【連載】EducAItion Times

生成AIを使わなくても仕組みを学べる、ことば遊びのワークショップ

EducAItion Timesは、「大人のきぼう こどもの未来」をテーマに、生成AIの活用情報をお届けします。本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」のメンバー8名が運営するもので、子供たちの好奇心を刺激する、新たな学びの提供をめざしています。

今回は、ChatGPTなどの生成AIを全く使わずに、生成AIの仕組みを学べる「ことば遊び」のオリジナルワークショップをご紹介します。コミュニケーション力と言語化力を育むことにつながる活動です。

ChatGPTの仕組みを簡単に説明すると?

ChatGPTは、AIが学習した膨大な言葉の中から関連性のある次の単語を予測し、「最も確率の高い次の単語を選ぶ」という仕組みになります。この仕組みを大規模言語モデル(Large Language Models、LLM)といいます。

「むかしむかし」の後に続く言葉は「あるところに」が多いとAIが判断

人間同士の会話でも相手に伝わる言葉で且つ、会話がつながる言葉を選んで話をしていることを考えると、生成AIの推論と人間の会話の仕組みは共通点があるとも言えます。もう少し詳しく見てみましょう。

LLM(大規模言語モデル)と呼ばれるAIモデルが、大量のテキストデータを学習することで文章の生成や要約、受け答えを可能にしている
「赤い果物」の次に来る言葉の中から、確率の高いものを生成する

ChatGPTなどの仕組みを3Dアニメーションで理解ができるウェブサイトがありますので、ぜひそちらもご覧になってみてください。

生成AI体験ゲーム、ワークショップの概要

このワークショップは、6歳以上の全年齢に対応できるものであり、生成AIを使う前の入門として最適な内容となっています。4人程度のグループで行うのが理想で、大人が加わっても面白くなります。

ワークショップを通して、生成AIの推論の仕組みを体感することができ、同時に誰かに相談したり、お願いしたりするときに大切な「わかりやすく伝えること」が学べます。作成の過程を通じて、楽しみながら他者とコミュニケーションをとり、生成AIの仕組みであるLLMの理解を深めていくことがワークショップの目的です。

ワークショップのゴール

このワークショップで学びとメリットになることは3つあります。

1.グループメンバーの関係性が深まる
2.ゴールを決めることの重要性
3.わかりやすく端的に話すことの重要性

1は、ザイオンス効果(単純接触効果)による関係値の深化になります。

2については、このワークショップで最も重要な気づきになるポイントです。今後、生成AIを使う時に最も大切になる「ゴールを決めること」について(詳細は後述)、より効率よく生成AIを利用するために必要不可欠な考えです。

3は、ワークショップを円滑に進めるために大事な要素になります。初めはうまくいかなくても数回続けると成功体験として経験が積まれていくようになります。

ワークショップの流れ

ここからは実際にワークショップをどう進めるのかについて解説します。

●1回目(まず答えてもらうことが大事)
初めは話しのゴールを決めずに、ことば遊びを開始します。

「むかしむかし」「あるところに」「おじいさんと」「ねこがいました」という具合に、4人それぞれが言葉を選び話をつなげる

初めは恥ずかしがりながら回答する子どももいるかと考えられますが、徐々に答えるようになっていきます。

回数を重ねることで、楽しみながら様々な言葉を結びつけることができるようになります

1回~2回ずつ答えたタイミングで流れを止めて、1人目がどんな話を想定していたのかを発表します。

どのグループも1人目が想定していた話の内容と比べて、個性のある内容になるかと思います。最初はぎこちなさを感じるかもしれませんが、まずは楽しみながらやってもらうことが大切です。

そして2回目の体験ゲームに移ります。昔話の内容でも良いですし、他の内容でももちろん構いませんが、他の参加者たちが分かる話であればなお良いです。

●2回目(ゴール例:日本の代表的な昔話をつくる)
2回目は1人目がワークショップで紡ぐテーマを決めて、メンバー全員に発表してから再度ワークショップに取り組みます。話の途中の内容が異なる部分もありながら最終的なゴールがイメージしていた内容と同じものになるはずです。

以下は「ももたろう」をテーマに展開した場合の一例です。

2回目は「ももたろう」をテーマに実施
細かい部分は異なっていても、話の流れが「ももたろう」になっていればOK

上記は一例ですが、「ももたろう」の細かい内容は異なっていても構いません。「ももたろう」としての話の流れになっていれば、ワークショップは大成功です。

ちなみに、同じことば遊びをChatGPTで行った場合、このような結果になります。

1回目:テーマなし

1回目「テーマなし」の場合

2回目:ももたろうがテーマ

2回目「ももたろう」がテーマの場合

途中の内容は違っていいの?

