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小学生が挑戦!生成AIを活用したプログラミング、コニカミノルタが社会見学ツアーを実施
2025年2月26日 06:30
子供たちが生成AIを活用すればどのような学習が可能になるのか。今はまだ学校現場も試行錯誤の段階であり、取り組みも一部に留まっている。特に小学生に関しては、年齢的に利用可能な生成AIの選択肢が限られているため、検証も難しいのが状況だ。
こうした中で、小学生から利用できる対話型生成AI tomoLinks「チャッともシンク」を手掛けるコニカミノルタ ジャパン株式会社は、地域の小学生に対して生成AIを活用したプログラミング体験ができる社会見学ツアーを実施した。小学生たちはどのような学習をしたのか、レポートする。
コニカミノルタの開発拠点で社会見学ツアー
この日、コニカミノルタの高槻サイトにやってきたのは、大阪府箕面市立西小学校の5年生142名。同社と箕面市は包括連携協定を結んでおり、今回の社会見学ツアーはその一環として実施された。箕面市はコニカミノルタが提供する学校教育向けソリューション「tomoLinks」を導入しており、長年、両者はさまざまな実証実験などに取り組んできた。
今回の見学ツアーの目的は、児童たちが最新の画像技術やAI技術に触れること。今の子供たちは日常生活の中でさまざまなテクノロジーを利用しているが、それを開発している人々の存在は見えにくく、当たり前のように享受していることが多い。この見学ツアーでは、同社の社員との交流を通じて、技術開発の現場や最新技術をより身近に感じられる機会が提供された。
コニカミノルタの開発拠点である高槻サイトでは、見学ツアーをサポートする社員たちが子供たちを出迎えた。コニカミノルタとしても、これほど多くの小学生が高槻サイトを訪れるのは初めてのことだったという。開会式では、社員一人ひとりが歓迎の言葉を述べ、この活動が子供たちの学びや未来に役立つことを願っていると温かいメッセージが送られた。
社会見学ツアーでは、2つのプログラムが用意された。一つは生成AIを活用したプログラミング体験、もう一つは高槻サイトの展示エリアをめぐるコニカミノルタの製品体験。子供たちはお弁当持参で、終日テクノロジーに触れる貴重な機会となった。
フルーツを落として、大きな果物に進化するゲームづくり
プログラミング体験ワークでは、グループに分かれてゲームづくりに挑戦した。お題は、子供たちにも親しみのある「スイカゲーム」をモチーフにしたもの。同じ種類の果物を落として合体すると大きな果物に変化するというゲームだ。
こんなむずかしいゲームを小学生が作れるのか?と思ってしまいがちだが、進行役のコニカミノルタ 松末育美氏は「今日はAIと対話をしながらプログラムをつくります。プログラミングがむずかしいと思っている人もAIが教えてくれるので、ぜひ挑戦してみてください」と言葉をかけた。
子供たちが使用するAIは、コニカミノルタが「tomoLinks」で提供する小学生も利用可能な教育向け生成AI「チャッともシンク」。今回は、この日のために特別にチューニングされたものを使用する。
まずは、果物の画像作成から。イラスト担当の児童たちは、「さくらんぼのイラストを作って」「黄色に変更して」など依頼文を入力して画像を生成。一瞬でできあがった画像をみて「おおー!」「すごーい」と声があがった。子供たちをサポートする社員が「“七色に変更して”と試してみると面白いよ」という具合に、子供たちの発想が広がるように声がけをした。操作に慣れてしまうとAIにどんどん依頼文を投げかけ、ブドウ、オレンジ、スイカなど、さまざまな果物を作り上げた。
プログラミングを担当する子供たちは、ゲームの基盤づくりからスタート。生成AIを活用したプログラミングといっても、AIがコードを生成するだけではゲームは完成しない。子供たちは、松末氏の説明や手元の資料を参考にしながら、HTMLやJavaScriptのプログラムを、あらかじめ用意されたゲームの動作に必要な基盤にコピー&ペーストで貼り付けた。
この基盤となるプログラムは、スタートボタンを押すと1秒ごとにフルーツが落ちてくるように設計されている。あとは、子供たちがゲームの流れや工夫を考え、AIを活用してプログラムを生成し、それを動作が確認できる基盤に組み込んでゲームを仕上げていく。どうすれば面白いゲームができあがるのか、子供たちは互いに助け合ったり、わからない部分を質問したりしながら進めていった。
生成AIになんと聞けばいい?子供たちにとってむずかしいのは言語化
ゲームの基盤が整ったら、いよいよここからが本番。生成AIを活用してプログラミングに挑戦する。
子供たちの中には、最初からいきなり「すいかゲームのプログラムを出して」とストレートに生成AIに指示を出す子もいた。が、当然、それだけではAIは理解できない。
