【連載】EducAItion Times
中学生起業家の挑戦、AI時代の教育をつくる!!
2024年12月13日 06:30
2024年7月に、中学2年生の娘が教育AI事業で起業をしました。今回は娘が体験した、社会の課題を自ら見つけ、解決する力を育む「アントレプレナーシップ教育」と、子供のAI活用について紹介します。
起業家体験プログラムとの出会い
娘が起業に興味を持つきっかけとなったのは、学校の授業で行われた起業家体験プログラムでした。
起業家体験プログラムは、社会問題の解決を目的とするソーシャルビジネスを学ぶための教育プログラムです。単に利益を追求する起業ではなく、社会をより良くするための手段としての起業を学びます。生徒たちは、自分たちの気になる問題を見つけ、解決するために会社を立ち上げるプロセスを体験し、仲間と共に事業プランを作り上げ、発表することで実践的なスキルを磨きました。
プログラムでは、まず起業家講演を通して起業へのきっかけや実際の事業体験を聞き、アイデア発想のワークショップで具体的な解決策を考える方法を学びます。その後、チームビルディングや解決策のブラッシュアップを行い、最終的には自分たちの考えた解決策を発表します。発表では、評価基準に基づいて経営者やメンターからフィードバックがあり、生徒はさらなる学びを得る機会を持ちます。
この過程で、娘は「自分の意見を伝えることの難しさや、他者との協働の大切さを学んだ」ということでした。これらの経験が娘の中で大きな成長を促し、「もっと深く起業活動に取り組みたい」という強い意欲を持つようになりました。
日本最大級のスタートアップ支援拠点STATIONAiとの出会い
娘のさらなる挑戦として、2024年10月に開業をした日本最大級のスタートアップ支援拠点STATION Aiが運営する学生起業家育成プログラム「STAPS」に参加しました。
このプログラムでは、実際に起業を目指す大学生たちと共に、1か月半にわたる全6回の講習を受講し、ビジネスモデルの作成、市場調査、マネタイズなどを考えます。それをプロの起業家などから直接アドバイスを受け、ビジネスプランをブラッシュアップする流れです。ここでは、ビジネスマナーも学ぶことができ、初めての名刺交換を経験してとても喜んでいた光景を鮮明に覚えています。
そしてプログラムの最終段階ではピッチイベントが開催され、自らのビジネスアイデアをプレゼンテーションしました。その結果、娘は特別賞を受賞することができ、多くの方から高い評価をいただくことができました。この受賞は娘にとって大きな自信となり、さらなる挑戦への原動力となりました。
起業体験から、生徒たちが「起業部」設立へ
ここまでの活動を受けて、娘をはじめとした起業家体験プログラムを受けた生徒たちが声をあげ、起業部を設立しました。
起業部では、ビジネスの基礎を学ぶことはもちろん、アウトプットを重視した活動に取り組んでいます。具体的には、ビジネスコンテストやプレゼンテーション大会への参加、外部企業との協働イベントの開催などを通じて、社会との関わりを大切にしています。また、普段の活動では、世の中の課題について考え、部員同士でアイデアのブラッシュアップや発表練習なども行います。
部活動の連絡手段として、保護者を含めた全員がチャットサービス「Discord」を活用してコミュニケーションをとっています。主に情報共有やオンラインミーティングに使用していますが、Discordは利用規約上13歳未満の利用に制限があるため、特に中学1年生(12歳)については、保護者と一緒にツールの使い方を学び、操作は保護者が行っています。
AIイベントに中学生も参加、学校では生成AIの課外授業も
STAPSの受賞をきっかけに、娘はさまざまな方からお声がけいただくことが多くなりました。その中で大きな転機となったのが、「生成AI EXPO in 名古屋」への参加です。運営のIKIGAI lab.の方から「AIに興味はありませんか?」とイベントへの誘いを受け、娘と私は運営サポートを務めることになりました。
娘は開会式と閉会式のモデレーターを担当し、この経験は娘の自信をさらに高め、コミュニケーションスキルの向上にもつながりました。私自身はエンジニアですが、AI分野にはこれまで触れてこなかったので、娘と一緒に「AI学校1年生」として新たな学びを始めました。
また、生成AI EXPOへの参加をきっかけに、IKIGAI lab.の運営メンバーを中学校の先生に紹介したところ、2ヶ月後には生成AIを活用した課外授業を実施することになりました。この授業は、ChatGPT、にじジャーニー(画像生成)、SunoAI(音楽生成)の活用方法が紹介されるという内容で、参加は強制ではありませんが、100名近い生徒が受講しました。実際に生成されたものを生徒たちが見て、歓声がなりやまなかったのを記憶しています。
そこから3カ月後の学校祭では生徒たちが、それぞれ生成AIの活用法を考え表現をしていました。作品も、画像生成したものをただ使うのではなく、生成した画像の風景にいる生物を風景画像に貼ったり、射的ゲームの的などに活用したり、教室で流れている音楽にもAIが使われていました。クラスごとに生徒たちの異なる発想が見られて楽しむことができましたし、先生方の新しいものを取り入れる熱意にも驚かされました。
「AI時代の教育を創る!!」をビジョンとして掲げ起業
娘は、ビジネスとして本格的に活動していきたいということで、まずは個人事業主として「EdFusion(屋号)」を開業しました。
最初のサービスとして、「にこるのAIアフタースクール」を開催しました。このサービスは娘が学校が終わった後に行うことで名付けられました。ここでは、AIの活用法として音楽生成や画像生成、動画生成などを使い、チラシやプロモーションビデオ、Webページをハンズオン形式で制作します。初めて有料サービスとしての提供でしたがお客様が集まり、ビジネスとしての一歩を踏み出しました。そして最近は、休日に「にこるのAIホリデースクール」も開催しています。
経験したことをベースに、世の中に向けて発信
起業部の活動は、さらに活発になり、世界青少年『志』プレゼンテーション大会に挑戦することになりました。この大会は、みんなとインターネットで検索していた際に見つけたものです。2024年6月にプレエントリーし、2次審査を通過するとファイナリストに選出されます。2024年は約2,600名の応募があったようで、ファイナリストに選ばれると、総額100万円以上の研修プログラムに参加し、プレゼンテーション力(話し方・ジェスチャーなど)を磨くことができます。
娘はファイナリストに選ばれ、何度も何度も資料をブラッシュアップしたり、タイミングが合えば、私がお客さん役やタイムキーパーをしたりと練習を重ねました。そして、11月に東京にて行われた大会当日では、自身の志とその背景、行動計画を5分間のプレゼンテーションで発表。テーマは「AI時代の教育を創る」で、起業家体験プログラムや生成AI EXPOなどのきっかけから、今後の展望を世界に向けて発信しました。そして、その声が届き、最優秀賞を受賞。「本当にやりたいこと」の志を堂々とやり切った娘の姿を見て感動しました。 発表の様子はこちらになります。
ここまでを通して、さまざまな教育のカタチを見てきましたが、娘や子供たちの姿を見て「一歩踏み出す勇気」がとても大切だと思いました。AI時代で変化が激しい今、大人も新しいことに向けて一歩踏み出す挑戦をしていきたいものです。