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教育版マイクラがついにスマホ対応!カメラ機能やマルチプレイがアップデート

~ウクライナ再現や、デジタルセーフティが学べるワールドなどコンテンツも増加

「新作&注目作品」がどんどん増える教育版マインクラフト

今まで学校や教育機関でのみ利用可能だった教育版マインクラフトは、昨年の5月にリリースされた「The Camps and Clubs Update」より、一般の企業や非営利団体でも年間ライセンスの購入が可能になった。

これにより、プログラミング教室や学習塾、課外活動でも利用できるようになり、筆者もその直後から遊びはじめた。ちょうど、その頃に教育版マインクラフトの紹介記事「教育版マインクラフトで遊んでみた!充実の教育向けワールドからマルチプレイまで一挙解説」を執筆したが、気がつくと早や一年が経過。その間に教育版マインクラフトのバージョンアップもあり、補足が必要な点が目についてきた。

というわけで、本稿ではこの1年でアップデートされた教育版マインクラフトの最新情報をまとめてお伝えしよう。

教育現場で使えるワールドがどんどん追加。「新作&注目作品」をチェック

教育版マインクラフトの特徴の1つは、レッスンプランとワールドテンプレートが豊富に用意されていることだ。いったいどのくらいのペースで更新されているのか、さっぱり見当はつかないが、この1年の増え方と充実ぶりには改めて驚くばかり。以前に比べると、まったく様変わりしているのがわかる。

「新作&注目作品」にあるワールドテンプレートは、どんどん入れ替わるので定期的なチェックがおすすめ

しかも、新たに追加されているワールドがいずれも現代の社会情勢や多様な価値観、未来に必要とされるスキルの育成などを反映していて興味深い。

たとえば、ウクライナの首都「キーウ」を再現したワールド「キーウ:都市クラフト ガイドブック」や、ネット利用について学べるワールド「サイバーセーフ:ホームスイートホーム?」、また気候問題やSDGsの学習に使えるワールド「未来の気候:移動手段」や、プログラミングが学べる代表格のワールド「Hour of Code」も最新の2021(タイムクラフト)がリリースされている。これだけでも実に幅広いワールドが増えているのがわかるが、これはまだまだ全体の一部である。

「キーウ:都市クラフト ガイドブック」のワールド
「サイバーセーフ:ホームスイートホーム?」のワールド
「未来の気候:移動手段」のワールド
「Hour of Code 2021(タイムクラフト)」のワールド

ネットワークをまたがるマルチプレイは大幅改善

マインクラフトと言えばマルチプレイ。教育版マインクラフトでは、4つのアイコンの組合せの参加コード、またはリンク情報を共有することで、ネットごしのマルチプレイはできるようになっているが、昨年の紹介記事では、ネットワーク越しのマルチプレイに挑戦したものの、”どうにかつながりました”という内容で終わってしまった(結構苦労した記憶がある)。

この点、昨年11月のアップデート及びその前後からシステムが改善されたようだ。筆者の手元では100%とは断定できないのだが、ほぼつながる状況だ。ただし、ホスト及び参加する側それぞれのネットワークにも依存するようで、より安定した運用を目指すなら、クラウド上のサービスをホストに利用するのがよさそうだ。

教育版マインクラフトの場合、Java版/統合版と異なりサーバー専用のプログラムは提供されていない。逆に言えば、普通に教育版マインクラフトをクラウド上にある環境で実行できればよい。例えば、Microsoft Azure上のVM(仮想マシン)にWindows10をインストールし、教育版マインクラフトのアプリを普通に入れておけば、後はサインインしてホストを開始すればよい。同じように一部のWindowsサーバー系VPSを利用することでも可能である。

VPSにリモートデスクトップで接続し、ホストを開始する。ネットごしでもマルチプレイに参加できるようになった

Azureの方は、必要に応じてVMのメモリや仮想CPUの数を簡単に変更できるメリットはあるのだが、VMを停止し忘れると使ってもいないのに課金が続くという哀しい目にあうこともあるので、月額定額プランのVPSなら、継続運用はしやすい。実際、筆者の手元では両方を用途に応じて使いわけている。

