【連載】EducAItion Times

動画生成AI「Sora2」を授業でどう使う?3つのアイデアと活用ポイント

EducAItion Timesは、「大人のきぼう こどもの未来」をテーマに、生成AIの活用情報をお届けします。本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」のメンバー8名が運営するもので、子供たちの好奇心を刺激する、新たな学びの提供をめざしています。

テキストから高品質な動画ができる生成AIとして、OpenAIが開発する「Sora」やGoogleの「Veo 3」が登場し、教育現場での活用方法が模索されています。

今回は、これらのなかでも最新の動画生成AI「Sora2」を、”学びのツール”として教室で活用するための、3つのアイデアを教育的なポイントとともにご紹介します。

※本記事で紹介する動画生成AIは、記事公開時点で 有料プランでの提供 が前提となっています。本稿は、教育的な可能性について考察するものです。
※Sora 2 は、原則として 18歳未満の利用が制限 されていることから、本稿で紹介する実践は「教員が自分の責任でアカウントを運用し、生成された動画を学習素材として活用する」ことを前提としています。

Sora 2の基本的な動画作成ステップ

まず、基本的な活用の方法として、Sora2での動画作成ステップを紹介します。操作はシンプルで、「言葉」が「映像」に変わるプロセスを体験できます。

Step 1: Sora(https://sora.chatgpt.com/)にアクセスし、ログインする

Soraのログイン方法(画像:筆者提供)

Step 2:作りたい動画の 「プロンプト(指示文)」を入力する

動画生成の方法(画像:筆者提供)

① 中央のテキストボックスに、作成したい動画のイメージを「言葉」で具体的に入力します。

プロンプト例:
日本の高校の教室で、一人の生徒がAIロボットと真剣に対話しながら、プログラミングの問題を解決している。別の生徒は教師と協力して新たなプロジェクトを進める。個々の成長と共創の瞬間を、温かい光と励ましのナレーションが聞こえるような感動的な映像で。

② 生成される動画の時間・動画のアスペクト比を選択する。

Step 3: 生成ボタンを押し、AIが動画を作成するのを待つ
① 「生成(Generate)」ボタンをクリックします。
② 数十秒から数分待つと、動画が表示されます。

生成された動画(画像:筆者提供)

③ 生成された動画を再生し、イメージ通りか確認します。
④ もしイメージと違えば、「もっとロボットを小さくして」といった形で、チャット(対話)を通じてAIに修正を指示することも可能です。

教室での実践アイデア3選と活用のポイント

Sora 2は教育現場でどのように活用できるでしょうか。具体的なアイデアを3つ紹介します。

①総合・社会:「地域の良さ」をPRする動画制作

アイデア:
生徒たちが調査した地域の魅力を、PR動画としてAIに生成させます。社会科や総合的な学習の時間での活用が期待されます。

プロンプト例:
兵庫県丹波市の3つのPRポイント『1. 雄大な自然と美しい田園風景』『2. 特産品の丹波黒豆』『3. 丹波竜の化石』を盛り込んだ、観光客向けの温かみのあるPR動画で最後のセリフは高校生が「丹波さいこー!!」と叫ぶで作成してください。

Sora 2で生成した丹波市PR動画(画像:筆者提供)

活用のポイント:
ここでのポイントは、 AIが生成した動画を「完成品」として扱うのではなく、 生徒同士の対話を深めるための「材料(たたき台)」として捉える ことです。

「どうすれば、もっと丹波市の魅力が伝わる?」
「この動画のどこが良くて、どこが実際と違う?」
「観光客に来てもらうには、どんな情報や表現が必要?」

といった問いを投げかけ、意図的に生徒同士の対話を生み出します。このプロセスを通じて、地域の良さを多角的に再発見する、どのように情報発信すれば魅力が伝わるのかを考える、といった学びにつなげることができます。同時に、「AIが作った映像にも誤りや偏りがあるかもしれない」という視点も育てていきます。

②理科・安全教育:「危険な実験」のシミュレーション

アイデア:
「危険な実験」を、AIにシミュレーションさせます。

プロンプト例:
理科室で、酸素を100%充満させた大きなビーカーを用意します。そこに、長い柄の先に火をつけたマッチをゆっくりと近づけるとどうなるか、シミュレーション動画で見せてください。

危険な実験のシミュレーション(画像:筆者提供)

活用のポイント:
リスクなく危険な現象を安全に疑似体験できる点です。生成AIが作成した動画には、ハルシネーションが含まれるため、教員のファクトチェックが重要です。

