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教育版マイクラ体験会運用のノウハウ公開! アカウント発行からワールドの設定まで
2022年11月8日 12:03
「教育版マインクラフトを学校や塾で使ってみたい」「子どもたちとマルチプレイをやってみたい」という教育関係者が増えている。
そこで、去る9月15日に「こどもとIT」編集部主催でオンラインセミナー「学校・クラブ・塾ではじめてみよう!教育版マインクラフトの運営ノウハウを伝授」が開催された。プロマインクラフターのタツナミシュウイチ氏に加え、筆者も自身が主宰する教育版マインクラフトを使った活動「MCClub」についてお話しさせてもらたった。
そのセミナーの中で、マルチプレイのワールドを用意し希望者の方々に体験してもらったのだが、裏側でどのような準備や操作をしていたのか改めて紹介しよう。教育版マインクラフトのマルチプレイをやってみたいという方は多いが、アカウントの発行やワールドの設定などをどうすればいいか、わからないことも多い。
これを読めば、教育版マインクラフトのイベントやワークショップなどの開催にお役立てできるだろう。
教育版マインクラフトのマルチプレイ体験も実施
セミナーでは、希望者40名にアカウントを発行し、ワールドを2種類用意して、どちらか好きな方に参加してもらった。ちなみに、教育版の1つのワールドへの同時参加可能数の上限は40名となっているが、多すぎるのも大変なため、今回は1つのワールドが20名になるようにした。
2つのワールドを何にするかは、アンケートを用意して検討した結果、初心者向けにお散歩コース的な「キーウ:クラフト観光ガイド」、やや上級者向けに「クリエイティブクラッシュ:働きバチ」を選んだ。
当日は、体験を希望されていた方には、事前に発行したアカウントで教育版マインクラフトにサインインしてもらうよう準備してもらった。さらにワールドへの参加コードは、セミナーの中でお伝えし、ワールドへ入ってきてもらうという流れを取った。
40名分の体験アカウントを用意する
では、このマルチプレイ体験の裏側について深掘りしていきたい。今回のセミナーでは、筆者が普段から使っているMCClub用の環境を利用した。そのため、いくつか追加作業を行なうだけで準備は済む。
まず、やらなければいけないのは40名分の体験用アカウントの発行である。これは、セミナーの1週間ほど前に用意しておいた。
教育版マインクラフトのややわかりにくい点は、企業/学校といった組織向けのMicrosoft 365と密接に関わっている点である。特にアカウントの発行は、Microsoft 365 管理ポータルを経由して行なうのが一般的で、ユーザー1人ずつを登録する方法は比較的単純だ。姓名、表示名、アカウントを入れていけばよい。
ただし、教育版マインクラフト特有の事情として、「表示名」に日本語を使うと、マイクラ世界ではネームタグが正常に表示されない現象が起きる。管理ポータル上ではきちんと見えているし、他のサービスでは問題ないので管理者が気がつかずによかれと思ってやってしまうケースがあるので注意だ。
ちなみに、40名を1件ずつ登録するのも可能ではあるが、正直面倒くさい。このような場合のために、あらかじめ用意したCSVファイルから一括登録する仕組みも用意されている。今回はこの方法を使った。
具体的には、管理ポータルの「アクティブユーザー」から「複数のユーザーを登録」を選ぶ。まず5人分を登録する表形式の画面が開く。そこまで多くない場合は、ここから登録するのもありだ。
今回は、ファイルを用意して登録したいので、この画面にある「ユーザー情報を含むCSVファイルをアップロードする」をチェックする。画面が変化し、「必須のヘッダーを含む空白のCSVファイルをダウンロードします」が表示されるので、これをクリックして元になるテンプレートを取得しておく。
このCSVをExcelで開くと、ヘッダーだけ入った空のファイルが開かれる。最低限必要なのは、「ユーザー名」、「姓」、「名」、「表示名」の4つ。
ここに、40人分の必要な情報を埋めていく。今回はハンズオン向けのアカウントなので、姓が「kit」、名前を連番にし、表示名は「kit01」〜「kit40」のように「姓」+「名」の形式をとった。さらにこれにアカウント用のドメイン「@hetakura.com」をつけてユーザー名に入れれば、登録用のデータは準備完了。
ファイルの参照から、用意したファイルを選び、まず読み込ませる。ここで、重複しているアカウントがないかなど、全登録データに問題がないか検査が行なわれる。問題が無ければ、次に割り当てるライセンスの選択に進む。ここでは、体験用のアカウントなので、ライセンスを割り当てないを選んで進む。
これで、ユーザー登録は完了しているのだが、この段階ではユーザー1人ずつに異なるランダムな初期パスワードが自動的に振られ、最初にサインインしたときにパスワード変更に進むように設定されている。これ自体は、一般的なユーザー登録として妥当な処理だが、ハンズオン参加者向けのゲスト用アカウントとしては、少々ややこしい。