そこで、用意されたヒント通りに「落ちてくるフルーツをうまく配置して、同じもの同士を合わせていくゲームを作りたいです」と入力すると、AIはプログラムを生成した。どのようなゲームを作りたいのか、その特徴を理解して言語化できなければAIは求めるプログラムを出してくれないのだ。
その後も、フルーツのサイズ変更やスコアを追加したり、キーを押すとゲームが始まったりとそれぞれの工夫を生成AIに依頼文を投げかけてプログラムを作成してもらい、ゲームに動きを追加した。
思い通りに動かない場面も多く、「落としたフルーツが画面の下に溜まらずに流れてしまった!」「どうやったら直せるんだろう?」とまた生成AIに質問をして試行錯誤する姿が見られた。一方で、「画面上部から落下するフルーツの動きをスムーズにし、左右の移動操作をより直感的にしたい」と生成AIに細かな指示を出す子もいた。
多くの子供たちが苦戦していたのは、同じフルーツが合体したら大きなフルーツに変化するという部分。「落ちてきたフルーツが重ならないようにして。合体したら合体したところに合体したフルーツを置いて」と指示する子もいれば、「いちごといちごがぶつかったら、ぶどうになるようにして」と、より具体的な変化を言葉にする子もいた。
どんな動きを実現したいのか、それを明確にイメージして構造的に捉えて言語化することがAIを使いこなすために重要だが、小学5年生にはなかなか難しい…… 。
プログラミングの途中で子供たちに話を聞いた。まきのくんは、「AIもすごいと思ったけど、AIを使わなくてもプログラミングできる人がすごいと思いました。ゲーム以外でも、機械にAIをいれてみたら、もっと発達していくんじゃないかと思いました」と語ってくれた。
ふるかわくんは、「一番苦労したのは、フルーツが合体したときに進化するところ。どう表現したらいいのかわからなかった。自分の言ったことを聞いてくれて、自分のやりたいことを教えてくれるからAIは便利だなと思ったけど、自分の指示がうまくできなくて、AIはむずかしいと思いました」と感想を話してくれた。
子供たちはAIの持つ凄さや可能性を実感する一方で、そこだけにとらわれず、人間が持つスキルや関わり方も同時に感じ取っていたのが印象的だった。
ロボットやセンシング、最新テクノロジーの製品体験
続いて、コニカミノルタの製品体験では、子供たちが高槻サイトの展示エリアで最新テクノロジーを活用した製品を見学した。コニカミノルタが強みとする技術は、光学・画像処理技術やセンシング技術、AIやIoTを活用したデータ分析などで、社員から説明を聞いたり、体験したりしながら最先端技術がどのように使われているのかを学んだ。
子供たちにとってカメラは身近な存在であるものの、それが人の表情や骨格を認識できるとは想像していなかったようだ。「LOVOTは人の表情や動きを読み取ることができる」という説明に驚きの表情も見られ、画像認識技術を活用したデータ分析によってさまざまな特性を把握できることも新たな発見となった。さらに、開発担当者から直接話を聞くことで、こうした技術を身近に感じられる貴重な時間となった。
AIとの対話は、人と人とのコミュニケーションにも通じる
プログラミング体験学習、コニカミノルタ製品体験が終わった後は、グループごとにゲームの出来栄えを発表した。中には最後まで完成しなかったグループもあったが、全体的に子供たちはとても楽しめた様子で、失敗しても試行錯誤できたという感想に満足感を伺えた。
今回の社会見学ツアーについて箕面市立西小学校 岩永泰典教諭は、プログラミングは苦手、英語だからできないという子も多い中、生成AIを使うことでコードを書かなくてもゲームづくりを体験できたことが良い経験だったと話す。「生成AIにどのように指示を出せば、自分の思い通りの回答が得られるのか。言葉にするのはむずかしいですが、これはAIだけに限らず、人と人とのコミュニケーションでも同じです。伝えることが大事、伝わることはもっと大事、そのためにどうすればいいか。そのような話を今後子供たちにしていきたいと思います」と語ってくれた。
コニカミノルタの松末氏は、子供たちから「難しかったけど楽しかった」「もっと自分でゲームを作ってみたい」という前向きな感想が寄せられたことに今回実施した社会見学の意義を感じているという。「生成AIを活用することで、今まで難しそうだからと諦めていたことも挑戦できる可能性が広がります。子供たちには諦めるのではなく、新しいことに興味をもち、挑戦する姿勢を育んでほしいと考えています。コニカミノルタとしても学ぶことを諦めない心と、一人ひとりに寄り添った学びの提供を大切にしていきたいです」と語ってくれた。
子供たちにとって、社会見学は学校生活の中でも特別なイベント。その中で、最先端の企業で最新テクノロジーに触れることができたのは、とても貴重な経験だっただろう。こうした活動を通して、社会の見え方が広がり、テクノロジーへのマインドや興味も深まっていくことに期待したい。子供たちの好奇心をくすぐる、ワクワクできた一日だった。