この方法で、日本中から実際に参加してもらうことが可能になっている。同じ組織のアカウントを全員が所有していることが前提だが、参加コードの組合せをお知らせするだけですむので運営する側も楽である。各地の子どもたちと、関心をもつ大人たちが同じワールドに集まって、自由に建築したり、サバイバルで遊んでいる様子はなんとも微笑ましく、大人が見ていても気づきが多い。

マルチプレイで日本各地から集まった子ども達が作った建築物の一例

ちなみに、教育版マインクラフトにあるeスポーツのワールド「クリエイティブクラッシュ:働きバチ」を用いて、筆者が行なっている通称”はちみつカップ”も大勢でやるとすぐに終わってしまう。ご参加いただいているご家庭からも、楽しい、面白いと好評をいただいており、子どもと大人が一緒になって楽しめるマインクラフトにさまざまな可能性を感じている。

噂のはちみつカップも大勢でやると楽しい。既に大人は全く歯が立ちません

マルチプレイが盛りあがる「写真」が充実

教育版のカメラは人気アイテムの1つ。設置して集合写真をとることもできる

このようなマルチプレイをより楽しいものにする機能が、昨年11月のGOATアップデートで提供された「写真」だ。従来からあった「カメラ」は教育版ならではの人気アイテムで、子どもたちにカメラを配るとマルチプレイ中の集合写真、記念撮影がはじまる。撮った写真は「ポートフォリオ」という別アイテムに自動的に溜まっていく仕組み。この撮った写真を1つずつ取り出してアイテムとして扱えるようになったのだ。

ポートフォリオからとりだして写真をアイテムにできる

これで写真をプレイヤー同士で交換しあったり、特別よく撮れた写真をチェストに集めておくこともできる。なにより、額縁に写真を飾ることができるようになり、結果、マイクラ世界の中で写真の展示会を行なうことが可能になったのだ。

壁に額縁を並べ、それぞれに写真を入れることも可能。展覧会を開催することも可能

またこれに伴い、「本と羽ペン」にも写真を取り込む機能が追加されている。自分だけの写真集や写真入りの冒険記録が作れるようになった。

本と羽ペンを使って自分だけの冒険記をつくることもできる

冒頭で紹介した最新のワールドの1つ「キーウ」は、この写真の機能を使って探索するワールドだ。中に入ると、チェストにカメラ、ポートフォリオ、本と羽ペンが用意されており、自由に写真を撮影し、まとめていくレッスンプランになっている。子どもたちがウクライナのことを知るきっかけとして授業でも活用できそうだ。ぜひ、マルチプレイで遊んでみて欲しい。

キーウのワールドでは、チェストに必要なアイテムがそろっておりマルチプレイで撮影大会ができる

教育関係者向けの自習コース、システム変更と内容の拡充も

このように、教育版マインクラフトは機能や新しいレッスンプランが充実しつつあるが、それに加えて、教育関係者向けの自習コースも様変わりしている。

大きな変更点として、いままで「Microsoft Education Center(MEC)」で提供されていたコースやコンテンツが、マイクロソフトの学習サイト「Microsoft Learn」に移行・統合された。従来のEducation Centerで獲得済みのバッジ等は、以前のサインイン情報を元にMicrosoft Learn側にプロファイルを作成することで引き継ぐことができる。

MECからMicrosoft Learnへの引き継ぎが必要になる

以前も紹介した「Certified Teacher Academy」もMicrosoft Learn側で受講できるようになり、しかも待望の日本語版がリリースされている。他の一部のコースでも、英語から機械翻訳された日本語で受けられるようになっている。

待望の日本語コースが追加された。既に筆者の周りでも修了された方がちらほら

自習コースに加えて、この8月から開催予定なのが、教育関係者向けのオンライントレーニングである。全部で6種類のコホート(Cohort)が予定されており、上記の「Certified Teacher Academy」からはじまり「Certified Trainer」や、「ブロックコーディング」や「Pythonコーディング」、「eスポーツ」や最近加わった「Minecraft Student Ambassadoor(MSA) 」などが学べるようになっている。

