【連載】5分で読める 親子のためのネットの常識

生成AIって何?ウェブ検索と何が違うの?

スマホは使うけどネットやデジタルの知識には自信がない。でも、今の子供たちはネットやパソコンを使うのが当たり前だから、もう少し分かるようになりたい。そんな保護者の方に向けて、AI時代に知っておきたいネットの常識や役立つ情報を紹介します。

これまでGoogleなどの検索サイトを使って情報を選び取るのに必要なことを解説してきましたが、「今は生成AIに何でも聞けばいいんじゃない?」と思った方もいるかもしれません。確かにChatGPTのようなチャットボット型の生成AIは、会話形式で問いかけをするとすぐに整った文章で返答してきます。でも、ChatGPTの通常の会話はウェブ検索とはそもそも全く違う存在で、知らないことを調べるのには向いていません。

生成AIは人と同じような思考をしているわけではない

ChatGPTというのは、次の図のように、普通の言葉で問いかけるだけで、それにふさわしい返答をする生成AIです。会話は自然で、ただの雑談のようなやりとりもできますし、食材を挙げてレシピを提案してもらうことなんてこともできます。

無料でも使えるChatGPT。どんな問いかけをしても整った文章で返答する
カジュアルな口調でレシピを聞くとカジュアルな表現で返答した

ChatGPTは流暢な会話文を生成できるので、人と同じように物事を理解して論理的に考えているのだろうと感じてしまうかもしれませんが、そうではありません。ChatGPTを動かすAIモデルは、膨大なデータから、言葉がほかの言葉との関係でどのように出現する傾向があるのかということを学習してできていて、返答するときは言葉のつながりを予測して、次に来る確率が高い言葉をつないで文章を生成しています。

出力される文章が人の言葉と見分けがつかないほど自然だったとしても、生成AIが文章を生成するプロセスは、人の思考のプロセスとは違うのです。

生成AIの出す文章は発信者がいない!

私たちがウェブ検索で情報を探すときは、発信者を確認するのが大切なポイントだと前回の記事まででお伝えしました。例えば、動物園の開園時間なら、個人ブログの動物園に行ったエピソードを読むよりも、動物園が発信するウェブサイトで見る方が確実だと判断できます。

でも、ChatGPTが生成する文章には、その肝心の発信者がいないのです。生成された文章の内容的な根拠がどこにあるのかわからないため、信頼できるかどうか判断のしようがありません。

そもそも現状の生成AIが出力する情報の内容は間違っていることもあり、ChatGPTの入力エリア近くには、「ChatGPT の回答は必ずしも正しいとは限りません。重要な情報は確認するようにしてください。」という注意書きがあります。実際、「東京でイルカを見られる施設」について聞いてみると、流暢な説明の中にけっこうな間違いが含まれています。

図中に見えている部分だけでもかなり間違った情報が含まれている。例えばアクアパーク品川と品川水族館は別の施設だし、サンシャイン水族館にイルカはいない。東京湾観光船にイルカを見るためのツアーはない

普段料理をしている人がChatGPTでレシピのヒントを得るくらいなら、仮におかしなところがあっても経験則で修正できるので特に困らないでしょう。でも、何か正確な情報を知りたいときは、ChatGPTで出力した内容が正しいかどうかを結局ウェブ検索で調べ直すことになるので、それなら最初からウェブ検索をした方が早いということになります。

ですから、「生成AIになんでも聞けばいい」なんていうことはなく、何か調べごとをするのにChatGPTは向かないのです。

返答の内容の精度はAIモデルが更新されるたびに上がっていますし、いずれどこかのタイミングで誰もが認めるほど正しい情報を出力するようになるのかもしれませんが、少なくとも現時点では、「引用元はChatGPTです」と言えるような情報源としての社会的信頼性はありません。

ウェブ検索の違いを意識して生成AIが得意なことに使おう

ChatGPTは利用できる年齢を13歳以上としていますし、入力した情報がAIの学習に使われないようにするためには設定が必要です。また、個人情報を入力しないように気を付ける必要があります。利用には注意点が多いので、家庭ではまず保護者の皆さんが自分で使い慣れてから、一緒に使うようにしましょう。

その際には、ウェブ検索とChatGPTのような生成AIの出力する情報の違いを伝えて、安易に重要な調べごとに使わないよう声をかけてください。「情報の発信者を確認する」という原則を思い出しましょう。

なお、生成AIは、長文の要約や、指定した条件で文章を作ったりすること、翻訳などは非常に得意ですし、作業効率をアップするために便利な使い道がたくさんあります。特徴に合った使い方をすればとても有効なツールです。

ウェブ検索×生成AIの機能は引用元ウェブサイトをチェック

なお、チャットボット型の生成AIにも、ウェブ検索と生成AIがかけ合わされた機能があり、これは調べごとに使えます。ChatGPTでも、アカウントを作ってログインすれば無料で利用できる機能です。語りかけたことについて、ウェブ上から必要な情報を集めてまとめて示してくれます。引用元も明示されるので、引用元のウェブサイトに移動して情報を確認することができます。

ログイン後の画面で「検索する」という小さなボタンをオンにすると、ウェブ検索モードで返答が生成される
引用元のウェブサイトが明示され、リンク先にも飛びやすい

これは、「代わりに検索して情報を仮にまとめておきましたよ……」という、いわば親切すぎるウェブ検索サポートのようなもの。利用するときは通常のウェブ検索サイトの利用の際と同様に、引用元のウェブサイトに移動して情報を確認するようにしましょう。このように検索機能と組み合わせている生成AIはほかにもあるので、次回、紹介します。

狩野さやか

教育ICTライターとして、学校や家庭のICT活用について各種媒体で多くの記事を執筆している。プログラミング教育を含む情報教育や特別支援の領域に詳しく、デジタルリテラシーに関する講座等も行う。株式会社Studio947の「知りたい!プログラミングツール図鑑」、「ICT toolbox」の運営責任者。著書に「デジタル世界の歩き方」(ほるぷ出版)他。