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Google AI 大学生アンバサダー「Gemini」の活用を発表、広がる実践アイデア

「Google AI 大学生アンバサダープログラム」の11月のミートアップが開かれた(画像:編集部撮影、以下同様)

 Googleは11月27日、全国の大学生・大学院生を対象とした「Google AI 大学生アンバサダープログラム」の月例ミートアップを、東京・渋谷の自社オフィスで実施した。同プログラムは2025年8月の発足以来4回目の開催となり、2025年の最終回にあたる。今回は、大学生アンバサダーたちの意見や活用を反映して作成された「 大学生のためのAI活用アイデア集 」が発表された。

800名の大学生から生まれた「活用アイデア集」が完成

 Google AI 大学生アンバサダープログラムには、全国215大学から800名以上の学生が参加している。今回のミートアップでは、活動開始から約4カ月が経過し、月例会での議論やDiscord上での活発なやり取りから生まれたアイデアを集約した「 大学生のためのAI活用アイデア集 」の完成が報告された。

大学生のためのAI活用アイデア集
Google AI 大学生アンバサダープログラムの概要
今日までの軌跡

 このアイデア集は、学生ならではの視点やインサイトを反映しており、学生生活のアップデート、クリエイティビティ、ライフハックなど多岐にわたる活用法が詰まっている。より多くの学生に届けるため、Geminiの公式ノートでもオンライン公開しているほか、今回は製本版として会場でも配布された。

大学生のためのAI活用アイデア集の内容

 さらに、この日はアイデア集に貢献した大学生アンバサダー5名が登壇し、具体的なGeminiの活用事例を紹介した。

Deep Researchで、研究の最新動向を効率的にキャッチアップ

Google AI 大学生アンバサダーのMAKOTOさん
研究の最新動向を調査

 名古屋大学のMAKOTOさんは、自身の研究テーマであるAI分野の最新動向を追うプロンプトを紹介した。研究において、最新の論文が「過去のどの論文を参考にしているか」は分かっても、「それが利用された未来の情報」を掴むのは難しいという課題があった。

 MAKOTOさんはこの課題に対し、Geminiの検索機能「 Deep Research 」に着目。被引用論文を調べる、という引用検索機能を使えば、調べる作業がとても効率化できると述べ、同機能を使って探求心を持って最新情報をアップデートできると強調した。

Geminiに「意外性のあるレシピ」を提案してもらい、自分の思考を打破!

Google AI 大学生アンバサダーのREIさん
残り物からレシピ考案

 横浜市立大学のREIさんは、一人暮らしの学生が抱える「冷蔵庫の残り物問題」に着目した。セロリやキュウリといった食材から、和食や洋食といった「常識の枠」にとらわれがちな人間の思考を打破するため、Geminiに「意外性のあるレシピ」を教えてもらうプロンプトを考案した。

 この手法は、アカデミアにおいても応用可能であり、自分の枠にとらわれてしまいそうになったときに、他の専門領域(経済学、政治学など)の視点から同じ問題を捉え直す手助けになると提案した。

SNSのアイコンで使用できる、自分オリジナルのステッカーを作成

Google AI 大学生アンバサダーのSUMIKAさん
自分のアイコンとなるオリジナルステッカーを作成

 清泉女子大学のSUMIKAさんは、自分オリジナルのステッカーを作成するプロンプトを作成した。初対面の人とのSNSを交換する際に、投稿写真がゼロ、アイコンは初期設定のままの学生が多いというインサイトから生まれた。

 プロンプトではポップで可愛らしく、その人らしさを取り入れたオリジナルステッカー(画像)をGeminiに生成させ、できたステッカーはSNSのアイコンとして使用できるほか、セリフや表情を変えたレパートリーを増やすことで、メッセージアプリのスタンプのように活用できるという。

Storybook機能で難しいニュースを絵本で解説!難易度も調整可能

Google AI 大学生アンバサダーのYUMIさん
難しいニュースをStorybookで絵本化

 東京理科大学のYUMIさんは、難しい専門用語が多いニュースを絵本形式で理解しやすくする方法を紹介した。これは、知らない用語や専門用語が出てくるニュースを見たときにAIに説明してもらおうと思ったことがきっかけだという。

 Geminiの「Gem」から「 Storybook 」を選択し、ニュースのリンクを送り、「このニュースについて中高生向けに分かりやすく説明する本を作成して」といった短いプロンプトを入力するだけで、絵本仕立ての解説が生成できると紹介した。小学生向けやデータサイエンスの初心者向けなど、読み手の難易度に合わせて用語や内容を調整してくれるとし、その点が非常に便利だとした。

