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高校生向けの無料プログラミング講座「ハイスクールPython」が登場!

教材や動画を授業で利用できるほか、コンテンツの改変・再配布が可能

ゼノクリース合同会社と池澤あやか氏、合同会社グローススタートが、高校生向けの無料プログラミング講座「ハイスクールPython」を開始

 ゼノクリース合同会社、タレントでソフトウェアエンジニアの池澤あやか氏、合同会社グローススタートは共同で高校生向けのPythonプログラミング講座プラットフォーム「ハイスクールPython」を開始し、Webサイトを公開した。

 Webサイトのオープンに先駆け、ゼノクリース代表の齋藤智樹氏と合同会社グローススタート代表の穂苅智哉氏に、同サービスの詳細や狙いについて話を聞いた。

合同会社グローススタート 代表 穂苅智哉氏
ゼノクリース合同会社 代表 齋藤智樹氏

全国300万人の高校生に無料提供、教員の利活用や改変も許可

 「ハイスクールPython」は高校の必履修科目である「情報Ⅰ」を体系的に学べ、Webテキスト、YouTube動画、Google Colabを利用したオンライン実行環境でプログラミングを学ぶことができる。

 誰でも無料で利用でき、高校生に質の高い学習の場を提供し、将来活用できる論理的思考力やAI分野、コンピューターサイエンス分野の知識を付け、その先のデジタル人材育成も視野に入れているという。

 また、高校生だけでなく「情報Ⅰ」を教える教員や教育関係者が活用できるよう、コンテンツの利用や改変を許可。多くの学習者が学べるようにする。

ハイスクールPythonの概要(出典:合同会社グローススタート)

 今回の発表時点では、ハイスクールPythonのプロジェクトの発表とWebサイトの公開となるが、今後、2025年1月にYouTubeチャンネルを含めた動画講座のベータ版を公開、3月にはコラム動画などを含めた本公開を予定している。

 ハイスクールPythonのコンテンツは、2026年度以降に大学入学を目指す高校生向けとなるが、大学入学共通テスト後に問題解説コンテンツ提供も検討するとしている。特に、2025年1月に公開予定の動画のベータ版では、2025年1月に行われる大学入学共通テストで出題された情報の問題を踏まえた内容とする予定だ。

数学やプログラミングを指導したゼノクリース代表者が感じる課題とは

 高校生の「情報Ⅰ」は2022年度から必履修化され、2025年1月の大学入学共通テストで試験科目として導入されるが、情報の教員が不足しており、高校での「情報Ⅰ」の授業は週に2コマ程度と、学習環境が不足しているのが現状だ。

「情報Ⅰ」やプログラミングを教える環境が不足(出典:合同会社グローススタート)

 ハイスクールPythonで教材作成などを担当するゼノクリースの齋藤氏は、都内の塾や予備校で大学入試向けの数学や物理化学を指導。高校の補習で数学やプログラミングの指導にあたるほか、Web開発コースの主任講師を務めるなど、情報教育の指導経験が豊富だ。

 齋藤氏によれば、現在の高校生はSNSの使い方や情報リテラシーはすぐ習得できるものの「プログラミングのアルゴリズムやデータ分析の手法、情報のセキュリティといった内容では適性・不適性が出てくる。適性がない高校生は、大変な思いをしながら丸暗記をしている」と指摘。一方で、先生も、情報に関しては教える範囲や内容が多く課題を抱えている。学校によっては、プログラミング学習が不足しており、生徒が十分な学習機会を持てない場合もあると話す。

高校生の読解力などに合わせた練り上げたカリキュラム

 齋藤氏はさらに「大学入試センターによる『情報』の試作問題を見て分析したが、数学Ⅰと関連が高く、データ分析でも最初の20~30%くらいは統計の分野が出題されている。相関係数や共分散標準偏差がわかっていれば、あっさりと習熟できる内容」と指摘した。

 そこで、ハイスクールPythonでは、生徒が難しいと感じることが多い「プログラミングのアルゴリズム」や「データ分析の手法」に絞った内容にするという。

ハイスクールPythonのカリキュラム(出典:合同会社グローススタート)

 さらに、高校生が学びやすくするため、日本語読解能力や論理的思考力についても配慮する。齋藤氏は「“変数を代入する”というところで離脱するケースがある」とし、高校生の知識や到達度を考慮したカリキュラムを作り上げているという。

パソコンではなくタブレットでも学習できる仕組み

 さらに高校生が学びやすい工夫として、パソコンを所有していなくても学習を進められるようにする。齋藤氏の実感として、私立高校では一人一台端末はあるが、パソコンではなくタブレット端末というケースが増えているという。

 ハイスクールPythonでは、WebサイトのテキストとYouTube動画に加えて、ブラウザーでPythonを実行できる「Google Colab」を活用。タブレット端末でもプログラミングの基礎からデータ分析までを体系立てて学習できるようにする。

 また、Web上のテキストとYouTubeのコンテンツは、70分から90分程度で学べる内容を用意。必要に応じて随時更新していくという。

ハイスクールPythonで教育課題を克服し、日本のデジタル人材育成へ貢献

 ハイスクールPythonでは、前述の齋藤氏が代表を務めるゼノクリースがシラバス設計と教材作成を行い、池澤あやか氏がコラム執筆とプロデュースを担当。グローススタートがマーケティングを担当する。

池澤あやか氏

 ハイスクールPythonの開始にあたり、池澤氏は「プログラミングにまつわるコラムでは、勉強というよりも楽しく実生活にも活用できるような工夫をしたいと思っています! プログラミングは勉強でイヤイヤ取り組むものではなく、ハサミやのりのような『ものづくり』のためのツールとして、慣れ親しんでいただければいいなと思っています」とコメントを寄せている。

 また、グローススタートの穂苅氏は「教育機会を平等に提供して基礎力を上げることが目標」と話す。穂苅氏は「授業のコマ数が少なくて覚えきれない」「『情報Ⅰ』を好きになれない」「教員の指導経験が少ない」という状況で、YouTubeをメインにして動画講座を提供するという。さらに、「質の高いコンテンツをしっかり届けることで、教育の地域格差解消ができ、全国の高校生の情報科目の基礎力向上にもつながると思っている」と抱負を語った。

 ハイスクールPythonでは、「情報Ⅰ」について学校で扱っていない部分を補い、高校生の学習環境を提供するだけでなく、勉強方法の確立や学習到達度の測定方法などの課題解決に貢献することも目指すという。無料で利用可能で、コンテンツの改変・再配布が可能な同サービスは、目が離せない存在となりそうだ。

正田拓也