この8月から順次開催予定、6つのオンライントレーニングが予定されており、既に受付が開始されている。詳しくはこちら

興味深いのは、「Minecraft Student Ambassadoor(MSA) 」のトレーニングだ。これは、マインクラフトの指導者不足を解消しつつ、なおかつ児童生徒たちのリーダーシップや主体的な活動を促すもので、世界中のマイクラ好きな教育関係者が期待を持って見守っているプログラムだ。

教育版マインクラフトを学校内外で活用しようとして困るのが、指導者役がいないこと。これは日本だけでなく世界的に同じ状況らしく、大人の指導者を養成しようとしても難しい現状がある。実際、筆者も血のにじむような努力(遊んでいるだけともいわれるが)の結果、随分コミュニケーションはとれるようになったけれど、マイクラの達人にはほど遠い。

ならば、マイクラが得意な子どもたちにサポートをやってもらい、大人は組織の運営やファシリテートに集中するのがいいのではないか、というのが、このプログラムの発端だという。

早期開催されたコホートの様子。ファシリテーターのみなさんのオーラがすごい

筆者も機会があって、この3月のコホートに参加し、新たに「MSA Sponsor」というバッジをいただいた。この資格はなんと、日本においてマイクラ達人の子どもたちをアンバサダーとして任命することができるらしい。

この資格が取れるコース「Minecraft Student Ambassador プログラム」もMicrosoft Learnの中で学習できるので、積極的に利用を考えている大人の皆さんに是非受けて頂きたい。学校内外で大人と子どもが協力して活動できる体制を作っていけたら素晴らしいではないか。

次期バージョン1.18はただいまベータテスト中、スマホにも対応へ

さて、本稿執筆中に、次のバージョンである1.18についてニュースが1つ飛び込んできた。既にJava/統合版では、1.19(いわゆるワイルドアップデート)がリリースされているが、教育版はその1つ前のバージョンをベースに開発が行なわれる。つまり、1.18が次にリリースされる予定のバージョンだ。この1.18のベータテストが現在まさに進行中で、新しいベータ版1.18.30が公開されたのだ。

モバイル対応のアナウンス

このベータ版では、ついに教育版マインクラフトがスマホに対応したのだ。iOS/Android向けのスマホでベータ版をインストールすればすぐに試すことが可能である。加えて、Androidのタブレットにも対応しており、稼働するプラットフォームの幅が一気に広がった。

インストールの方法、注意事項については教育版マインクラフトの公式ページにある「Download Minecraft: Education Edition Beta」にまとめられているので参考にして欲しい。なお、ベータ版といっても全ての機能を試すには、通常版と同様に組織アカウントが必要なので注意して欲しい。

ベータ版は、AndroidはGoogle Playストアから、iOS向けはTestFlightアプリからインストールできる
さっそく、手元のAndroidタブレット(写真左)とiPhone7(写真右)とに入れてみた

新しいバージョンによるさらなる広がり、それを支える世界的な教育関係者のコミュニティ、更新され追加されていく豊富なレッスンプラン、教育版マインクラフトは年間サブスクリプションでこれら全てが利用できるのだ。学校の授業、内外のクラブ活動、子どもたちの居場所づくり、地域のスクール事業など、教育分野に携わる多くの関係者の方に是非手に取っていただき、子どもたちの多様な学びを実現してほしい。お互いに知見を共有していけることを熱望してやまない。

新妻正夫

ICT教育ジャーナリスト/ICTコンサルタント。2021年よりGlobal Minecraft Mentor、Microsoft Esports Leader。2012年よりCoderDojoひばりヶ丘を主宰、STEAM分野で豊富な経験を持つ。コワーキング協同組合理事、ペライチ公式埼玉県代表サポーター他、多方面で活動中。 教育版マインクラフトを活用した緩(ゆる)イースポーツ「はちみつカップ」の普及が最近のマイブーム。