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能登地震で被災した子供の心をケア、石川県珠洲市・能登町の全小中学校がチャット窓口「ブリッジ」を導入

被災地の児童生徒が、1人1台端末で利用できるチャット相談窓口「ブリッジ」

石川県珠洲市と能登町は、認定特定非営利活動法人カタリバが運営するチャット相談窓口「ブリッジ」を全小中学校に導入し、教員や保護者向けのチャット相談窓口を同時に開設したことを発表した。これらの相談窓口を活用することで、震災者の心のケアや問題の早期発見を目指す。

ブリッジは、学校から配布されるタブレット端末やパソコンから直接利用可能で、「ブリッジさん」と呼ばれるキャラクターが、児童生徒の相談に応答。キャラクターと会話する感覚で続けて会話できることが特徴だ。児童生徒から寄せられた相談には、心理士や精神保健福祉士などの有資格者や元教員、元児童養護施設職員など、経験が豊富な相談員がコミュニケーションを図る。

チャット相談窓口「ブリッジ」

能登半島地震から約1年が経過した現在、復興や被災状況の格差などを背景に、PTSDなどの症状が起こりやすい時期であるといわれている。

文部科学省は、これまでに150名を超えるスクールカウンセラーを各自治体の学校に派遣し、児童生徒の心のケアに取り組んでいる。しかし、スクールカウンセラーは派遣期間が限定されており、各校を巡回して相談にあたるため、児童生徒の日常的な相談は教員が担うことになる。

通常の教育活動に加え、被災した児童生徒の心のケアを担うことへの負担は大きく、教員自身も被災者である場合も少なくない。教員からは、「一見すると元気そうに見える児童生徒が多く、悩みがあるかどうかがわからない」「子供の心にどう寄り添ったらいいのか」という声が寄せられている。

カタリバでは、2023年にブリッジの提供を開始。石川県加賀市では、導入から半年間に約1,100人から相談が寄せられた。そのなかで要配慮・緊急通報につながる事案は、130件。その半数の約70件が学校で把握していない事案であった。珠洲市と能登町では、開始約1カ月でいじめや友人関係・勉強への不安など、64件の相談が寄せられた。また、いじめで悩んでいた児童生徒がブリッジで相談し、悩みが解決したという事例も報告されているという。

カタリバは、周囲に心配をかけたくない思いから、大人と対面で悩みを話すほどではないが、もやもやする気持ちから「何となく誰かに構ってほしい」と考える子供たちに寄り添うと表明している。