【連載】EducAItion Times

パワポカラオケ×NotebookLMで育む「伝える力」、中学校起業部で実践!

EducAItion Timesは、「大人のきぼう こどもの未来」をテーマに、生成AIの活用情報をお届けします。本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」のメンバー8名が運営するもので、子供たちの好奇心を刺激する、新たな学びの提供をめざしています。

娘が世界青少年『志』プレゼンテーション大会で最優秀賞を受賞したり、プレゼンで賞をいただくことが増え、「どうやって伝える力を磨いているのですか?」と聞かれることがあります。特別な才能があるわけではありません。いくつか実践している練習方法の一つに、「 パワポカラオケ 」があります。

本記事では、娘が中学校の起業部で取り入れているこのトレーニングと、Googleの生成AIツール「NotebookLM」を組み合わせた教育実践をご紹介します。 目的は「プレゼン力を高めること」 です。即興で話す力、構成する力、自分の言葉で伝える力。それらをゲーム形式で鍛える方法です。そして、この練習を重ねる中で、副次的な変化も生まれます。「何を一番伝えたいのか?」を考えるようになることです。

ドイツ発祥の知的ゲーム「パワポカラオケ」とは?

娘が中学校で実践した「伝える練習」のきっかけとなったのはパワポカラオケです。

パワポカラオケとは、事前に用意された(または他人が作った)支離滅裂な画像スライドを1枚ずつ即興で表示し、その場でお題に合わせてアドリブでプレゼンテーションを行う「即興プレゼンゲーム」です。

発祥はアメリカやドイツとされ、話術・機転・ユーモアセンス・運まで試される、大喜利のような遊びとして広まりました。あらかじめ内容を準備できないため、「正解を話す」のではなく、その場で考え、つなぎ、意味づける力が求められます。教育現場では、発想力や表現力を育てるトレーニングとしても活用されています。

起業部内で部員たちがパワポカラオケをしている様子(画像:筆者提供)

娘は中学校にある「起業部」という、ビジネスの手法で社会課題解決を考える部活に所属しています。あるとき、新入部員たちが緊張してしまい、なかなか意見が出ないということがありました。そこで娘が提案したのが、この「パワポカラオケ」でした。これをアイスブレイク(緊張ほぐし)としてやってみることにしたのです(起業部で実際に使用した「わかばたいむす」様のパワポカラオケは コチラ )。

パワポカラオケの基本ルール

パワポカラオケのやり方は簡単です。基本ステップは4つだけ。

① お題が出される
例:未来の学校/この商品を100万円で売る方法/世界を救うアイデア

② ランダムなスライドが表示される
例:パイナップル/アヒル/ロケット/山
※何が出るかは事前にわからない

③ その場でつなげて話す
例(お題:未来の学校):
「このパイナップルは、実はAI給食です」
「このアヒルは校長先生で、毎朝ドローンで登校します」
「このロケット型の校舎で宇宙授業を行います」
※正解はなく、止まらず話すことが重要。

④ 制限時間で終了
1〜3分ほど話して終了。最後まで堂々とやり切ります。

パワポカラオケ概要(画像:筆者提供)

1人で練習してもいいですし、複数人でリレー形式で話をつないだり、オンライン会議でのアイスブレイクとしても利用可能です。プレゼンの練習としてパワポカラオケをやることで、以下のような力も身につきます。

① プレゼン力・アドリブ力
予想外の画像に対応することで、瞬時に構成し、言語化する力が鍛えられます。

② 失敗を恐れないメンタル
多少ぐちゃぐちゃでも笑いになります。「完璧じゃなくても話せる」という感覚が身につきます。

③ アイスブレイク力
場が一気に盛り上がるため、初対面でも話しやすい空気を作れます。

部活でこれをやってみると、効果はてきめんでした。 全く関係のない「猫の画像」が出ても、「これは……現代社会の癒やし不足を表しています!」などと無理やりこじつけて話す。失敗しても笑いが起きる。この熱量と即興力を、ただの遊びで終わらせず、AIと組み合わせることで深い学びに変えられないか? そこで考えたのが、 GoogleのAIツール『NotebookLM』 の活用でした。

Google NotebookLMとは?

今回活用するのは、Googleが提供するリサーチ・学習用AI「NotebookLM」です。 これは、ユーザーがアップロードした資料(PDFやWebサイト)の内容を深く読み込み、その情報だけに基づいてサポートしてくれるツールです。

NotebookLMが教育に最適な理由は3つあります。

  • ハルシネーションが少ない:アップロードした資料の範囲内で回答するため、事実に基づいた学習がしやすいです。
  • 文脈を読む:断片的なメモ書きからでも、文脈を読み取って体系的な構成を提案してくれます。
  • 対話による探究:難しい言葉が出てきても、その場で質問して理解を深める先生のような役割を果たします。

導入は3ステップで完了

PCやタブレットがあれば、誰でも無料で始められます。NotebookLMのサイトにアクセスし、Googleアカウントでログインします。

プラスマークをクリックし、ノートブックを新規作成します。

ノートブックを新規作成する(画像:筆者提供)