自分の強みをアピールできるオリジナル名刺作成

Google AI 大学生アンバサダーのSATSUKIさん
オリジナル名刺を作成、自分の強みや好みをアピール

 共立女子大学のSATSUKIさんは、Geminiを活用して自分の強みをアピールする名刺を作成した事例を紹介した。アンバサダー活動の案内に「名刺の持参」が記載されていたことがきっかけで、連絡先を載せるだけでなく、自分を表現するツールとして名刺を自作したという。

 Geminiとの対話を通じて自分の強みや好きを引き出し、アップロードした写真から「手書きイラスト風」の似顔絵を生成。具体的なデザインやキャッチコピーに落とし込むプロセスを工夫した。SATSUKIさんは、その成果として「名刺ができたことで、初対面の場における緊張感が自分を知ってもらう楽しみへと変化し、コミュニケーションの質が向上したと感じる」と述べ、AIが思考を深めるパートナーとなったことを強調した。

大学生のGemini利用で気を付けたい、アカウントの使い分け

Google for Education マーケティングマネージャー 塙 真知恵氏

 続いて、Google for Educationのマーケティングマネージャーである塙 真知恵氏が登壇し、「責任あるAIの使い方」について解説した。

 Googleは教育機関向けに特化した「 Gemini for Education 」を提供しており、大学生は大学組織のGoogleアカウントと個人アカウントの2種類でGeminiを利用できると説明。それぞれの特性が異なるため、状況に応じて使い分けることの重要性が強調された。

 特に注意すべき点として挙げられたのが、個人情報や機密情報をAIに入力する場面だ。大学組織アカウントの「Gemini for Education」にはデータ保護が強化されているため、こうした仕組みを理解したうえで安全に活用することが大切だと呼びかけた。

Geminiアカウントの使い分け

進化のスピードが加速するGeminiの新機能

Google Geminiのシニア マーケティング マネジャーであるスーウェイ ワン氏

 続いて、月例ミートアップでは恒例となっている新機能の紹介セクションで、Google Geminiのシニア マーケティング マネジャーであるスーウェイ ワン氏が登壇し最新機能を紹介した。

 ワン氏は、この月例ミートアップで毎回新機能を紹介。当初は毎月紹介するものがあるか不安だったが、今では限られた時間で紹介するものを迷うほど新機能が増えているという。

 今回の紹介は最新AIモデル「 Gemini 3 」、最新画像生成モデル「 Nano Banana Pro 」、および Google検索内のAIモード の3つ。

 提供が開始されたばかりのGemini 3は、画像や動画を含むマルチモーダルの理解力と推論能力が大幅に進化し、テニスのフォーム分析やプレゼンの練習など動画の分析が可能になったこと、回答を最適なビジュアル形式で自動生成する「ビジュアルレイアウト」機能も新しく搭載されたことを紹介した。

Gemini 3によるアプリの進化

 ワン氏は「Google AI Pro」という有料プランだとほぼ無制限で使えるとし、例えば動画の分析では、スマートフォンで自分のプレゼンの動画を撮って、GeminiアプリにアップロードするとGeminiが良いところや悪いところを判断、フィードバックしてくれるような使い方もあると紹介した。

Gemini 3によるアプリの進化

 Nano Banana Proは、Gemini 3 Proに基づく最新の画像生成モデルで、日本語の性能が格段に向上。画像をアップロードして4コマ漫画を生成でき、特定の概念を絵で解説する図解機能などが利用できることを紹介した。

Nano Banana Pro

 また、Google検索内のAIモードは直近の登場ではないが、生成AIでありながら短い検索クエリーでも良い結果が返ってくることが特徴と紹介。生成AIではチャット履歴をベースにおすすめな回答を示すが、網羅的に知りたい場合や中立的な回答がほしいときにAIモードが使えるという。

約半年に渡るプログラム、今後の活動にも期待

 今回、Google AI 大学生アンバサダープログラムの月例ミートアップにはアンバサダーのうち約100名がリアルに集まった。

 取材が許されたのは前半の「大学生のためのAI活用アイデア集」の完成披露と学生アンバサダー5名によるGeminiの活用事例を紹介、Geminiの最新機能紹介までだが、取材のあとも学生アンバサダーはリアルに顔を会わせてのディスカッションなどが行なわれたという。

 なお、活動期間は約半年。今後もAI活用のスキルを磨き、AIを広める活動を通して、実りある成果を期待したい。

今回の月例ミートアップには約100名が参加
正田拓也