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9年間20,000組親子の追跡調査を発表、高3で「勉強好き」な子供はチャレンジ経験が多い ベネッセ教育総合研究所
2024年4月17日 12:03
株式会社ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所は、子供が主体的・能動的に物事に関わり行動を起こしていく「チャレンジングな経験」が学びに与える影響についてのデータをまとめた。
小1~高3までの12学年・約2万組の親子の意識・行動の変化について、2015年から継続している「子どもの生活と学びに関する親子調査」(東京大学社会科学研究所との共同プロジェクト)の調査結果を新たに分析した。
分析結果としては、この9年で「夢中・没頭の経験」や「達成・自信の経験」が減少していることが明らかになった。一方、「チャレンジングな経験」が多い子供は、自己肯定感や幸せ実感が高い傾向があり、「授業が楽しい」や「勉強が好き」を肯定する割合が高く、学業成績が良い子供が多く、高3時点まで一貫して「勉強が好き」を肯定する傾向がある。
ベネッセ教育総合研究所では、子供が主体的・能動的に物事に関わり、行動を起こしていく「チャレンジングな経験」が、さまざまな資質・能力と関連し、非認知能力や自己肯定感、学習意識を高める可能性があると結論付けている。
分析の個別結果は以下の通り。
・9年間で「夢中・没頭の経験」と「達成・自信の経験」が減少
小4生から高3生の子供に1年間に経験したことをたずねたところ、「好奇心・探索の経験」と「果敢な挑戦の経験」は2~3割で横ばい、「将来を考える経験」は4割強で横ばいだったが、「夢中・没頭の経験」は7割から6割に、「達成・自信の経験」は4割から3割に減少していた。
この数字は、「この1年くらいの間に、あなたは次のようなことを経験しましたか」という質問に対して選択した比率を表す(複数選択)。
このうち、「チャレンジングな経験」について、5つの経験のうち3〜5つを経験している「多群」と、0〜2つと少ない「少群」に分けて以後分析する。
・非認知能力との関連
「チャレンジングな経験」が多い子供(多群)は少ない子供(少群)に比べて、「一度決めたことを最後までやりとげる」(粘り強さ)、「難しいことや新しいことにいつも挑戦したい」(挑戦心)を肯定する割合が高いという結果となった。
・社会への関心・将来観との関連
「チャレンジングな経験」が多い子供(多群)は少ない子供(少群)に比べて、「社会の出来事やニュースへの関心が強い」(社会への関心)、「将来の目標がはっきりしている」(将来観)を肯定する割合が高いという結果となった。
・自己肯定感・幸せ実感との関連
「チャレンジングな経験」が多い子供(多群)は少ない子供(少群)に比べて、「自分の良いところが何かを言うことができる」(自己肯定感)、「自分は今、幸せだ」(今の幸せ実感)を肯定する割合が高いという結果となった。
・学習に関する意識との関連
「チャレンジングな経験」が多い子供(多群)は少ない子供(少群)に比べて、「授業が楽しい」や「勉強が好き」を肯定する割合が高いという結果となった。
・認知能力(得意)との関連
「チャレンジングな経験」が多い子供(多群)は少ない子供(少群)に比べて、「暗記すること(ものを覚えること)」や「論理的に(筋道を立てて)考えること」に対して「得意」だと回答する割合が高いという結果となった。
・学業成績との関連
「チャレンジングな経験」が多い子供(多群)は少ない子供(少群)に比べて、学業成績が良い傾向が見られ、多群は少群よりも「上位層」が多く、「下位層」が少ないという結果となっている。
・「勉強が好き」への継続的な影響
小4時点で「チャレンジングな経験」が多い子供を9年間追跡したところ、高3時点まで一貫して「勉強が好き」を肯定する傾向が見られる結果となった。
・「チャレンジングな経験」の効果
「チャレンジングな経験」は「勉強が好き」の意識、「自己肯定感」「学業成績」「幸せ実感」などのさまざまな要因に影響すると分析された。直接的な効果だけでなく、「勉強が好き」を経由して「学業成績」や「幸せ実感」を高めるといった間接的な効果があることもわかった。
・「子供の生活と学びに関する親子調査」調査概要
- 調査テーマ:子供の生活と学習に関する意識と実態(子供調査)/保護者の子育て・教育に関する意識と実態(保護者調査)。同一の親子を対象に2015年から継続して追跡する縦断調査
- 調査時期:各年7~9月
- 調査方法:調査依頼は各回とも郵送で実施、回収は2015年郵送・Web併用、16~20年郵送、21年郵送・Web併用、22~23年Web
- 調査対象:各回とも約2万組の調査モニターに協力を依頼、発送数・回収数・回収率(%)は以下の通り