ニュース

GIGA端末の活用、自治体ごとの格差が広がる MM総研の調査

児童生徒に生成AIの「活用を推奨」とした自治体は7%

GIGAスクール端末を毎日利用している自治体の割合

 MM総研は、2024年1月に実施した「小中学校における GIGA スクール端末の利活用動向調査」の結果を発表した。ICT活用が進んだ自治体がある一方で、あまり活用されない自治体に大きな動きがなく「格差広がる」と分析している。

 この調査は2023年11月から2024年1月まで、全国1741のすべての自治体(教育委員会)に電話アンケートを実施して1101団体から回答を得たもの。それによれば、前回調査から1年がたち、GIGAスクール端末の利用も増えて定着が進んでいるものの、活用が進んでいない自治体もあり、自治体間の温度差があるとしてる。

毎日活用は77%、1/4の自治体が活用用途数が少なく

 GIGAスクール端末を毎日利用している自治体の割合については77%、端末の持ち帰りを毎日実施は24%、授業以外で毎日利用が40%となり、いずれも前回よりも比率が高まっている。ただし、授業で・授業以外で毎日利用については、前々回から前回まで大きく比率を上げたため、今回はどちらも微増にとどまっている。

 一方、GIGAスクール端末の授業での平均用途数でみれば、前回が3.8であったのに対して今回は4.9と増加、用途数別の集計でも、前回は7つ以上の用途で利用している自治体は13%だったが今回は44%と大幅増加、活用の幅が広がっていることが分かった。

GIGAスクール端末の授業での平均用途数と、用途別利用率

 用途についても、7つの項目とその他を合わせた8項目について利用を聞いているが、その他以外は増えており、前回多かった「調べ学習」や「学習支援ソフトやアプリの利用」以外が大きく増え、70%超えの用途が5つになるなど、大きく利用が拡大している。

 また、「教員と児童生徒のやりとり」は68%まで利用が進んでいる。複数回答で具体的な用途を聞くと、課題の配付・回収・採点、アンケート機能を利用した健康確認、Web会議機能で登校できない児童生徒の対応が上位を占めた。教員と児童生徒のやりとりをしている自治体の8割でこうした利用をしているという。

 「児童生徒同士のやりとり」は55%で利用されているが、共同編集機能を利用したグループワーク、アウトプットの共有をしてコメントし合う、クラスメイトのアウトプットをみて自分の考えを深める、といった用途が9割を占めている。一方で児童生徒同士のチャット機能は2割でしか利用していなかった。

授業における用途数の自治体構成比の推移

 ただし、利用が広がっている自治体がある一方で、端末の活用に消極的な自治体もある。「1~2つの用途で利用」は前回29%だったものが24%へと5ポイント減少したものの、依然として約4分の1の自治体で1~2の用途でしか使っていないということや、なかには用途数を減らしている自治体もあった。

 一方、端末の活用度を上げるための最も大きな課題は「教員のICT スキル」と50%が答え、前回調査から11ポイント減となったものの、最大の課題であることは変わっていない。そこで、その要因を聞くと「習得のための時間が足りていない」が64%、「デジタルに抵抗感がある教員が多い/メリットを感じない」が57%と、この2つが多かった。

教員のICTスキルが不足している要因

生成AIの活用は文科省のガイドラインが出て、はじまったばかり

 さらに今回は生成AIについても尋ねている。文部科学省のガイドラインが出て、限定的な利用が推奨されるなか、児童生徒に対しては「活用を推奨」が7%と少なく「特に推奨や制限はしていない」が74%、「活用を制限」にいたっては19%となった。

生成AI活用について推進・制限の状況

 7%は少ない数値ではあるが、ガイドライン公表前の2023年5月の調査で、児童生徒・教員のいずれに対しても推奨する自治体は1%未満だったことに比べると、ガイドライン発表によって「活用をしてみようという自治体が出てきた」と分析している。

 一方、教員についての生成AIは「活用を推奨」が14%と少なく、「特に推奨や制限はしていない」が79%、「活用を制限」は8%となり、前述の授業における用途数の回答別に集計したところ、7つ以上の用途で利用している自治体では、教員の生成AIは「活用を推奨」が22%となった。この点については「授業でのデジタル活用を進めた結果、自治体が教育ではデジタルが有用であるとポジティブにとらえている可能性を示唆する結果」と分析している。

授業活用用途数別の、教員の生成AIについて活用・制限の状況