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「子育ても大事だが、自分の生き方も大切にしたい」、母親の意識が向上

ベネッセ、「第6回幼児の生活アンケート」を公開

株式会社ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所は、2022年3月に、首都圏に住む0歳6カ月から6歳(就学前)の乳幼児をもつ保護者4,030名を対象に、「第6回幼児の生活アンケート」を実施した。

本調査は、少子化や共働き世帯の増加などの社会変化の中で、子どもの生活や保護者の子育ての実態や意識がどう変化したのかを調べるもの。1995年、2000年、2005年、2010年、2015年の実施に続き、今回で6回目となる。

今回の調査では回答者の9割以上が母親であること、また経年比較の観点から分析対象を「1歳6カ月から6歳(就学前)の子どもをもつ母親」に設定。対象者の基本属性は、母親の平均年齢が36.1歳で有職率は44.6%。そのうち四年制大学卒業者は43.9%で、保育園の就園率は40.6%(うち、認定こども園6.4%)となった。

主な調査結果は、以下のとおり。

「子育ても大事だが、自分の生き方も大切にしたい」という意識が上昇

前回調査を行った2015年から2022年にかけて、子育てへの肯定的な感情は減り、否定的な感情が増えている。肯定的な感情の比率はどの項目も高いことに変わりはないが、前回に比べると、すべての項目で5ポイント以上も下がる結果になった。

「子育てへの肯定的な感情(経年比較)」

一方、子育てへの否定的な感情では、特に「子どものことでどうしたらよいかわからなくなること」は13ポイント増、「子どもを育てるためにがまんばかりしていると思うこと」は約20ポイント増と、前回に比べて大幅に増加。なかでも、働いている母親の育児負担感や育児不安感の上昇が顕著で、従来数値が高かった専業主婦との差が縮まった。

「子育てへの否定的な感情(経年比較)」

「子育て観」の項目では、「3歳児神話」といわれる「子どもが3歳くらいまでは母親がいつも一緒にいたほうがいい」と回答した比率は徐々に減り、2022年は44.9%と半数を切る結果に。さらに、「母親がいつも一緒でなくても、愛情をもって育てればいい」という回答は55.1%となり、母親の子育てに対する役割意識に変化が見られた。

また、2005年以降、「子どものためには、自分ががまんするのはしかたない」は増加傾向にあったが、2022年は「子育ても大事だが、自分の生き方も大切にしたい」が上まわった。特に専業主婦において「自分の生き方も大切にしたい」という意識が高まっており、2015年の44.5%から60.2%まで上昇した。

「子育てと自分の生き方のバランス(母親就業別 2015年・2022年比較)」

「母親の友人・知人」「祖父母」の育児サポートは減少

コロナ禍のため対面で会う機会が減り、子育てに関する情報が集めにくくなっている。「しつけや教育の情報を誰から得ていますか」に対する回答は2015年に比べると減少し、「母親の友人・知人」は72.0%から36.0%、「(母方の)祖父母」は43.1%から26.6%、「母親のきょうだいや親戚」は23.8%から13.0%と、約半数ほどになっている。また、「子育てサークルの仲間」「園の先生」も減少、情報交換や相談の機会が減っていることがわかる。

「しつけや教育の情報源(人)(経年比較)」

また、母親が家を空ける時、子どもの面倒をみてくれる人・機関が「いる(ある)」と回答した比率は、2015年に比べると約15ポイント減少。「祖父母や母親のきょうだい、親戚」、「保育園の一時預かりや幼稚園の預かり保育」の利用が減るなか、「父親」と回答した比率が65.7%から82.0%まで増えた。核家族中心に子育てせざるを得なくなっている状況がうかがえる。

「家を空ける時、子どもの面倒をみてくれる人・機関(経年比較)」

未就園児がいる母親は子育てへの不安がより強く、頼れる人が限定的

1歳6カ月から3歳11カ月の未就園児がいる母親は、「子どものことでどうしたらよいか分からなくなること」に対し「よくある」と回答した比率が、保育園児の母親より4.6ポイント高い19.0%。また、「子どもが将来うまく育っていくかどうか心配になること」も同様に、未就園児の母親の方が「よくある」の比率が高く、保育園児の母親とは7.7ポイントの差が生じている。未就園児がいる母親が、より困難を抱えていることがわかる。

「子育てへの不安」と「将来への不安」(低年齢児・就園別 2022年)

子どもの就園状況別に、誰からしつけや教育の情報を得ているかをみると、低年齢の保育園児がいる母親の54.2%が「園の先生」と回答。一方、未就園児がいる母親は「あてはまるものはない」という回答が一番多く、頼れる人が限定されていた。

「しつけや教育の情報源(人)(低年齢児・就園別 2022年)」

ベネッセ教育総合研究所は、本調査の考察として、2019年の保育・幼児教育の無償化の導入や新型コロナウイルスの流行など、社会の動きとともに、「子育ても大事だが、自分の生き方も大切にしたい」という母親の意識の向上に注目。一方でコロナ禍では「友人・知人」「祖父母」に会う機会が減少し育児負担感や不安感が増加したことから、今後は核家族中心の子育てではなく、社会全体で「チーム育児」を推し進めていくことが必要だと提唱している。

【調査概要】
調査名:「第6回 幼児の生活アンケート」
調査対象:首都圏の0歳6カ月~6歳の就学前の乳幼児をもつ保護者4,030名
調査期間:2022年3月
調査方法:WEB調査