ニュース
高校教員の66%が年内学力入試に否定的、授業への影響を懸念する声が多数
代々木ゼミナール教育情報センター「大学入試の未来を考える全国意識調査」第1回(2025年)
2025年11月19日 12:03
学校法人高宮学園 代々木ゼミナールの教育情報センターは、2025年9月から10月にかけて、全国の高校教員370名を対象に「年内学力入試」に関する意識調査を実施し、その結果を11月18日に発表した。
調査では、各教科・科目に関わるテストを主たる評価方法とした総合型選抜と学校推薦型選抜を年内学力入試に定義している。
「年内学力入試の拡大が好ましいか」を確認する設問では、「当てはまらない」「あまり当てはまらない」と回答した人の割合が66.2%となった一方、「当てはまる」と回答した人の割合は4.6%と、少数にとどまった。
設置者別では、公立高校において否定的な傾向が顕著に表れた。私立では「当てはまる」「やや当てはまる」の割合が4割を超え、肯定的にとらえている層が一定数いることが判明している。
否定的とする割合が高かった北海道や東北では、「学校の情報収集力による差が出たり、指導体制に差がある学校間で不公平が拡大したりする懸念がある」(北海道・私立・10%未満)、「教育課程、授業担当者の授業の進め方や方針、居住している地域の状況などにより、年内学力入試の受験時点で完成度に差が出るので、一般選抜と比較して条件がイーブンではない印象を受ける」(福島・公立・10%以上30%未満)といった意見が見られた。
授業進行や学校行事への影響に関する設問では、総計で「当てはまる」「やや当てはまる」と回答した人の割合は75.7%となり、多くの高校教員から授業進行や行事実施への影響を懸念する声が上がった。
出願割合10%未満では「当てはまらない」の割合が14.3%で、ほかの区分よりも突出して高くなった。一般選抜での指導を主とする進学校において、年内学力入試の拡大が及ぼす影響が現段階では限定的であることが推測されるという。
年内学力入試を受験する生徒の割合が高まることで、書類作成や面接指導などのサポートの負担が軽減するかどうかを聞いたところ、84.8%が「軽減しない」と回答。出願割合が10%未満の進学校では、「当てはまる」「やや当てはまる」の割合がわずか3.2%で、特別選抜の対応に割くリソースが少ないことが理由として挙げられている。
自由記述では、「生徒や保護者は学校での指導を頼りにしており、面接練習や添削に時間を取られてしまう。かといって、学校に人的余裕があるかといえば、そうでもないので、一部の教員の負担が大きくなっているような状況」といった声が見られた。
「年内学力入試が拡大することで、勉学に励む生徒が増えるか」という設問では、総計で「当てはまらない」「あまり当てはまらない」と回答した人の割合が75.2%となり、年内学力入試が拡大したとしても生徒の勉学にはつながらないと考えていることがわかった。
出願割合10%未満の進学校では、総計を上回る87.3%が否定的な立場で、出願割合30%以上50%未満の進学校は、「当てはまる」「やや当てはまる」の割合が38.9%とほかより高い結果となった。代ゼミでは、進学校と進路多様校のはざまに位置すると考えられる高校では、生徒が勉学に励む1つの動機として年内学力入試が作用する可能性が示唆されたとしている。
年内学力入試における学力検査以外(面接・小論文など)の配点や評価ウエイトを高めるべきか聞いたところ、総計で「当てはまらない」「あまり当てはまらない」と回答した人の割合は71.9%となり、年内学力入試における面接や小論文などのウエイトをもっと高めるべきと考える教員は少なかった。
年内学力入試の拡大で、特別選抜(総合型選抜・学校推薦型選抜)の志望者が増えるかを確認する設問では、総計で「当てはまる」「やや当てはまる」と回答した人の割合は79.2%にのぼった。
出願割合が10%以上30%未満の進学校では、「当てはまる」「やや当てはまる」の割合が総計よりも高い。これは、特別選抜の出願者がもともと少ない学校で、一般選抜での出願しか考えていなかった層が「特別選抜にも出願するかもしれない」という実感があると代ゼミは分析している。
年明けの一般選抜を受験する生徒が減るかどうかを聞いたところ、総計で「当てはまる」「やや当てはまる」と回答した人の割合は78.6%となった。ただし、出願割合が10%未満の進学校においては、「当てはまらない」「あまり当てはまらない」の割合が3割を超えている。このことから、進学校では「年内学力入試に臨む生徒はまだ少ない」と考えていることが推測されるという。
英検やGTECなど、外部検定試験の活用については、総計で「当てはまる」「やや当てはまる」と回答した人の割合が59.8%となった。外部検定の活用に肯定的な割合が高いのは、私立と出願割合50%以上の進学校である。要因として、英語外部試験の取得を後押しするケースが比較的多いことがうかがえる。
総合型選抜・学校推薦型選抜における面接や小論文の評価方法を聞いたところ、総計で「当てはまる」「やや当てはまる」と回答した人の割合は46.2%、「当てはまらない」「あまり当てはまらない」と回答した人の割合は53.8%で、肯定的・否定的な意見が約半数ずつとなった。
出願割合が10%未満の進学校では、「当てはまらない」「あまり当てはまらない」の割合が61.9%となっている。この理由について、一般選抜中心の指導をしている進学校では、「評価基準が明確な学科試験以外の方法への不安」を感じているのではないかと代ゼミは分析している。
年内学力入試に関する教員の意見としては、以下のような声が寄せられている。
- 学習に力を入れてきた生徒にとって、年内学力入試は自分の努力を示す機会。課外活動や資格取得を評価する総合型・推薦型と同様に、学力面での成果を発揮できる。進路決定が早まることで精神的負担が軽減される(千葉県・公立・10%未満)
- 総合型や学校推薦型で学力試験を課すことに賛成。全大学で義務化すべき。小論文や志望理由書など事前提出書類で合否が決まる現状は不公平で、担任の指導力に左右される。現地で小論文を書かせ、一般選抜と同様に学力を問うべき。そうすれば生徒は共通テストまで学習意欲を維持できる(埼玉県・公立・30%以上50%未満)
- 早期進路決定のメリットはあるが、教科書が終わらず授業が消化試合になり、進路未決定の生徒との格差が広がる(岩手県・公立・10%未満)
- 正直、書類作成の負担が増えるばかりなので、ある程度絞って実施してほしい。年内に合格する生徒が増えると、残りの生徒たちに対して好影響とはいえない(福井県・公立・10%以上30%未満)
教育情報センター教育情報室 室長の木戸 葵氏は、「特別選抜全体で、準備負担や評価の不透明性、早期合格による学習意欲の低下など、現場の懸念が強く示された」とコメント。面接や小論文よりも学力試験による客観的評価を望む声も多く、評価方法の透明性を求める意見も目立ったという。
教育課程と受験指導の両立の難しさも浮き彫りになっており、「今後は高校と大学が対話を深め、入試が生徒の人間的成長にもつながるような仕組みづくりが求められる」と木戸氏はまとめている。
なお、同調査の詳細結果は、近日中に代ゼミ教育総研noteにて公開予定だ。

































![タッチペンで音が聞ける!はじめてずかん1000 英語つき ([バラエティ]) 製品画像:4位](https://m.media-amazon.com/images/I/611xdkoqG7L._SL160_.jpg)