他の活用例:
「廊下を走るのは、なぜダメなのか?」等のテーマで動画を作成しておくと、児童にとって、廊下を走ってはいけない理由がより説得力のあるものになります。

「もしも廊下を走ってしまったら…」

プロンプト例:
主人公の小学生が学校の廊下を走っていて、廊下の曲がり角でお互いに走ってきた児童同士がぶつかって転倒する場面「廊下を走らずに歩こう」というメッセージを伝える動画

③国語・芸術:「想像の世界」を映画にする(思考のツール)

アイデア:
国語の物語創作の授業で、生徒が書いた文章(またはその一部)をAIに動画化させます。

プロンプト例:
(生徒の作文引用)『ぼくが考えた格好いいドラゴンが、夕焼けの空をまっすぐに飛んでいく』様子を、壮大な音楽が似合う映画のワンシーンのように作って。

想像の物語を映像化(画像:筆者提供)

活用のポイント:
この活用は「作品化」に留まりません。生徒は「私の想像が形になった!」という喜びを得るだけでなく、教師が「AIが作ったこの動画を見て、どう思った?」「(〇〇さんが書いた)元の文章と比べて、もっと良くできそう?」と問いかけることで、新たなインスピレーションを得ることができます。その動画をもとに、さらに物語の続きを書き直したり、設定を深めたりするなど、AIを「 思考を深めるための壁打ち相手 」として活用できます。

AIを「賢いパートナー」にするための3つの心得

動画生成AIを適切に活用するために、3つの心得をおさらいしておきましょう。

📝心得1: 動画生成AIは「現実」ではない。必ず「ファクトチェック」を行う
Sora2が生成する映像は、あくまで「それらしい」シミュレーションであり、事実と異なる情報(ハルシネーション)を含む可能性があります。アイデア1(地域PR)やアイデア2(危険な実験)で示した通り、 生成された動画を鵜呑みにせず、必ず教科書や資料等と照らし合わせ、その内容が「本当に正しいか」を批判的に検証することが重要 です。

📝心得2: 「著作権」と「倫理」を意識する
手軽に生成できるからこそ、権利と倫理への配慮が不可欠です。

  • 著作権(入力):プロンプトに、特定のキャラクター名(例:「ドラえもん」)や作品名、実在の俳優名、ブランドロゴなどを入力してはいけません。第三者の著作権や商標権を侵害する指示は避けるべきです。
  • 著作権(出力):AIが生成した動画の「著作権」は、現状の法解釈では発生しにくいとされています。また、意図せず既存の作品に酷似した映像が生成されるリスクもゼロではありません。
  • 利用規約の遵守:最も重要なのは、OpenAIやGoogleが定める利用規約です。特に、生成した動画を学校のウェブサイトや発表会で「公表」する場合、その利用が規約で許可されているか(教育利用の範囲か)を必ず確認する必要があります。
  • 個人情報と倫理:児童生徒の個人情報や顔写真をアップロードしない、ディープフェイクのような悪用をしないといった基本的な倫理観を持つことが大前提となります。

📝心得3: AIは「思考の道具」である
Soraは「答え」をくれるわけではありません。私たちが良質な「問い(プロンプト)」を立てたとき、AIは最良の「素材」を返してくれます。AIに安易に答えを求めるのではなく、「自分の想像を形にするためのパートナー」として、多様な問い(言葉)を投げかける姿勢が重要です。

本稿で扱うサービスと前提条件について

本稿は、記事公開日時点で公開されているSora 2の情報をもとにした「教育的な可能性の考察」です。Sora 2 は、有料プランで提供されており、料金体系・機能・提供地域・利用条件は今後変更される可能性があります。

特に重要なポイントとして、

・Sora 2 および関連サービスは、原則として18歳未満の利用が制限されている
・児童生徒が個人アカウントを作成して直接操作することは、想定されていない

といったことが挙げられます。したがって、本稿で紹介する実践はすべて、「 教員が自分の責任でアカウントを運用し、生成された動画を学習素材として活用する 」ことを前提としています。

実際に学校で導入する際は、必ずOpenAI や Google の最新の公式情報・利用規約に加え、所属する自治体・学校の情報セキュリティポリシーや校務用端末の運用ルールを確認したうえで、組織としての方針に沿って利用可否や範囲を判断してください。

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IKIGAI lab.

140名のメンバーが所属する生成AIコミュニティ。監修:髙橋和馬・田中悠介。編集:新谷信敬。

黒田 一之

教員。大学院生。Microsoft認定教育者。生成AIを活用した特別支援学校教員の校務支援について研究中。生成AIの知見を得るためハッカソン大会等に出場・入賞経験あり。