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マイクラで算数の世界を楽しもう!測定・分数・グラフなど楽しいワールドが充実
――教育版マインクラフト ワールド紹介その⑥
2022年8月5日 12:13
教育版マインクラフトは、化学や英語、コンピューター科学など、さまざまな教科を楽しく学べるワールドが豊富に用意されている。これまでも紹介してきたが、今回は、算数のワールドに注目しよう。
数あるカテゴリーの中でも、ひときわ多くのコンテンツが提供されているのが、この算数に関するワールドだ。どのようなワールドがそろっているのだろうか。そして、マイクラで学ぶ算数とはどのようなものなのか⾒ていこう。
※教育版マインクラフトの画面上では「数学」と翻訳されているが、⽇本では小学校の「算数」にあたる内容のため、本⽂の表記は「算数」と表記する。
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小学3年生~5年生レベルのワールドが豊富
まずは、いつものように教育版マインクラフトを起動し、「ライブラリ―を表示」から「主題キット」を選び、「数学」をのぞいてみよう。
目につくのは、「コモンコア、グレード3」、「コモンコア、グレード4」、「コモンコア、グレード5」という3つの並び。コモンコア(Common Core)とは米国の学習基準であり、算数のワールドはこの基準に準拠して作られているようだ。公式サイトには、どのワールドが、どの学習基準を満たすのか、カリキュラムの一覧も公開されており、PDFファイルでダウンロードできるようになっている(英語のみ)。
グレード3は日本で言えば小学3年生、おなじくグレード4、5は、小学4年生、5年生を指す。ただし、日本と米国では算数のカリキュラムも学習内容も異なるだろうから、グレードは参考程度にとどめておくのがよいだろう。
さらに、「コモンコア、グレード3」をのぞいてみると、あるわあるわ、ワールドの数々。本稿執筆時点で20個以上もある。掛け算、割り算、概数、図形といった日本でもお馴染みの単語が並んでいる。
日本の教科書に提供されている指導案を見ると、小学3年生あたりからぐっと学習内容が増えていくようで、子どもたちの算数に対する苦手意識も出てくるのだろうか。これだけワールドが多く用意されているのを見ると、アメリカでも算数を学ぶ楽しさを味わわせるために、悩んでいる先生方も多いのではないだろうかと思った。
今回は「コモンコア、グレード3」の中から、筆者が見つけた面白そうなワールドを3つ紹介していこう。筆者が調べた限りでは、今回のワールドはいずれも翻訳されている。
単位を作ってワールドの地形を測る「地形の測定」
まず紹介したいのは、「地形の測定」というワールドだ。さっそく、いつものように世界を生成して入ってみよう。
ワールドに入ると、先生役のNPC(※)が迎えてくれる。まずは話を聞こう。
※Non Player Characterの略。プレイヤーが操作できないキャラクターのことで、ワールド内を案内したり、問題を出題したりする。
ただし、NPCに話しかけても、これだけでは何をするかよくわからないので、「レッスンリンク」をクリックして、公式サイトの「地形の測定」のページにジャンプしよう。
すると、学習の⽬的や活動内容の説明が表示される。本稿執筆時点では英語のみではあるが、ブラウザの自動翻訳を使えば十分理解できる内容だ。またレッスンプランや授業で使えるスライド、ワークシートも用意されており、併せて参照すればこのワールドで何を学ぶかの大筋は理解できるだろう。ほかにも事前学習として使えるYouTube動画も用意されている。
このワールドの学習活動は、大きく2つ。まずは、ブロックの数で「単位」を決める。たとえば、下記の画像は指導用スライドの1つを翻訳したものだが、6つのブロックを並べて1つの単位とし、「Roku(ロク)」という名前をつけている。ブロックを並べる数は何個でも構わない。要するに、ブロックを並べて単位を決め、自分の物差しを作るのだ。
続いて、自分で作った単位を巨大物差しにして、ワールドの中のいろいろな場所にブロックを並べて測定していく。山の高さ、渓谷の幅など、測定したい場所を選び、自分の決めた単位でブロックを積み上げていく。
こうして、それぞれが好きな地形を測ったら、最後に発表するという流れになる。同じ場所でも、子どもによって単位の作り方が違うので、さまざまな測定方法が見られ面白そうだ。
