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教育版マインクラフト「Mobile,Multiplayer & More」Updateがリリース

ワールドの拡張やMakeCodeなども含む大型アップデート

8月9日付けでリリースされた教育版マインクラフト1.18.32

教育版マインクラフトの最新版1.18.32が、この8月9日に正式リリース。対応する全プラットフォームに対して提供がはじまった。

既に行なわれていたベータテストの紹介記事でも取り上げたように、今回のアップデートの目玉の1つが、iPhone 、AndroidスマホとAndroidタブレットへの対応だ。また、既にJava/統合版で提供されている「崖と洞窟アップデートパート2」の内容も含まれている。マルチプレイのさらなる改善や教育版ならでの機能追加も含む昨年11月以来の大型アップデートの提供である。本稿では、リリース済みの最新バージョンを実際に試しながら注目ポイントを紹介していく。

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  • (随時更新中)
  • 対応プラットフォームが一気に拡大

    教育版マインクラフトは、従来から、Windows、Mac、iPad、Chromebookに対応していたが、今回のアップデートで、さらにiPhone、Androidスマホ、Androidタブレットに正式に対応し、既にストアアプリ経由で提供もはじまっている。広くモバイルデバイスに対応したことで、教育版のユーザーの裾野が一気に広がったことになる。

    スマートフォンにインストールしてはじめて起動したときに表示されるのが見慣れないセーフエリア(表示領域)あわせ。四隅の枠がちょうどよければ特に調整する必要はない。筆者の手持ちのスマホではいずれも調整は必要が無かった。液晶サイズの種類も多いスマホの表示に配慮されたものだろう。

    Pixel 6aのホーム画面
    セーフエリアの設定

    崖と洞窟アップデートパート2の提供

    今回の1.18というバージョンは、Java/統合版では既に昨年リリースされていた「崖と洞窟アップデートのパート2」に相当する。目につく違いの1つは、ワールドの高さが広がったこと。従来のワールドの高さは、0から255の範囲(建築可能なエリア)。これが、下は-64から、上が320まで広がった。

    たとえば、フラットなワールドを新規作成して座標を表示してみると、高さが-60になっているのがわかる。岩盤などの厚さが4ブロックあるので、地面としては-60からなのだ。マイナスの高さのワールドが出現したわけである。試しに、従来の地面の高さ「4」を前提にした自動建築のプログラムをそのまま実行すると、ここまで空中に浮かぶ不思議な建物ができてしまった。

    高さがマイナスのワールド。プログラムも直さないと空飛ぶ建築ができてしまう

    高さのほか、より複雑な地形の生成、既存のワールドとの関係など、崖と洞窟アップデート第2弾については、Minecraft公式サイトに日本語の詳しい解説が掲載されているので参考にして欲しい。

    マルチプレイがさらに改善へ、スマホのモバイル通信でも可能

    目に見えにくい部分ではあるが、マルチプレイについても改良されている。マルチプレイの仕組みがより接続しやすい方法に見直され、ネットワークのトラフィックも軽減されたようだ。実際スマホのモバイル通信で移動しながらマルチプレイの参加を試みたところ、なんともあっさりつながってしまった。筆者の周りでも「急につながるようになった」という喜びの声がちらほら聞こえている。

    また、今までホストを開始するときに表示されていた「ポート」「IPアドレス」がなくなり、代わりに「接続情報」という一連の数字が表示されるようになった。通常の参加コードまたはリンク情報で接続できない場合には、この「接続情報」を入力することで接続することになる。

    ホスト開始からは、IPとポートが消え、代わりに接続情報が表示される

    また、これに伴いURLの通信許可対象が一部変更になっている。「 https://*.minecraft-services.net/ 」が新たに追加され、従来あった「https://minecraftprod.rtep.msgamestudios.com」が不要になった。詳しくは最新情報を確認して欲しい。