できるだけスムーズに全員にサインインしてもらいたいので、パスワードはわかりやすくて、かつ強度は十分強いパスワードに一括して変更し、ユーザーはパスワード変更はしなくてもいいように変えておきたいところ。
この操作も管理ポータル内で簡単に行なうことができる。発行した40名のユーザーを、まず全員選択する。今回はkit01~kit40のように並んでいるので、まず最初のkit01を選んで、最後のkit40をShiftキーを押しながら選択することで簡単に行なうことができる。
この状態で3点メニューから「パスワードリセット」を選び、設定したいパスワードを入力し、「最初のサインインでパスワードを変更する」のチェックをはずせばよい。
あとは、登録済みのアカウントの一覧とパスワードを編集部にお知らせすれば、ゲストアカウントの用意は完了だ。
2つのマルチプレイのワールドを用意する
続いては、ワールドをホストする環境の用意だ。
1つの会場に集まっての対面のハンズオンであれば、性能のいいPC1台をホスト用として用意すれば済む。しかし、今回はリモート前提で、しかも日本全国どこから参加してくるかもわからない状態なので、クラウド上に用意することにした。
筆者の手元では、MCClub用にMicrosoft Azure上に常に2台の仮想マシン(VM:Virtual Machine)を用意している。どちらにもWindows10と教育版マインクラフトがインストール済みである。各VMをAzureの管理ポータルから起動し、それぞれにリモートデスクトップで接続し、あとは手元のコンピューターと同様のワールドを選んでホストを開始する。
続いて、ホスト開始後に参加コードのスクリーンショットを用意し、当日のスライドに貼り付けておけば作業は完了である。
こう書くと、実際やること自体はとても単純な作業である。あらかじめVMさえ用意しておけば1台あたり5分もかからない。
また、AzureのVMは、作ったあとでもCPU数、メモリなどを簡単に変更できるため、運用規模(主に接続される人数をベースに判断する)に応じた対応が可能になっている。
今回は、最大人数が予測できなかったため、できるだけ贅沢な構成にあらかじめ変更しておいた。変更の作業は簡単なのだが、どれを選ぶかは悩ましい。筆者の手元では、「Fシリーズ v2」の中からメモリとCPU数の組み合わせで選ぶようにしている。単なる経験則なので、もっといい選択肢があるかもしれない。
ここまで準備していても、参加されている場所のネットワークによってはうまく接続できないケースもあったようで、こればかりは主催者側の対応が難しい。しかし、別のモバイル回線経由で接続はできたと伺っている。どうも学校内のネットワークからだったようで、いろいろと癖があるようだ。
また、VMは起動したままだと従量課金でどんどん費用が発生するため、利用が終わったら忘れずに停止しよう。自動シャットダウンのスケジュール設定をしておくと安心だ。
今回のセミナーでは、45分の登壇時間のうちマルチプレイ体験の時間を20分ほど用意したのだが、ログインのトラブルや操作に慣れる時間のロスが発生してしまった。十分にマイクラの良さを体験する時間が取れなかったのは反省点である。
これから初心者向けのハンズオンをやろうという方には、30分~1時間ほどの余裕をもった時間設定をおすすめしたい。また、筆者が主宰するMCClubでも体験イベントなど、リモートで定期的にやっているので興味がある方は参加してみてほしい。
教育版マイクラは、まだまだ黎明期。誰もがパイオニアになれる
セミナーの後半は、経験豊富なプロマインクラフターのタツナミ氏による授業の実践例と事前に参加者から頂いた質問に回答していく相談コーナー。タツナミ氏がばっさりと切っていくのが面白くて、筆者も気がつくと聞く側になってしまったが、多くの方が興味関心はあるものの、事例やノウハウの少なさに戸惑っていることがよく分かった。
しかし、これは無理もない話だと思う。教育版マインクラフトを学校以外の組織で使えるようになってかわずか1年ちょっと。しかも、結構な頻度でバージョンアップはするし、レッスンプランとワールドはどんどん増えていく。筆者が言うのもなんだが、なかなか扱う方は大変である。
ただ、良くも悪くもこれは黎明期によく起きる現象で、手探りでも前に進んでいけばいいし、その中での知見を共有していくのが良いと思う。タツナミ氏もセミナー中に言っていたが、誰もがパイオニアになれるチャンスと捉えればよいのだ。
今回は、ハンズオンとMCClubの普段はお見せできない裏側の部分について紹介してきた。このMCClubというコミュニティがどのようなもので、どんな活動をしているかという「表の面」については別途ご紹介させていただく予定だ。
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