今回はサンプルとして、文部科学省が公開している「Society 5.0 に向けた人材育成~社会が変わる〜」をダウンロードして使ってみましょう。ダウンロードしたPDFファイルをアップロードします。これだけで、AIはこの資料の内容をすべて学習してくれます。

PDFファイルを読み込ませる(画像:筆者提供)

「AIパワポカラオケ」の実践メソッド

Step 1:即興プレゼン用の「資料」を作る
「スライド資料」というボタンをクリックするだけでワンクリックで作成もできますが、今回は子供たちが説明しやすい資料を作ります。

「スライド資料」ボタンの横にあるペンマークの編集ボタンをクリックします。表示されたフォームにある形式を「 プレゼンターのスライド 」にし、作成するスライドについて説明してくださいというテキストボックスに「 子供でも分かりやすいスライドにしてください 」と入力してください。これで、AIが難しい内閣府の資料を読み解き、中学生でも語りやすいストーリーラインを一瞬で作成してくれます。

即興プレゼン用のスライド資料を作成する(画像:筆者提供)

Step 2:即興プレゼン(魂を吹き込む)
さあ、ここからが本番です。 AIが出力した構成案を見ながら、いきなりプレゼンをやってみます。

大切なのは、文字を綺麗に読むことではありません。アイスブレイクでやったときのように、AIが作った骨組みに、自分自身の感情やエピソードを乗せて話すことです。「AIはこう書いているけど、私が本当に言いたいのは……!」 と、自分の言葉が溢れてくる瞬間が必ず訪れます。まずは失敗を恐れずに、ドヤ顔で勢いよく話してみましょう。

子供にも分かりやすい資料(画像:筆者提供)

Step 3:「わからない言葉」こそが学びの扉
勢いでプレゼンをしてみると、「あれ、この言葉ってどういう意味だろう?」と詰まってしまう瞬間があるはずです。 AIが提案する構成案には、資料に基づいた難しい専門用語(例:DX、GX、ウェルビーイングなど)が含まれることがあります。

これまでは「わからないから読み飛ばす」ことが多かったでしょう。しかし、本メソッドではここが最大のチャンスです。 詰まった言葉を、すぐにNotebookLMに質問します。

「さっきの言葉、小学生でもわかるように教えて!」。するとAIは、「それは◯◯みたいに……」とわかりやすく教えてくれます。わからない言葉に出会う、その場で調べる、自分の言葉として獲得する。 実際に話そうとして詰まったからこそ、その知識は深く定着し、生きた教養となります。

分からない言葉を調べる

Step 4:表現に詰まったらAIに解説してもらう
どう表現していいかわからないときは、『音声解説』や『動画解説』機能を活用します。プレゼンの途中で、「この言葉、どう説明すればいいんだろう」「他の人ならどう話すのかな」と迷う瞬間があります。そんなときこそチャンスです。

「音声解説」ボタンを押すと、AIがラジオ番組のような対話形式で内容をわかりやすく語ってくれます。動画解説では、話の流れやポイントが整理され、構造ごと理解することができます。自分とは違う視点や言い回しに触れることで、「こんな説明の仕方があるんだ」と新しいヒントが得られます。大切なのは、そのまま真似をすることではありません。一度聞いて、理解し、もう一度自分の言葉で語り直すことです。

詰まった瞬間を、学びの入り口に変える。AIの解説は、子供たちにとって“もう一人の先生”であり、“別の話し方を見せてくれるモデル”なのです。

AIに解説をしてもらう(画像:筆者提供)

伝える力を磨く過程で、思いが言葉になる

この実践で育つのは、話し方の技術ではありません。自分の中にある思いを整理し、言葉にし、相手に届く形にしていく力です。即興で話してみる。AIで構成を整える。もう一度、自分の言葉で語り直す。この往復を繰り返すうちに、子供たちは自然と問いに向き合います。「私は何を一番伝えたいのだろう?」という問いです。

より伝わる形にしようとする過程で、自分の考えの中心が少しずつ明確になります。うまく話せるようになることは結果の一つにすぎません。本質は、「なんとなく」を言葉にできるようになることです。

おわりに:まずは一度、教室や家庭で試してみませんか

特別な準備は必要ありません。PCやタブレットが1台あれば始められます。大切なのは、正解を出すことではなく、安心して言葉を出せる環境です。AIは答えを与える存在ではなく、考えを整理する伴走者になります。

「やりたいことがない」のではなく、まだ言葉になっていないだけ。小さな遊びから始めるその時間が、子供自身も気づいていなかった思いを引き出すきっかけになるかもしれません。

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IKIGAI lab.

140名のメンバーが所属する生成AIコミュニティ。監修:髙橋和馬・田中悠介。編集:新谷信敬。

近藤 憲治

株式会社MetaHeroes事業戦略推進本部。愛知教育大学附属名古屋中学校起業部元代表。エンジニア歴20年、技術と事業を横断し次世代育成を推進。社会実装の経験を活かし未来を創る力を育てる。