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どの先生も取り組める"探究の教科書"を、「ブリタニカSTEAMブック」で探究の型を固める︕
- 提供:
- ブリタニカ・ジャパン株式会社
2023年9月29日 06:30
2022年度から高等学校で始まった「総合的な探究の時間」。現場ではどのような学習を行うべきか試行錯誤が続く中、百科事典で知られるブリタニカ・ジャパンは、"探究の教科書"を目指した教材「 ブリタニカSTEAMブック 」を発表した。
この「ブリタニカSTEAMブック」を活用すれば、どのような探究学習ができるのか。現役教員でありながら文部科学省で高校学習指導要領を担当し、経済産業省「未来の教室」STEAMワーキンググループ委員などを務める早稲田摂陵高等学校の米田謙三先生と、ブリタニカ・ジャパンのコンテンツ開発部 責任者の青木 聡氏に話を聞いた。
注:「ブリタニカSTEAMブック」は検定教科書ではありません。
①二極化が進む高校の探究学習。どの先生も取り組める教材が必要
②朱書編には3観点の評価規準も記載。教科横断にも広がる学びへ
③"探究学習の教科書"で、探究のスパイラルを回したい
④探究学習で非認知能力が身につき、協働できる人材を育成
二極化が進む高校の探究学習。どの先生も取り組める教材が必要
青木(ブリタニカ・ジャパン株式会社): 高校で「総合的な探究の時間」が始まってから1年以上が経ちましたが、現在の状況を米田先生はどう見られていますか?
米田(早稲田摂陵高等学校 Wコース長): 高校ではまだ新しい学習指導要領が始まって3年経っていませんが、大学入学共通テストに追加された「情報」に比べると、「探究」はやや出遅れ感があると思います。その一方で、私立大学では「探究型入試」や「総合型選抜」を採用するところも増えているため、私立高校などでは探究科を作ったり、探究学習のカリキュラムを強化する動きもあります。公立でも、教育委員会が中心となり積極的に取り組んでいるところもありますね。全体的に二極化していると思っています。
青木: 探究の取り組みが二極化しているのは私たちも感じています。先生方の中には、探究学習に必要な学習ノウハウ、例えば情報収集の方法や有効性の確認、真偽の判断方法や伝える相手を意識した発表の方法など、どのように教えればいいのかわからない、そんなことに大変さを感じられているようにお見受けします。
米田: そうですね。例えば探究学習に実績のある学校は、すでにスタイルができていて、その手法を参考に教員は取り組むことができます。でも、多くの学校はなかなかそこまでいってないですよね。
私も今年の夏、全国の小中高をまわって視察しましたが、先生方からは「探究学習に取り組みたい」という声が多く聞かれる一方で、「何か良い教材はないですか」と質問されることが多くて。限られた時間の中で効率的に取り組める、パッケージ化した教材が求められているのを感じました。
青木: まさに、その課題を解決するために開発したのが、「ブリタニカSTEAMブック」(以下、STEAMブック)です。私たちも、探究学習については多くの先生方にヒアリングをしていて、さまざまな課題があると認識していました。そこで、どの学校の、どの先生でも取り組みやすい、”探究学習の教科書”のようなものを作れないかと開発を進めてきたのがSTEAMブックです。STEAMブックという名前ですが、主に高校の「総合的な探究の時間」で使える教材となっています。
米田: 文部科学省でも、「総合的な探究の時間」を達成するための手法のひとつとして、STEAM教育の推進も挙げていますよね。教科横断的な学びや産学連携、高大連携、人材育成につながるのがSTEAM教育ですから、「総合的な探究の時間」のテーマ設定として適切です。
ただ全体的な傾向として、探究学習にしても、STEAM教育にしても新しい学習だけに、忙しい先生方の手が回っていないのが現状でしょう。
青木: そうなんです。そうした忙しくて、手が回らない先生方に使ってもらいたくて開発しました。教材の中身としては、経済産業省の「STEAMライブラリー」にブリタニカが提供した動画を含むさまざまなデジタルツールと、生徒向けのA4判のワークブックをセットにしたパッケージになります。
またシンキングツールにも力を入れていて、それを使う理由や使い方を例と共に解説していたり、朱書編ではさらに深く掘り下げて、先生方への活用のアドバイスも記載したりしています。Tips集として「効果的なプレゼンテーションの方法」など、探究学習に必要なノウハウも充実させて、先生方が取り組みやすいよう工夫しています。
朱書編には3観点の評価規準も記載。教科横断にも広がる学びへ
青木: 高校の探究学習に関しては、先生方が抱えている課題が本当に多いなと思います。弊社のヒアリング結果でも、探究するための方法、評価、授業準備、教科との関連付け、外部との連携などさまざまな課題が表面化し、STEAMブックはこれらすべての課題解決をめざしました。米田先生がご覧になって、現場の先生方にとって最も難しい課題は何だと思われますか?
