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次世代校務支援システムの導入率わずか1割、リソース不足も課題 MM総研調べ
2025年4月24日 06:30
MM総研は2025年2~3月にかけて全国の教育委員会を対象に電話アンケートを実施し、文部科学省が推進する「校務DX」の取り組み状況をまとめた。
校務DXでは、次世代校務支援システムの整備、校務系・学習系ネットワークの統合、ダッシュボードによる情報の可視化を中核に据えている。これにより教員の働き方を柔軟にし、自治体ごとの業務フローの標準化を目指す。
同調査の結果、次世代校務支援システムの導入率は全体の約10%にとどまった(図1)。都道府県で温度差があり、文部科学省が推進する「次世代の校務デジタル化推進実証事業」に参加した山口県、秋田県、岩手県などでは導入率が高いが、全国的には検討が進んでいない自治体(市区町村)が約6割と多数を占めた。特に人口規模の小さい自治体では、人的・財政的リソース不足が導入の障壁になっている。
また、導入を検討している自治体は、2025年度から2029年度にかけて、既存システムの更新時期にあわせて分散的に導入が進む見込みだ。
都道府県別では、導入率0%の都道府県が47のうち10あり、最も導入率の高い都道府県では67%だった(図2)。
次世代校務支援システムの導入に際しては、文部科学省が推奨する都道府県単位での共同調達にも温度差がある。「具体的な動きがある」が28%、「実施予定と聞いている/案内があった」が26%と、半数以上の自治体が何らかの動きを見せている。一方で、45%の自治体が「何も知らされていない」と回答した。共同調達に賛成する自治体は71%に上り、小規模自治体ほど賛成の割合が高かった(図3)。
システム導入形態では、従来のオンプレミス型からクラウド型(SaaS型)への移行が進んでいる。SaaS型を検討・採用する自治体は28%に達し、インフラ環境の検討が進んでいる自治体ではSaaS型が主流となりつつある(図4)。
ネットワーク構成では、校務系と学習系を統合する方針を持つ自治体が44%に達した。2023年4月時点では10%だったことから、この2年で大幅に増加したことになる。一方で、ネットワーク分離を維持する方針の自治体も約45%あり、引き続き文部科学省による推進やベンダーによる支援が求められる(図5)。
ベンダー別では、校務支援システムでEDUCOMが33%、スズキ教育ソフトが27%、内田洋行が8%と続いた。学習eポータルではNTTコミュニケーションズが45%、内田洋行が36%だった。端末管理や汎用クラウドではGoogleとMicrosoftの利用率が高い(図6)。
校務分野における生成AIの利用率は17%に達し、着実に広がってきている。利用するツールとしてはGoogleが46%、OpenAIが42%、Microsoftが34%となった。一方で、国内ベンダーの名前は挙がらなかった(図7)。
「校務DXに向けたICT 整備動向調査」(2025年3月時点)の概要
調査対象:全国の市区町村1,741の教育委員会(1,738委員会)
回答件数:1,320件 ※一部回答含む
調査方法:電話による聞き取り、一部e-mailやFAXによる調査票の送付・回収を併用
調査期間:2025年2~3月