイクラでお馴染みの「ゾンビ」のようだ。通常のマイクラなら勢いよくドアを開けてボコボコとやっつけるところだが、このワールドは現実のルールで考えて、「危険な訪問者」にどう対応するかを考える必要がある。さあ、ボタンをクリックする前に考えてみよう。
友達とネットで遊びたいときは、どうする?
しばらくすると、友達から一緒にゲームしようというお誘いがパソコンに届いたようだ。大人に相談すると「もちろん一緒に遊んでかまわないが、友達のユーザー名をきちんと確認しようと」アドバイスされる。友だちのユーザー名を控えてオンラインでプレイをはじめると、ゲームの世界に飛び込んでいく。
すると友達登録を管理する「フレンドマネージャー」が、いくつかの友達リクエストから選ぶように話しかけてくる。同級生のユーザー名と照らしあわせて正しいものを選ぶと先に進んで、会場に到着する。もし、間違った名前を選んでしまうと謎のアカウントのところに飛ばされてしまう。元には戻れるのでご安心を。
正しい選択ができたご褒美に、アスレチックのゲームで遊べる。ブロックを飛んで渡ってゴールにいる友達に会いに行こう。アスレチックが苦手な子でも、歩いたりトロッコに乗ってゴールにたどりつける。無事ゴールにたどり着き友達に話しかけると、家に戻ってこのアクティビティは終了だ。
個人情報を守るには、どうする?
家に戻ると、続いて別のお誘いが届く。今度は新作の迷路ゲームに挑戦である。個人情報の保護について信頼できる大人から「絶対に漏らしてはいけない」とアドバイスされる。
迷路ゲームの会場の前には自称「プロゲーマー」が待っている。彼によれば、なんとゲームモードをクリエイティブにして自由に移動できる機能を追加できるという。とても魅力的だが、ユーザー名とパスワードを教えろという。いかにも怪しい。
ここで誘惑に負けずに先に進むと、迷路ゲームを遊べるご褒美が待っている。ちなみにこの迷路、筆者には少々むずかしく、たどりつけずにお助け⽤の感圧版から脱出した。試しに、ちびっこにもやってもらったら、マッハで攻略されてしまったので、実はそれほど難しくなかったのかもしれない。
ところで、プロゲーマーからの誘惑に負けて、うっかりパスワードを教えてしまうと、どうなるのか。あっという間にセキュリティ担当のところに⾶ばされて叱られたあと、漏洩した個⼈情報を集めさせられる、という罰ゲームが待っている。こういう失敗も学びだが、実際に個人情報が洩れたら集めるだけでは済まされない。マイクラというゲームの中だからこそ安全に疑似体験ができるわけだ。
ネットのお買い物でトラブルが起きたら、どうする?
このように2つのゲームを通してネット上の注意事項を体験したあとは、これもトラブルが少なくないネット上のお買い物について体験していく。
迷路からもどると、パソコンにメッセージが届いた様子。内容を見ると「商品の手配に問題が」と書かれている。これは、いわゆるフィッシングの体験だ。あわててログイン情報をわたすのではなく、この情報が本当なのかどうか、お店にコンタクトをとって確認しようという筋書きだ。
もう1つは、おやつのカボチャパイを正しいお店から買ってくる体験。マイクラ世界でのお買い物体験である。正しいお店を選んで、パイを頼もう。焼ける間に材料を集めてくるとオマケのクッキーをくれるようだ。もちろん、正しい選択肢以外にも仕掛けが用意されているので、ここから先は、ぜひご自身で遊んでみて欲しい。
お使いから帰ってカボチャパイを大人に渡すと、今日の体験のふりかえりになり、注文していたアーマーセット一式が届いたようだ。玄関から外に出て、チェストを開けてもらっておこう。
その先には紙のようなものが浮かんでいる。ワールドを終了した証書である。これももらっておこう。
繰り返し伝えられるメッセージは、「クリックする前に少し止まって考える」
身近にあるゲームやお買い物といったネット利用の体験で、インターネット上のルールを学んでいくこの「ホームスイート ホーム?」のワールド。冒頭からずっと語られているメッセージは「クリックする前に少し止まって考える」というものだ。
ちょうど、小学生向けの交通安全教室で教わる「横断歩道をわたるときは、いったん待って安全を確認して渡りましょう」と似たようなものだろう。ネットの世界を安全な場所にするために、このメッセージを原則の1つとしてとらえておくのがよさそうだ。
本稿執筆時点では英語のレッスンプランのみが公開されているが、ワールド内のテキストはひととおり日本語になっているので、親子でネットについて学ぶ体験教室や学校の授業でもうまく利用できるのではないかと思う。特に、判断を間違えてしまった場合の体験は、ゲームならではである。その部分も掘り下げて、対話のきっかけにするとよいだろう。
ところで冒頭でも紹介したように、この「ホームスイート ホーム?」は、「デジタル市民権」というカテゴリーにある。このカテゴリーには、そのものずばりの「デジタル市民権」という名前のワールドも用意されているので、このあたり気になる方はぜひ一通り眺めて見ることをおすすめする。
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