【連載】5分で読める 親子のためのネットの常識
情報の正しさはどう判断するの?「ファクトチェック」って何?
2025年1月21日 06:30
インターネット上のウェブサイトの情報を見るときは、必ず誰が発信している情報かを見つけることが大切で、SNS上の投稿に触れるときや対面で人と話すときでも同様だということを前回解説しました。では、もう一歩踏み込んで、情報の正しさはどのように判断したら良いのでしょうか。情報を選び取るための視点を整理してみましょう。
視点1:信用していい発信者かどうかで判断
発信者を確認できたらまず、「その発信者は信頼できるかどうか」という視点で考えます。例えば、個人のブログと大学の研究者の記事を比べたら、大学の研究者の記事の方が信頼できそうです。また、大手の新聞社や出版社などが運営して発信している記事は、記者が書いた上で多くの人のチェックを経て世に出ているので間違いが起きにくいはずです。前回の記事を参考に普段から親子で話題にしてみてください。
なお、発信者がわかっても、それがどのような団体や個人なのかわからないという場合が多いので、発信者について検索して背景を調べることを習慣にしましょう。発信者と共にウェブサイトが作られた目的を想像することも、信頼性の判断材料になります。
視点2:内容が妥当かどうかを判断
次に、内容についても気を付けて見てみましょう。何かを調べるときは、検索結果にリストされたウェブページの中から少なくとも3〜4箇所は違うウェブページを選んで見比べてみてください。ほかと比べて明らかに違う説明をしていないか、よりわかりやすく根拠がはっきりした説明をしているのはどれか……という視点でチェックしてみましょう。また、記事に日付が記されていることもあるので、情報の新しさにも注目してください。
もともと知らないことを調べているわけですから、見つけた情報が正しいかどうかを自分の知識で判断することはできません。内容の正しさを絶対的に判定するのではなく、相対的に「確かそう」だと判断するために、さっと複数の情報源を見比べる習慣を付けましょう。
なお、ウェブ上には、広告収入目当てのためだけに作られたウェブサイトや、アクセス数を稼ぐために記事が量産されているウェブサイトがかなりあります。そうしたウェブサイトの記事は質が低いことも多く、残念なことですが、どこか大手のウェブサイトやWikipediaの文章をコピーしたのではないかと思えるケースもあります。もし、「これはコピーっぽいな……」と気付いたら、情報源にはしないでおきましょう。
視点3:偽情報や誤情報を見分ける「ファクトチェック」
最後に視点1、視点2と少し切り分けて捉えたいのが、偽情報や誤情報を見分けるための「ファクトチェック」という視点です。「ファクトチェック」というのは、世の中に広がる偽情報、誤情報に対抗するために、その情報が事実であるかどうかを検証する世界的な取り組みです。国際ファクトチェックネットワーク(International Fact-Checking Network/IFCN)では、「非党派性と公正性」「情報源の基準と透明性」「資金源と組織の透明性」「検証方法の基準と透明性」「オープンで誠実な訂正方針」という5つの原則を掲げていて、検証結果と共に検証の根拠も開示することになっています。日本にも専門的にファクトチェックに取り組む団体があり、検証結果を随時公開しています。
例えば、IFCNの認証を受けている日本ファクトチェックセンター(一般社団法人セーファーインターネット協会運営)は、ファクトチェック結果を公開しているのに加えて、ファクトチェックの基準や考え方、手法についても丁寧に解説しています。また、認定NPO法人 ファクトチェック・イニシアティブが公開している「ファクトチェックナビ」では、複数のファクトチェック団体による検証結果を「ファクトチェック一覧」として公開しています。
SNSなどで広がる「最初に誰が言い出したかよくわからない断定的な情報」や「〜らしい」という情報は、視点1で見れば信用できない情報ですが、それでも広がりやすく惑わされやすいのが現実です。どのような話題がすでにファクトチェックの対象になって検証されているか、ぜひ公開されている情報を定期的にチェックしてみてください。
子供たちには、まず視点1と視点2を身に付けて欲しいと思いますし、小学生の調べ学習などは視点1と視点2の原則で対応できるはずです。視点3は、どちらかというと、SNSや動画投稿サイトなど発信者がはっきりしない情報に大量に触れる場面で役立ちます。子供たちには、「ファクトチェック」という手法があって、その検証結果は誰でも見られると教えることから始めると良いでしょう。
以上のように、情報の正しさを判断するというのは、簡単なことではありません。そもそも自分だけの力で判断できると思わずに、相対的に判断する軸や基準を複数持ち、「常に点検した方がいいんだな」という感覚でいることが大切です。