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ブリタニカ、写真xAIx百科事典でつくる新しい学び「トルクレオ」

トルクレオ

 1人1台端末の普及で、児童生徒がネット上の映像に触れる機会が増えた。特に調べ学習では、児童生徒が画像をアウトプット等に使う場合も多く、本当に正しい知識や情報に触れられているかどうか、不安に感じる教員もいるだろう。

 そんな課題解決につながりそうなのが、ブリタニカ・ジャパン株式会社が提供する学習教育ツール「トルクレオ」だ。同製品は、画像から百科事典の情報を検索できたり、AIが画像から問題を生成したりする。6月6日から6月8日に開催された「New Education Expo 2024 in 東京」の同社ブースにおいて、トルクレオが展示されていたので紹介しよう。

画像から「検索」もしくは「クイズ作成」が選べる

 トルクレオは、ブリタニカの百科事典のリソースを活用する学習教育ツールで、対象は小学1年生から6年生。スタート画面の[カメラで検索]をクリックすると、撮影した画像をその場で解析し、抽出した関連キーワードからブリタニカのオンライン百科事典の情報を得ることができる。

 また[カメラでクイズ]を利用すると、画像から抽出したキーワードをもとにAIが問題を作成する。問題は教科を選択することで、その領域に関連した4択問題を出題。表示される4つの選択肢は、「正解からの間違いの度合い」や「関連性」を変化できるので、学習効果をより高めることができるという。クイズに関する解説も表示されるほか、ブリタニカのオンライン百科事典で関連情報を調べることも可能だ。

クイズか検索かを選べる
写真を選ぶ
教科を選択する
クイズが出題される。問題の選択肢も簡単に判断できるものから間違いやすいものを配置

AIの曖昧さが子供たちを混乱させ、対話が生まれる

佐藤栄学園 教学本部教学推進課課長 さとえ学園小学校 科長の山中明岳先生

 このトルクレオを使うとどのような学習ができるのか。会場内の授業体験スペース「フィーチャークラスルーム」では、学校法人佐藤栄学園 教学本部教学推進課課長/さとえ学園小学校 科長の山中明岳先生が登壇した。

 同教諭はトルクレオについて、「ブリタニカ百科事典をデータベースとして安心して活用できるのはもちろん、トルクレオに搭載されたAIによって曖昧さを体験できることも学習のメリットだ」と語る。

 例えば、小学2年生の生活科の授業では、1年生に対して学校内を紹介するという活動でトルクレオを活用した。校内で自分が紹介したいところを写真に撮り、その画像をトルクレオが解析してキーワードを抽出し、クイズ形式で出題するという流れだ。山中教諭は、トルクレオが抽出するキーワードだけでなく、児童が見つけたキーワードを比較させることで違う視点が生まれると語った。

実証授業の様子(出典:ブリタニカ・ジャパン)

 また、AIによる解析では必ずしも正しい回答を得られないケースもあり、「AIの曖昧さが、子供たちを混乱させ、そこで対話が生まれる」と述べた。先生を撮ったら魚やバッタが出てくることもあったようで、「AIに間違いがあることを理解し、写真を上手に撮ると認識率が上がることを体験した」という。

2年生はAIの曖昧さと百科事典の情報を比較した
2年生が1年生に学校を紹介することを、AIでやってみる
2年生はAIの特徴を自ら体験して覚えていく
2年生がトルクレオを使って得たもの

 山中教諭は、児童がAIについて学ぶ学習効果もあったほか、自分の想像通りにならないことに戸惑うことがあった語る。トルクレオに触れることで、間違えることが悪いことではないと気づき、失敗を乗り越える姿も見られたとしている。

トルクレオを体験した児童の「気付き」

高学年は深い学びにつながるツールとして生かす

 続いては、会場と同校の教室にいる小学5年生・6年生をそれぞれオンラインでつなぎ、児童たちがトルクレオを使う様子が中継された。5年生・6年生はこの日、トルクレオを使うのが初めてだという。

 5年生は「埼玉県を北関東と南関東に分ける」という社会の授業で活用した。埼玉県の地図を撮影して、同県に関するクイズをトルクレオで作成し、次々に問題を解いていった。児童たちはこの日が初めて使ったとは思えないほど操作もスムーズで、「近未来的」「勉強が楽しくなる」「間違っても正解がすぐにわかるのがいい」などの声があった。

5年生は埼玉県の地図を撮影し、トルクレオで作成した埼玉に関するクイズを実施

 6年生はICTに長けた児童たちが、総合的な学習の時間でトルクレオの活用方法を見付けるプロジェクトに挑戦した。 児童は初めて触るトルクレオを使って、教室内のさまざまなものを撮影し、「ひとつの写真からいろいろ出てきてすごい」という感想が聞かれた。山中先生は、6年生が取り組んでいるビオトーププロジェクトで、トルクレオを活用する方法をまとめたプレゼンテーション用資料を作ることを次週までの宿題として指示した。

6年生は事前説明なしにトルクレオに触って、どう活用するかを試す。活用は次週までの課題となった

 そして、さらに、この登壇から1週間後の6月14日に開催された「New Education Expo 2024 in 大阪」でも、同校の授業が中継された。

 5年生は定期テストに向け、社会科の地方学習に関する総まとめ中。トルクレオで地図帳のさまざまなページを撮影して問題を出し、次々に解いていった。地図とは少し異なる問題が出題されることもあるが、山中先生は、知らないことを学べる「本当の学び」として評価した。

 クイズの問題を解いた5年生に感想を聞くと「間違えても正解がわかるから便利」や「思ったのと少し違った問題が出ることで、別の勉強になる」などの声が聞かれた。同先生は、授業のめあてや狙いについて、「AIの曖昧さ」によって違う視点が出てくることを期待しているという。

 次に、6年生の教室を中継。東京会場でも登場したビオトーププロジェクトを進めるグループ児童6名が自ら作成したプレゼンテーションのスライドをその場で発表した。「探究活動に使える」「ICTスキルアップ」「物事を深く調べる力を育てられる」というテーマとともにトルクレオの特長と活用方法を発表。屋外のビオトープで写真を撮影し、トルクレオで関連情報を検索する様子が映し出された。

 同セミナーの参加者からは「ビオトープに配置する植物を撮影し、その植物が登場するほかの物語や絵画などを展示装飾物のコンセプトに採用する」「図工の授業において、制作途中の状況を撮影してアイデアを広げたり、制作物の方向性を検討するのも楽しそう」「社会で歴史を教えるときに、メモリーツリーの作成に使えそう。そこで登場したキーワードをさらに探究できそう」といった意見やアイデアが寄せられた。

「New Education Expo 2024 in 東京」で開催されたセッションの様子

 短時間ではあったが、トルクレオは子供たちの知識の習得を促し、自分の身の回りにある興味や関心を学びにつなげられるツールとして活用されていた。セミナー参加者の反応を見ても、授業や探究学習を助けてくれるツールとなりそうだ。