ニュース
レノボ、GIGA第2期は「壊れにくさ」と「無料ソリューション」を強化
2025年2月10日 08:30
レノボ・ジャパン合同会社は、GIGA第2期(GIGA2.0)に向けたハードウェア3モデルと、教育DXを促進するソリューションを統合したパッケージ「Lenovo GIGA School Edition」を提供すると2月6日に発表した。
GIGA1.0での実績をもとに改善をはかられた端末に、パートナーとの協業による豊富な教育コンテンツを組み合わせ、さらに予備機運用や運用サポート、既存端末の引き取りなどのサービスも用意している。
GIGA2.0に向けた新3機種に、教育コンテンツやサービスをパッケージ
新しい端末は、Chromebook 2機種とWindows 1機種の計3機種。いずれもGIGA1.0での経験をもとに、堅牢性を強化するなどの改善がはかられた。
Chromebookの「Lenovo Duet Chromebook EDU G2」は、キーボードが分離するデタッチャブル型。10.95型画面で、質量はキーボード&ケース装着時で約1093g〜。CPUにMediaTek Kompanio 838を採用する。
Chromebookの「Lenovo 500e Chromebook Gen 4s」は、ヒンジが360度回転するコンバーチブル型。11.6型画面で、質量はWi-Fiモデルで約1.33kg〜。CPUにIntel N100を採用する。
Windowsの「Lenovo 300w Yoga Gen 4」は、ヒンジが360度回転するコンバーチブル型。11.6型画面で、質量は約1.25kg〜。CPUにIntel N100を採用する。
また、予備機を専用倉庫で管理・保管する予備機運用サービスや、端末リサイクルサービスなど、ソリューションサービスを追加料金なしで提供する。
さらに、パートナー企業との協業により、さまざまな教育コンテンツも含まれる。株式会社ポプラ社の読み放題型電子図書館サービス「Yomokka!」や、株式会社新学社の「単元まとめチェック」「要点まとめチェック」、テクノホライゾン株式会社の「ピクチャーキッズクラウドLite」などを用意。ほかにも、レノボによる、メタバース学習環境「Lenovo Metaverse School」や、プログラミング学習ソフト「みんなでプログラミング」も利用可能だ。
同日に報道陣に向けて開催された記者説明会では、GIGA2.0に向けたレノボの取り組みや、コンテンツパートナー企業の声などが語られた。この記事ではその模様をレポートする。
コンセプトは「壊れにくいこと」と「使いたくなること」
まずはコンセプトについて、レノボ・ジャパン合同会社 執行役員 副社長 安田稔氏が紹介した。
レノボでは、2017年から教育市場に向けたデバイスを販売し、コンテンツも出してきたことを安田氏はアピールした。
こうした活動の中で、GIGA1.0で学んだ課題を、今回のGIGA2.0のパッケージに反映しているという。
具体的なコンセプトは、「壊れにくいこと」と「使いたくなること」の2つだ。「壊れにくいこと」としては、5年間安心して使える壊れにくい端末を販売する。また「使いたくなること」としては、「Lenovo GIGA School Edition」として、教材やサービスを統合したパッケージとして提供する。
子供がUSBポートに鉛筆!? GIGA1.0で学んだ課題
製品の内容については、レノボ・ジャパン合同会社 教育ビジネス開発部 部長 外山竜次氏が説明した。
GIGA1.0で学んだ課題として、「故障」「端末のスペック不足」「利活用の格差」の3つを外山氏は挙げ、そこに「Lenovo GIGA School Edition」でどう対応したかを語った。
まずは端末の故障の課題だ。特に、児童生徒が使うことで、大人が使う端末と違って想定しきれなかった部分があった。外山氏によると、子供が鉛筆をUSBポートに挿したことにより、芯が詰まってショートし、発煙事故になったというケースもあったという。
こうした想定外の使い方にも対応し、堅牢性を強化した。今回の3機種ともMIL規格に20項目以上で対応し、レノボ独自の基準であるLenovo DuraSpecにも対応した。DuraSpecでは、76cmの高さからコンクリートやスチール板への落下などを検証している。また、前述した鉛筆をUSBポートに挿したケースについては、ヒューズプロテクションにより過電流が発生したときに電流を遮断して発煙事故を防ぐ。
次に、端末のスペック不足の課題だ。Windowsの起動が遅い、Chromebookでもマルチタスクではパフォーマンスが低下する、といったことが言われた。さらに、これからはCBTやデジタル教科書の普及がさらに進むため、より高いスペックが必要となる。
そこで、5年後の使用も想定したスペックを実装。CPUとして、従来のCeleron N4020やMediaTek MT8183から代えて、新たにIntel N100およびMediaTek Kompanio 838を採用した。
3つめの課題が「利活用の格差」だ。先生がパソコンに詳しくなかったり、魅力的なコンテンツが少なかったり、端末の管理・運用に手間がかかったりして、使いこなしに格差が生じているという。
そこで、利活用を促進するソリューションをパッケージングした。学校の負担を減らすサービスによって思う存分に使ってもらうとともに、充実した教育コンテンツやサポートサービスをパートナーとの協業によって用意した。
予備機運用や端末回収など、GIGA2.0での新しい課題にも対応
さらに、GIGA2.0で想定される新しい課題もある。
1つめは「タッチペンの紛失・故障」だ。GIGA2.0ではタッチペンが要件に入った。高性能なタッチペンを導入すると紛失や故障が問題となり、利用減退にもつながる。
