ニュース

日本の子供は計算力が高いが「好き・自信」は中学で急落、スプリックス教育財団調べ

公益財団法人スプリックス教育財団が、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」に基づき、子供の「計算への自信」と「計算が好きか」の調査結果を発表

公益財団法人スプリックス教育財団は、基礎学力に対する意識の現状を把握することを目的に、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」を実施し、結果を報告した。今回は第5回目にあたり、子供の「計算への自信」および「計算が好きか」の国際比較に焦点を当てている。

国際的な学力調査において、日本の子供たちは算数・数学分野で世界トップレベルの学力を示す一方で、「自信」や「楽しい」といった肯定的な意識が国際平均と比べて低い傾向があることが指摘されている。そこで、算数・数学の中でも基礎となる計算に焦点をあて、「自信」や「好き」という意識について、小学4年生から中学2年生にかけて他国と比較してどのように変化するのかを検証した。

調査対象は世界6カ国の小学4年生および中学2年生相当の子供で、調査時期は2025年4月~7月。アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国では、インターネットパネル調査により、各学年150人から回答を得た。日本では、調査参加校の教室で調査を実施し、小4の300人程度と中2の100人程度の回答を得ている。

まず、日本国内での計算に対する意識が小学4年生から中学2年生にかけてどう変化するかを調べた。

図1の2つの図は、それぞれ「計算が好き(縦軸)」と「計算に自信がある(横軸)」に対する、5段階評価の回答の組み合わせが、それぞれ全体の何パーセントを占めるかを示した分布。色が濃いマスほど、その回答を選んだ子供の割合が高いことを意味する。

図1(a)は日本の小学4年生の回答で、右上の最も色が濃いマスは26.1%となっており、小学4年生の4人に1人以上が「計算が好き(そう思う)」であり、かつ「計算に自信がある(そう思う)」と回答したことを示す。

一方、図1(b)の中学2年生の結果を見ると、右上の最も肯定的な領域は9.7%と大きく割合を減らした。代わりに、「どちらともいえない」の中間層(15.1%)や、左下の否定的な領域に回答が集中している。

この2つの回答分布の比較から、中学に進む過程で、計算に対する前向きな意識が急速に失われ、否定的・中間的な意識へと大きく分散していく様子がわかる。

[図1]日本の小学4年生(a)と中学2年生(b)における「計算が好き」と「計算に自信がある」の回答分布(出典:公益財団法人スプリックス教育財団)

次に、他国の傾向と比較した。「あなたは計算が好きですか」「あなたは計算に自信がありますか」という2つの質問に対する5段階評価を数値化。この平均値を散布図として図2(a)にプロットした。横軸が「計算への自信」、縦軸は「計算が好き」とし、グラフの右上ほど肯定的な状態を意味する。小学4年生から中学2年生への意識の変化は矢印で示している。

まず、調査したすべての国で、小学4年生から中学2年生への矢印が左下(否定的な回答)へ向かっていることがわかった。

その中で日本を見ると、小学4年の時点で他5カ国と比較して左下にある。さらに中学2年生になると大幅に低下して(矢印が長い)、6カ国の中で唯一「どちらともいえない」にあたる平均値3.0を下回る否定的な領域に位置していることがわかる。

[図2]調査対象6カ国の比較。(a)「計算が好き」「計算に自信がある」の平均値の変化。(b)国別・学年における、各国共通の計算問題15問の平均正答率(出典:公益財団法人スプリックス教育財団)

計算への意識のほか、計算力についても見てみる。図2(b)は、小学4年生および中学2年生の各国の「計算テストの平均正答率」を示している。問題内容は、学年に合わせた難易度を設定した。

その結果、小学4年生の時点では、日本の正答率は75%と、他国と比較しても標準的な水準だった。さらに中学2年生の結果を見ると、学習内容が難しくなる中学2年生の計算問題において、他国の正答率が50%程度のところ、日本の正答率は80%だった。

このように、日本は意識面で否定的な傾向が見られる一方で、計算力は高いという結果となった。

なお、同調査で実施した計算テストの形式は、参加国によって内容が異なる。インターネットパネル調査のグループでは、国際基礎学力検定TOFASの問題を一部抜粋した短縮版(全32問)を実施した(回答形式は4肢択一)。一方、教室で参加したグループでは、実際にTOFASの計算テストを受験した(回答形式は選択式と記述式を併用)。