今回のワークショップは途中の内容は全て違っていても大丈夫です。

2回目でゴールを決めている時点でそのゴールになるような話しの流れを作ることが大事です。

例えば、「ももたろう」を連想して最後は「鬼と和解する」をテーマにした場合、登場キャラクターが「イヌ」「サル」「キジ」でなくてもいいのです。

「誰も登場しない」や、あるいは「ウォンバット」「マヌルネコ」「ジンベエザメ」の3体の子分が登場してもよいのです。

大切なことは、「豊かな想像力の最大化」と「指定したゴール」に到達することです。

ワークショップで得られるもの

このワークショップで得られるものは、ChatGPTなどのテキスト生成AIに対する基礎的な理解です。そのため、無理に物語の大筋通りに完成させる必要はありません。

ワークショップで最も大切なことは、ChatGPTなどの仕組みになる「予測しながら答えること」をグループワークで体験することと、「ゴールを決める大切さの理解」の2点になります。

実際に「ChatGPT」を利用すればいいのでは?

13歳以上を対象とするのであれば、初めての生成AI授業でグループワークをして基礎を学ぶことには何ら問題はありません。対象が12歳以下になると状況が異なります。

ChatGPTを提供しているOpenAIの利用規約には13歳以上は保護者の許可が必要と明記されています。つまり、小学生の間は、利用規約上ChatGPTに触れることが認められていません。そのため、保護者が操作をしてその結果を確認することが重要になります。

ChatGPTの利用規約より「最低年齢」に関する抜粋。本サービスの利用に同意するには、13 歳以上、またはお住まいの国で定められた最低年齢に達している必要があります。18歳未満の場合は、本サービスを利用するために親または法定後見人の許可を得る必要があります

小学生はすぐに生成AIを使わなくていいのでは?

利用可能な生成AIとしてMicrosoftが提供している「Microsoft Copilot」が小学生の教育支援サポート活動を行なっています。「Microsoft Copilot」は保護者の許可があれば利用可能です。その根拠は2つの利用規約をまたいで見ることで詳細がわかるようになっています。

まずは「Copilot AI エクスペリエンスに関する規約」の内容に準じた利用が求められます。

更に、年齢等の利用にあたっての資格や使用条件は「Microsoftサービス規約」の中にある「お子様とアカウント」を参照します。

「お客様が、未成年者の親権者または法的後見人である場合、お客様および未成年者は本規約に拘束されることに同意するものとし、未成年者のアカウントが現在開設されているか後で作成されるかにかかわらず、Microsoft アカウントまたは本サービスの使用 (購入を含みます) のすべてについて責任を負うものとします。」と表記されています。

以上のことから、利用規約では親権者または法的後見人が未成年者のアカウント使用に関する責任を負うことを明確にしています。したがって、親が作成したアカウントで子供が操作することは、親がその使用に同意し、責任を持つ限り問題ないと考えることができます。

生成AIの仕組みについては、ChatGPTなどの特定のサービスを使用しなくても、今回紹介したワークショップで理解することにつながります。是非試してみてください。

IKIGAI lab./伊藤 雅康

「studio veco」代表。クリエイティブ分野と教育分野を軸に生成AIの研修を学校や企業に展開している。名古屋を中心に親子で体験する生成AIイベントを多数開催。NewsPicks TOPICS 「IKIGAI Lab.」執筆。IKIGAI Lab.:140名のメンバーが所属する生成AIコミュニティ。監修:髙橋和馬・田中悠介。編集:新谷信敬。