米田: そうですね、探究学習が「評価しづらい」ことだと思います。先生方も生徒が取り組む探究学習のテーマすべてに詳しいわけではないので、専門性がない分野についてどのように評価すればよいのか、それが負担になっているでしょう。
青木: おっしゃるとおりですね。STEAMブックではそうした課題に対応するため、教師用朱書編はかなり力を入れました。3観点の評価規準や留意点の解説も入れましたし、先生が専門的な知識を持っていなくても、ワークシートやシンキングツールで無理なく必然的に学びを深めることができるようにデザインしました。
米田: いいですね。探究学習を実際にするときって、なかなか評価まで手が回らない先生が多いと思いますので、そういうときにSTEAMブックが使えると便利ですね。
あと、課題点としては、探究学習ってサイエンスやテクノロジーに寄ったテーマが多くなりがちで、難しいというイメージを持たれている先生方も多いと思います。特に、文系の先生方はそうした傾向にあると思うので、テーマ選びもむずかしいですね。
青木: そうですね。その点は、私たちも教材をつくるときに、かなり悩んだ部分です。STEAMブックでも科学的なテーマを扱っていますが、生徒や先生が身近に感じられて、意欲的に取り組みやすいものを厳選しました。例えば「睡眠」。睡眠研究の第一人者である筑波大学の柳沢正史先生のインタビュー動画を用意して、誰にとっても当たり前である「寝ること」について、知識をインプットし、興味を広げられるような構成にしています。
米田: 私が授業で取り組んだ「自律型(AI)致死兵器」のテーマもよかったですよ。戦争におけるドローンの活用や、法制度が整っていないことが紹介され、自律型(AI)致死兵器がもたらす戦争の考え方の変化について考える、これってテクノロジーを扱っていますが、思考を深める部分は倫理的な問題で、教科も横につながりますね。
青木: はい。テーマによっては、STEAMブックでは「トレードオフは人道的に許されるのか」、「そのテクノロジーが逆に弊害にならないか」など、倫理的な問題も数多く扱っています。文系の先生と理系の先生がタッグを組んで、教科横断的な学習に取り組むのも、ひとつの方法だと思います。
米田: まさに、STEAMに置き換えると「A」の部分ですよね。「A」は芸術的なアートとリベラルアーツという2つの意味がありますが、倫理なども含まれています。そもそも文部科学省の見解では、STEAMには国語や社会に関する問題も含まれていますからね。先生が1人でやり始めるのもいいですし、教科横断的にいろいろな先生が連携して実践することもできますね。その場合、「教科関連表」が用意されているので、参考にされるとよいと思います。
青木: STEAMブックの教師用朱書編で指導案を参照できるほか、朱書編には各教科書との関連を学習指導要領とテキストで示していますので、具体的にどう関連しているのかを確認いただけると思います。
"探究学習の教科書"で、探究のスパイラルを回したい
青木: 米田先生は、実際にSTEAMブックを使う先生に対して、どのような活用をおすすめされますか?またカリキュラムに落とし込むには、どうすればいいでしょうか?
