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公立高の1人1台端末、保護者負担が増加する兆し MM総研調査

高校生用1人1台端末について、公費による端末更新のめどが立つ都道府県は8つにとどまる(出典:MM総研)

ICT市場調査コンサルティングのMM総研は、公立高校の学習者用1人1台端末に関する調査の結果をまとめた。

47都道府県の教育委員会に対して、現在の高校生用1人1台端末の整備状況および次回更新の計画について、電話での聞き取り調査を実施し、すべての都道府県から回答を得た(部分回答を含む)。調査期間は、2025年6月5日から17日。

その結果、現時点で47都道府県のうち31の自治体が公費を活用しているが、今後も公費による端末更新のめどが立つ都道府県は8つにとどまることがわかった。

また、BYOD(Bring Your Own Device)やBYAD(Bring Your Assigned Device)を採用しているのは27都道府県であり、そのうちBYOD・BYADだけの16都道府県ではMDM整備率が13%と低いことが判明している。

MM総研取締役研究部長の中村成希氏は「高校無償化の議論を踏まえ、政府は、高校生を持つ家庭の負担削減や教育機会格差の是正を進めるものの、端末費用は公費負担から保護者負担に切り替える都道府県が多数を占め、せっかく高校が無償化になっても家計負担が増大することが懸念される」と総括。

加えて、「サイバーセキュリティリスクが高まるなかで、高校も将来のデータ活用を見据えて統制の取れるIT環境を整備する視点も欠かせない」として、「いずれの背景からも、今が端末更新にかかる公費支援を検討する良い機会ではないか」とコメントしている。

詳細は以下の通り。

・端末整備で更新のめどが立つ都道府県は8にとどまる
現時点で、公立高校生の端末調達費用に公費を活用する都道府県は31と、全体の66%を占めている。そのうち、20の都道府県が公費のみで調達した端末を活用し、11都道府県は公費と保護者負担を併用している状況だ。

しかし、今後の端末更新時に公費財源のめどがたつ都道府県は31のうち8つにとどまる。現在公費のみで整備している20自治体に絞ると、今後も公費のみでとする都道府県はさらに少なく5つとなった。

・都道府県ごとに保護者負担の購入方法などの違い
保護者負担により端末を整備する都道府県に運用方法を確認した結果、IT運用の観点ではBYOD(Bring Your Own Device)とBYAD(Bring Your Assigned Device)と呼ばれる2つの方式が混在していることがわかった。

BYODは、保護者が私物端末を生徒の学習用端末として自由な手段で準備することを指す。またBYADは、教育委員会や学校が指定もしくは推奨した端末を準備することを指す。BYODはBYADと比べ端末の選定が利用者の自由となるメリットがあるが、デメリットとして組織的なIT運用の難易度が高くなる点が挙げられる。

今回の調査ではBYODが20都道府県、ITガバナンスを利かせるために採用されることが多いBYAD方式を利用する都道府県は7にとどまることがわかった。

保護者負担の分類(出典:MM総研)

・BYXDのみの都道府県はMDM利用が13%
BYXD(BYODとBYADの総称)などのIT運用について、端末の運用を集中管理するMDM(モバイル・デバイス・マネジメント)ツールの導入率に差が見られた。

公費のみ、公費+BYX、BYXDのみの3分類としたとき、MDMの導入率はそれぞれ95%、75%、13%と顕著な差となった。公立高校で端末の保護者負担を進めるほどITガバナンスがとりにくくなることになる。

これについてMM総研では、円滑な授業でのIT活用に加え、2025年からオンラインが前提となった経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)や大学入学共通テストで利用が始まったCBT(Computer Based Testing)の利用に懸念が残るとしている。

MDMの活用状況(出典:MM総研)