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GIGA端末の性能は9割が備えていると評価するも教員のICTスキルが課題、MM総研の調査から

児童生徒用端末はGIGAスクール構想実現に十分な性能を満たしているか(自治体数=1135)出典:MM総研

 MM総研は、GIGAスクール構想に向けたICT環境の利用状況を調査、結果の一部を発表した。GIGAスクール端末の性能は9割が備えていると評価し、1年あまりで1人1台端末の利用頻度は大幅に増えたもの、利用拡大の課題は教員のICTスキルとその向上にあるとした。

 この調査は2022年12月に全国の教育委員会と国公立小中学校に勤務する教員を対象に行ったもの。教育委員会(自治体)は主に電話による聞き取り調査で1144件の回答を得た、教員についてはWebアンケートで回答数は1200件。

 教育委員会にGIGAスクールにおける児童・生徒用の端末の性能が十分かどうかについて聞いた質問では、「十分備えている」と答えたところが38%、「備えている」が54%となった。その一方で「あまり備えていない」が8%となった。ただし、備えていないと回答したなかでは、端末そのものではなく、ペンや画面などのインターフェース、インターネット接続性など周辺機器や利用体験全般に対する課題を指摘しているという。

 教育委員会に聞いた授業における端末の利用頻度は「毎日」が75%となり、「週に2~3回程度」が23%となった。「週1回未満」は1%で、把握できないや利用していないを含んだ「その他」が1%となった。これについては、前年の2021年10月の調査では「毎日」が26%であったことから49ポイントの大幅増加、「その他」が29%から1%まで大幅減少するなど利用に消極的なところがほとんどなくなったとしている。

授業における1人1台端末の利用頻度比較(自治体数による比較)出典:MM総研

 利用用途数は、2021年10月の調査では平均1.7だったものが今回は3.7まで増加。「学習支援ソフトやアプリの利用」、「調べ学習」、「考えをまとめて発表」が前回調査と同様に上位となったほか、「教員と児童生徒のやりとり」「児童生徒同士のやりとり」といったコラボレーションの機能がそれぞれ大きく増え、教員とのやりとりは今回44%と前回から31ポイント増加した。

GIGAスクール端末の平均用途数(左)と用途別の利用頻度(右)出典:MM総研

 一方、教員に聞いた項目では、端末の利用度合いとコラボレーション機能の利用率のクロス集計結果を指摘、端末を利用できている教員ほどコラボレーション機能を利用割合の高い結果となった。特に「ほとんど利用できていない教員」と「十分に利用できている教員」ではコラボレーション機能の利用率に2倍以上の開きがある。

授業における端末利用度合いとコラボレーション機能の利用割合の関係 出典:MM総研

 教育委員会と教員のそれぞれに聞いた、利用拡大に対する主な課題では、「教員のICTスキル」がどちらも60%台と一致するも、2位以下は一致せずに認識の違いが生じているほか、スキル向上の対応策についても教育委員会の95%が「対応策をとれている」と答えたものの教員は40%にとどまるなど、大きく捉え方に違いが出ている。

GIGAスクール環境の利用拡大に対する主な課題 出典:MM総研
「教員のICTスキル」の向上に向けた対応策の有無 出典:MM総研

 この調査を受けて、調査を担当したMM総研 取締役研究部長の中村成希氏は、GIGAスクール構想の基盤確立に向けて前進していると統括する一方で、教員のICTツールを効果的に使う方法の習熟の必要性と、政府が学校自らICTを活用した授業スタイルへ更新できる支援策を検討することが重要と、指摘している。