日本では、「長さ」について小学1年から小学3年にかけて段階的に学んでおり、3年生で大きな長さを巻き尺で測ったり、地形を測ること(大きな単位)などについて理解を深めるようである。そうした学習を楽しくするツールとして、このワールドをやってみるのも面白いのではないだろうか。
ゲームの結果をエクセルで棒グラフ化
次に紹介するのは、「サバイバルオリンピックの棒グラフ」というワールド。マインクラフトの活動とエクセルを組み合わせ、棒グラフに親しむレッスンプランになっている。ほとんどの小学校では紙と鉛筆と定規で棒グラフを描いていると思うが、せっかくGIGAスクール端末があるのだから、この機会に触れてみて欲しい。
このワールドは、マルチプレイ前提のデザインになっており、サバイバルモードで「釣り」「マイニング」「ナイトファイト」という3種類のミニゲームをグループでプレイし、メンバーの結果を集計してエクセルに入力し、グラフ化して分析する流れ。ゲームといっても比較的平和なので、まずはやってみほしい。
ゲームは、ホストのワールドに参加後、進行係(進行係はゲームには参加できない)が、それぞれのゲームの開始スイッチを押すと、テレポートされて必要な道具がセットされる。各グループでゲームごとに進行係、タイマー係を決め、交代しながらチャレンジするといいだろう。
試しに、一番平和そうなな「釣り」をやってみた。テレポート先は池が広がっており、アイテムとしてボートと釣り竿が渡される。開始と同時にタイマー係が決まった時間をセットし(レッスンプランでは5分となっている)、この時間内に頑張って魚を釣りまくる。筆者も、これも仕事のうちと一生懸命釣ってみたのだが、あいにくのボウズであった。授業で発表させらたら、さぞや哀しかっただろう。
この後、グループで各自が釣った魚の種類とその数を集計し、エクセルにまとめて入力すると棒グラフが表示される。これを見ながら、誰が一番釣ったのか、あと何匹釣ればよかったのかなどを分析していく。
残るゲームは、子どもたちが大好きな「マイニング(採掘)」と「ナイトファイト(モンスターとの戦い)」。魚釣りだけでも楽しそうなのに、子どもたちがゲームに夢中になって戻ってこないのではないだろうか? そんな心配をされる先生のために、ちゃんと強制呼び戻しボタンも完備されているので、安心していただきたい。
マイクラならではのブロックを使った分数の学習
最後に紹介するのは、非常にシンプルにまとめられたワールド「図形から図形へ」。ワールドの名前から図形について学ぶものかと思ったが、開いてみたところ大きな勘違いであった。確かに色違いのブロックをを利用しているのだが、学習のテーマは「分数」なのである。
このワールドはクイズが4つ用意されている。1つの小さな図形と別の大きな図形を見比べ、その割合を分数で考える。スレート(黒板)の上にあるボタンをタップして、回答するようになっている。正解すると、次のクイズに進める方式だ。クイズや解答は全て日本語訳されているので、子どもたちに自由に取り組ませてもよいだろう。
4つの問題を解いていくと、自由にブロックで図形を作れる場所に進む。ここで、今までの例を参考に図形を並べ、分数として答えを出す問題を自分たちで考える。
レッスンプランでは、事前に決めておいた相棒となるクラスメイトとお互いに図形を評価しあうことになっている。また、このワールドではカメラとポートフォリオも支給されるので、うまく使えば、クラス全体で見せ合うこともできるだろう。
ちなみに、このワールドには「裏面」的な場所があり、筆者はうっかり入り込んで途方にくれてしまった。さっさと解いて時間を持て余してしまった子に、探させてみるといいかもしれない。
充実したレッスンプランをもとに、まずは先生が試すところから
今回は算数の「コモンコア、グレード3」から、子どもたちが楽しく算数に触れられるワールドを中心に紹介してみた。どう授業の中で活用するかは先生方によると思うが、学習教材として、いろいろな学びが可能であるように思える。まずは、先生たち自身が集まって実際に試してみるのも良いだろう。教育版マインクラフトの公式サイトには、レッスンプランがまとまっているので、それを見ながらどんな学習ができるかを話し合うのも面白そうだ。
この「数学」カテゴリーは、同じ「コモンコア、グレード3」の中にも、まだまだたくさんのワールドが用意されている。さらにグレード4、グレード5のほか、それ以外のワールドも多い。記事執筆時点では小学生向けであったが、グレード6以上の中学・高校「数学」のワールドの追加も期待したい。