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「ただ預かる」から「育てる放課後」へ、NPOが明かす居場所づくりの改善と効果
2025年5月30日 17:00
特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクールは、放課後児童クラブにおける「居場所の質」が子供の成長や行動にどう影響するかを可視化するため、全国11拠点で観察調査を行った結果を公表した。
同調査は、2024年6月から2027年3月末まで進行中の一般社団法人エビデンス共創機構との共同研究の一環として実施したもの。各施設では「保育環境評価スケール④放課後児童クラブ(SACERS※)」を利用したアセスメントを2回実施し、子供本人の声と科学的な観察評価を組み合わせて環境の質を測定した。
※SACERS:親以外によって提供される小学生への放課後のケアの環境の質を7領域(空間と家具、健康と安全、活動、相互関係、育成支援計画、研修、特別支援)47項目のスケール(指標)で測定
・保育環境評価スケール④を用いた観察評価によるスコアリング
・施設職員(支援員)へのアンケートとインタビュー
・施設利用児童や保護者へのアンケート
・子供の強さと困難さアンケートを用いた児童の観察評価(支援員によるランダムに選んだ児童の観察)
放課後NPOアフタースクールによると、放課後の居場所に関して「量の確保」が進む一方で、子供が「行きたくない」と感じるケースもあり、一部では子供が「居たい・行きたい・やってみたい」と思える場になっていないという。
調査では、SACERSを利用して放課後の居場所を「空間」「活動」「人との関わり」などで多角的に評価。SACERSの評価で「最低限の水準(3.0)」を下回った項目が全拠点に共通する課題として明らかとなった。
統計分析の結果では、SACERSのスコアが高い拠点ほど、子供が「楽しい」「安心できる」「自信が付く」といったポジティブな気持ちを多く感じており、SACERSのスコアが高まると、問題行動(情緒面・行為面)が統計的に有意に減少することも確認されている。
調査対象となった拠点の半数近くでは、定員の増加に対応するため、学校の空き教室など、本来放課後の居場所として設計されていない環境を活用しており、スペースや設備面での課題を抱えていた。そうした中でも、SACERSの指標を活用することで改善点が明確になり、職員同士の認識共有や子供への対応方法に変化が生まれたという。
・「ラベリングで片付けのルールが明確になり、子供たちが自分で戻すように。現場の負担も減りました」(統括責任者)
・「SACERSの観点を通して、職員間でも『どこに課題があるか』が共有でき、対話が進むようになった」(運営事業者)
放課後NPOアフタースクールは、こうした現場の声が限られた空間や人員の中でも、少しの視点の変化や工夫で改善が可能であることを示す実例として、「子供とともにつくる居場所づくりへの一歩」となることを強調した。
放課後NPOアフタースクールでは、SACERSを基盤とした自己評価ツールの開発と導入支援のほか、改善事例の普及、政策提言資料としてのとりまとめを進める方針で、放課後の居場所の質向上に向けた取り組みを加速させていくとしている。