    NPCのスキンが大量追加

    教育版ならではのアイテムの1つ、NPC(Non Players Character)にも変更が加えられた。基本的な機能は共通だが、あまりバリエーションがなかったNPC用のスキンが大量に追加されたのである。子どもたちは自分のスキンを変えたりするのが好きなので、NPCのスキン選びも楽しくなりそうだ。

    (NPCの追加スキンの一部となかなか可愛いロボット風なスキン)

    MakeCodeもあわせてバージョンアップ、チュートリアルの操作もしやすく

    教育版本体の更新にあわせて、プログラミングのエディタの1つ「MakeCode」もバージョンアップされている。これにより未対応だったモブの追加や、新しい機能のブロックも追加されている。

    また、はじめてMakeCodeに触れる人にも親しみやすいチュートリアルが追加された。ステップバイステップでプログラミングを学べるようになったのもポイント。最初のチュートリアルは「にわとり大増殖」である。

    チュートリアル「にわとり大増殖」の画面
    MakeCodeのチュートリアルもやりやすくなった

    このチュートリアルを含むMakeCodeは、もちろんスマホでも利用することができ、より手軽にプログラミングを体験することが可能になった。ただ、メモリや処理能力の関係か、大きめなプログラムを実行すると筆者のスマホではうまく動作しないこともあった。このあたりはこれからの課題であろう。

    スマホの場合のレイアウト、モバイルでも利用できるので場所を選ばずに体験できる

    また、支援アプリの1つ「Classroomモード」も、アップデートが必要だ。本稿執筆時点では、Windows用に最新版(1.82)がリリースされている。Mac版も時間の問題であろう。

    アップデート直後は思わぬ影響もアプリのアップデート時にはワールドとコードのバックアップを忘れずに

    つらつらと今回の大型アップデートについて紹介してきたが、この手の更新には、思わぬ影響もつきもの。例えば、Hour of Codeシリーズなど、提供されている一部のワールドの動作に影響が出る可能性があると公式ブログに掲載されている。こうしたワールドはテンプレートの改修が行なわれるはずなので情報に注意したいところ。

    そもそものアプリ自体の更新にも注意が必要だ。自動更新されず、手動で古い環境をアンインストールしてからインストールする場合は、自分が作ったワールドが消去される可能性がある。事前にエクスポートでバックアップをとってから作業しよう。

    「作成した世界」からワールドの一覧を開き、ワールドをクリックすると表示されるメニューから「管理」−「エクスポート」を選んで必要な物をエクスポートしておく。普段からやっておけば安心だ。

    手動で更新する場合はワールドのエクスポートを忘れずに。普段から習慣づけておくのがよさそうだ)

    加えてMakeCodeで作ったプログラムがあれば、事前に必要なプログラム(Project)を共有し、後からインポートできるようにしておこう。

    MakeCodeでプログラムを共有しておけば、あとからインポートしなおせる

    いずれにしても今回のリリースは久しぶりの大型アップデート。学校の先生たちや教育者の方々には可能な限り試していただき、今後のマイナーバージョンアップの情報なども注視して頂ければと思う。マルチプレイを円滑に行なうには、全端末が同じバージョンでなければならないため、既に導入されている場合は更新の計画も視野に入れて頂きたい。

    そういえば、筆者が大好きなエリトラも今回のバージョンアップで操作が容易になった。血のにじむような特訓で身につけた地上からの飛翔が誰でも簡単にできるようになったようである。ああ、あの努力はいったいなんだったのか。これが技術の進歩というものなのであろうか。

    新妻正夫

    ICT教育ジャーナリスト/ICTコンサルタント。2021年よりGlobal Minecraft Mentor、Microsoft Esports Leader。2012年よりCoderDojoひばりヶ丘を主宰、STEAM分野で豊富な経験を持つ。コワーキング協同組合理事、ペライチ公式埼玉県代表サポーター他、多方面で活動中。 教育版マインクラフトを活用した緩(ゆる)イースポーツ「はちみつカップ」の普及が最近のマイブーム。