これに対しレノボでは、筆記具の鉛筆(2B以上)をタッチペン代わりに使える「ペンシルタッチ機能」を搭載。さらに無限鉛筆の「ハードペンシル」(600円/本)も用意した。いずれも、コンバーチブルタイプの「Lenovo 500e Chromebook Gen 4s」「Lenovo 300w Yoga Gen 4」の2機種で対応。
2つめは「Type-Cが充電ポートであることによる故障」だ。子供が電源用のUSB Type-Cケーブルを乱暴に挿すことで、故障も多く、端子の消耗もある。そこで、USB Type-C端子を2つ設けるなどコネクターを充実させることで、1つが壊れたら端末を使えなくなるということがないようにする。
3つめは「活用率が増えることでのバッテリー問題」だ。GIGA2.0で用途が増えることで、バッテリーの耐久性がより問題になる。
これに対しては1,000回の充放電に耐えられる高耐久バッテリーを搭載し、12〜15.5時間のバッテリー駆動時間も実現した。
さらに「Lenovo 500e Chromebook Gen 4s」では、エンドユーザーがバッテリーを交換できるようにした。これにより、バッテリー交換のために使えない時間が短縮でき、交換費用も1/2~1/3になるという。
4つめは「予備機」の問題だ。端末が故障したときに備える予備機について、GIGA2.0では予備機15%まで補助金対象になった。しかし、予備機の管理は学校では難しく、たとえば放置するとバッテリーが劣化する。
そこでLenovo GIGA School Editionでは予備機運用サービスを用意。予備機のうちふだん必要な台数だけ学校で保管し、残りをレノボが保管して管理する。必要なときには送料無料で届け、その回数は無制限だ。これは日本郵便や佐川急便、大日本印刷とのパートナーシップにより実現した。
5つめは「既存端末の処分」の問題だ。GIGA2.0ではGIGA1.0で使用した端末の処分についても、要件に含まれている。
そこで、Lenovo GIGA School Editionでは、送料無料での回収サービスが対応する。GIGAで使われた端末は、レノボ製でなくてもメーカーやOSを問わずに回収する。データ消去証明書やCO₂削減見込所にも対応し、回収した端末はリサイクルして活かす。
新学社とポプラ社はどんなコンテンツ? 学習ログが学びを変える?
記者説明会では、今回コンテンツを提供するパートナー企業の中から、株式会社新学社と株式会社ポプラ社の2社を招き、パネルディスカッション形式で取り組みやコンテンツを紹介する場も開かれた。
新学社からは社長の山本伸夫氏が、ポプラ社からは取締役 副社長の平瀬律哉氏が登場。レノボ・ジャパンの外山竜次氏も参加した。モデレーターは、合同会社未来教育デザイン 代表社員の平井聡一郎氏。
新学社は昭和32年から教材出版社として、幼児・小学生・中学生を対象とした図書教材を発行している。
2020年からは、GIGAスクールに対応し、図書教材と連携した、紙とデジタルのハイブリッド教材を開発し発行している。GIGA端末で子供たちが主体的に学習できるようにし、それぞれの学び方に合わせた個別最適な学びの環境を提供しているという。
今回の「Lenovo GIGA School Edition」では、このうちデジタル教材がパッケージに取り入れられ、全国の小中学校で使えるようになる。小学校向けには「単元まとめチェック」、中学校向けには「要点まとめチェック」が利用できる。
ポプラ社は児童書専門出版社で、近年では大人向け書籍も出版している。
2021年には「こどもっとラボ」事業により教育ICT分野に参入した。その中で、国語や社会をはじめ、さまざまな教科の授業で本が活用されている一方で、学校現場には本が足りないことが分かったという。
そこで読み放題型電子図書館「Yomokka!」をスタートした。「Yomokka!」により、児童生徒は主体的・対話的で深い学びの実現や、読書習慣の定着が、先生は授業準備の負担軽減や学校図書館との連携が実現するという。
今回の「Lenovo GIGA School Edition」では、「Yomokka!」のうち、教科書に掲載されている作品など授業に関連した本をピックアップした特別版が利用できる。「Yomokka!」ではポプラ社を含む40社の4,500冊を収録するうち、今回の特別版では約700冊が読めるという。
この2社の説明を受けて、モデレーターの平井氏が、これまでのGIGAでは先生が一方的に話す従来の授業の形が変わっていないことが課題であるが、GIGA2.0では学習者主体の授業への変換が果たされる必要があるとコメントした。
また、デジタルの利点の一つとして、学習ログなどデータを活用して学びを変えられることを平井氏は挙げ、両社の考えを尋ねた。
新学社の山本氏は、子供が問題を解いたときに、正解不正解だけではなく、解くのにかかった時間や、経年の学習履歴などさまざまなことが分かるようになると回答。そして、それを学習指導に活かして児童生徒へフィードバックしやすい環境づくり、さらには発展学習の教材をレコメンドすることにも取り組んでいると語った。
これを受けて平井氏は、ビジネスでもPDCAサイクルから、OODA(Observe:観察、Orient:方向づけ、Decide:意思決定、Act:行動)サイクルが重んじられるようになってきていると指摘。そのためにはまずObserve、つまり現状がはっきり見える化されることが必要だと語った。
ポプラ社の平瀬氏は、グレードやページ数などさまざまな観点で読書の分析ができるようになると回答。これと学習成果と照らし合わせることで、本を読むことの効果なども分かるのではないかと語った。
また、自分の振り返りや先生の参考のために、読書ログをダッシュボード化する意義もあると説明。さらに、Yomokkaでは本との出会いを大事にしていることから、履歴からAIが本をレコメンドしてくれる、という未来もあるだろうと語った。
これについて平井氏は、読書のログとそれ以外のデータから関連性で新たなことが見えるのが大事なことだとコメント。さらに、AIによる分析などによって新たな学びがログを通して生まれるのではないかと期待していると語った。