米田: そうですね、このSTEAMブックは、1テーマ3時限で取り組める内容が10テーマ掲載されている構成なんですよね。これを「総合的な探究の時間」の教材として使うなら、1年かけて10テーマ、授業で5、6テーマを扱って、あと4つを夏休みなどの課題にしても良いと思います。
また「総合的な探究の時間」の中で、キャリア教育や修学旅行をテーマにした場合も、部分的にSTEAMブックを取り入れると有意義ですね。例えば1学期間はSTEAMブックを使うとか、1~3学期に5コマずつ分けて行っても良いと思います。
青木: たしかに、夏休みなどに課題として取り組むのは良い案ですね。STEAMブックは自宅学習やオンデマンド的な学習にも対応できるよう、生徒用のワークブックにも生徒が自身で実践イメージをつかめるよう、具体的な補足をしていますし、学習フローも記載しています。何をやれば良いかがクリアで、振り返りや見通しもできるよう構成してあります。
また、STEAMブックは「探究のスパイラル」が繰り返されることを重視しています。どんなに難しいテーマでも実はすべてが関連していて、「探究の過程を経由して、自らの課題をアップデートする」作業を、“繰り返す”ことに価値があると考えています。探究のスパイラルを回すことで探究の“型”を身につけ、それが社会に出てからも生きて働く力として課題解決に使えるようになるからです。
STEAMブックは、複数のテーマをコンパクトに学習できます。最初はクラスでテーマを統一して取り組み、次のステップではグループごとに違うテーマを選んで実施するなど、まずは取り組んでみてほしいですね。探究のスパイラルを繰り返すことで探究の基礎固めができたら、最終的には自校のカリキュラムへ展開することで、さらに学びが深まることを期待しています。
探究学習で非認知能力が身につき、協働できる人材を育成
青木: 最後に、なぜ今、探究学習が求められているのか、もう一度、振り返ってお聞かせ願えますか?
米田: そうですね、探究学習が導入された背景のひとつには、自分のこととして考えられることが求められているからだといえます。予測不可能な時代になり、生徒たちはさまざまな社会課題の解決を担っていく世代で、「主体的に対話ができて、協働できる人材の育成」が急務になっています。
例えば、ITエンジニアに限っても、以前はプログラミングスキルが重視されていましたが、今はテクノロジーを活用した課題解決が求められるようになり、他者と協働できるスキルやコミュニケーションスキルなども必要とされています。そうしたスキルを身につけるためには、「総合的な探究の時間」での学びや協働的な学びが重要になってきたわけです。
青木: わかります。実際、仕事をしている社会人なら誰しも、協働できる人材の貴重さや、STEAM教育で身につく知識の必要性を実感していると思います。情報を適切に選び出し、組み合わせて活用する能力や、プレゼンテーションの力は社会人の必須能力です。それと同時に、コミュニケーション能力や、最後まで粘り強くやり抜く力も大切です。探究学習では、知識習得や思考力だけでなく、どんな場面でも活用できる力、いわゆる非認知的な能力が身につきます。
米田: そうですね。ただ、意識しておきたいのは、教科としての「探究」は1人でもできますが、「総合的な探究の時間」は複数人で行う学習であり(もちろん1人で行うこともあります)、主体的で対話的で、そして協働的な学びであることです。生徒たちが働く企業やこれからの社会では、多様性のある環境で協働的にやっていく力が重要で、協働的な学びが大切になってきていることを忘れてはいけません。
とはいえ、最初はそこを気にせず、まずは始めてみるので十分です。「総合的な探究の時間」の狙いは、広く浅くまんべんなく。そこから深めると教科探究になり、歴史探究や、理数探究や、古典探究につながっていくと考えます。
青木: その通りですね。STEAMブックは、探究学習を「とにかくまずはやってみる」ために作りました。こうした教材があれば先生方もトライアンドエラーができますから、1つのテーマをやってみて、仮にうまくいかなくても、その反省点を次のテーマの実践に生かすようにして、どんどんやってみてほしいです。「自分ではうまく教えられないかも」という先生にも、ぜひ朱書編を使って挑戦していただきたいです。
生徒から問いが出てこないときは、こんなことを元に話を進めるとよいといった導入例など、解説の内容も幅も豊富です。朱書編には想定される質問や話の展開も書かれているので、普段の授業に近い感覚で、まずは探究学習をやってみてほしい。STEAMブックは、これから探究学習に取り組む先生や学校の、はじめの1歩になれればと考えています。
「ブリタニカSTEAMブック」の詳細を知りたい方は、製品紹介のサイトをご覧ください。こちらのサイトでは、サンプル動画が視聴できるほか、ワークブックや教師用朱書のサンプルもダウンロードできます。
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