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PISA2022、ICT活用状況調査の結果を公開
教科の授業と探究型学習のICT活用頻度に課題
2023年12月11日 06:30
OECDは12月5日、義務教育終了段階(日本では高校1年生)の生徒を対象とした「国際学習到達度調査(PISA2022)」の結果を公開した。
日本は、OECD37か国のうち、数学的リテラシーと科学的リテラシーの両方で1位、読解力2位という結果になった。また、81の国・地域を対象とした全参加国における比較でも、数学的リテラシー5位、科学リテラシー2位、読解力3位となり、世界でもトップレベルの結果となった。前回2018年調査からOECDの平均得点は低下した一方で、日本は3分野すべてにおいて前回調査より平均得点が上昇している。
この要因について、国立教育政策研究所では、新型コロナウイルス感染症のため休校期間が他国に比べて短かったことが影響した可能性があるほか、学習指導要領を踏まえた授業改善が進んだこと、学校におけるICT環境整備が進み、生徒が学校でのICT機器の使用に慣れたことなどを挙げている。
また、PISA2022では生徒を対象としたICT活用調査も同時に実施されており、その結果も公開された。同調査の実施期間は、日本の高等学校における1人1台端末環境は整備途上であったことから、結果には留意する必要があるが、新たな課題点も明らかになった。
①学校での利用状況
「学校でのICTリソースの利用しやすさ」については、「学校には、インターネットに接続できるデジタル機器が十分にある」「学校には、生徒全員のために十分なデジタル・リソースがある」と答えた生徒が多く、GIGAスクール構想よる端末整備が影響した結果だといえる。一方で、「学校のインターネットは十分速い」という項目については、「その通りでない」「まったくその通りでない」と答えた生徒が多く、ネットワークに課題がある結果となった。
授業中にICT機器を使うことで気が散ることがどれくらいあるか、という質問に対しては、「いつもそうだ」「たいていそうだ」と回答した生徒は少なく、全参加国の中で日本が一番低い結果となった。
各教科の授業でのICT利用頻度については、OECD諸国と比較すると低く、特に国語、数学、理科での活用が低いことがわかった。数学では53.5%の生徒が、国語では48.5%の生徒が授業でICTを利用することが「まったく、又はほとんどない」と答えている。
様々な学習活動に活用できるICTであるが、「ICTを用いた探究型の教育の頻度」指標はOECD平均を下回っていることがわかった。高校生自身が情報を集める、集めた情報を記録する、分析する、報告するといった場面でデジタル・リソースを使う頻度は他国に比べて低い。
②生徒のICTに関する能力や興味・関心
生徒の多くは、インターネット上の情報について、「情報を検索するときは様々な情報源を比較する」「情報をSNSで共有する前に、その情報が正しいかどうか確認する」という項目に対して当てはまると回答しており、情報モラルへの意識はOECD諸国と比較して高い結果となった。
日本の高校生におけるコンピュータやプログラミングへの興味・関心についてはOECDの平均並みであるが、「ウェブページやブログを制作し、更新し、維持すること」や「ソフトウェアのエラーの原因を特定すること」「プログラムを作成すること」など、コンピュータやプログラミングでできることを質問した項目ではOECD諸国と比較すると低い結果となった。
③平日の余暇活動におけるICT利用
高校生が平日1日当たりに占めるICT利用については、SNSやデジタルゲームに3時間以上費やす生徒の割合はOECD平均より少ない結果となった。また、日本もOECD平均も、SNSやデジタルゲームに費やす時間が一定時間を超えると、3分野の得点は低下する傾向があることがわかった。
今回のPISA2022は、81か国・地域から約69万人が参加。日本からは、全国の高等学校、中等教育学校後期課程、高等専門学校1年生のうち、国際的な規定に基づき抽出された183校(学科)、約6,000人が参加した。