コラム

学園祭をオンライン配信、学生が1から勉強して映像配信に挑戦

早稲田大学の配信事例

学校現場では、コロナ禍の対応をきっかけに、多くの授業や学校行事がオンラインで配信されるようになったほか、さまざまな学習活動がリモートで実施されるようになりました。一方で、オンライン配信の利用が増えたことから、児童生徒や保護者、先生の中にはより高いクオリティの配信を望む声もあがっています。本稿では、学校現場でも愛⽤者が多い映像機器関連メーカー「Blackmagic Design (ブラックマジックデザイン)」にご協⼒いただき、様々な学校での配信事例をご紹介していきます。

今回は、「私学の雄」と称される早稲田大学の取り組みを紹介します。2022年11月に開催された早稲田祭では、対面および配信のハイブリッド形式で学園祭が行われました。その時の様子を早稲田祭2022運営スタッフの中川莉沙さん、石橋聖輝さん、星野凜さんに話を聞きました。

約20万人が訪れる学園祭をハイブリッド形式で配信

早稲田祭は、例年約20万人の来場者が訪れる大規模な学園祭です。2020年はコロナ禍のため初めてオンラインで開催し、2021年、2022年はハイブリッド形式で実施しました。2022年は入場者数に制限を設ける形になったものの、3年ぶりのリアル開催となり、約6万人の来場者が参加。当日行われたイベントのうち、20前後のイベントが配信されました。

大隈記念講堂の管弦楽団コンサートを「Blackmagic Studio Camera 4K Pro」で撮影

早稲田祭の運営スタッフは、約600名のメンバーが在籍し、8つの局で構成されています。その中で配信や撮影などを専門とする中心メンバーはたった5名ほど。あとは他の業務と兼務して配信周りを担当するメンバーが数名いる程度だといいます。

運営チームは、さまざまなサークルと協力して早稲田祭を作り上げています。一部、運営チームによる企画もありますが、基本的にイベントを企画したり、タレントなどに出演交渉したりするのは別団体が担当し、実際の運営やプラットフォームの提供をするのが運営チームと役割となります。早稲田祭は、完全に学生主体のイベントで大学側が関わることはほとんどなく、コスト面でもサークル費や企業からの協賛などで賄っているそうです。

早稲田祭の運営チームのメンバー(左から中川莉沙さん、石橋聖輝さん、星野 凜さん)

学生の初心者にも扱いやすいBlackmagic Design

そんな早稲田祭では、メインの講堂(大ホール)や小さめの講堂(中ホール)で開催される企画、その他の教室を使った企画などでBlackmagic Design製品が多く使用されました。

その理由について、運営チーム渉外局の星野凜さんは、「運営チームのメンバーのほとんどは、1から配信や撮影について学びます。そのような私たちにとって、Blackmagic Designのスイッチャーは、初心者でも直観的に扱えて使いやすいことがメリットでした」と語ってくれました。

早稲田祭当日の配信環境としては、「Blackmagic Studio Camera 4K Pro」を3台、「ATEM Mini Extreme ISOスイッチャー」とコントロールパネルの「ATEM 1M/E Advanced Panel」、スイッチャー側でカメラを遠隔コントロールできる「ATEM Camera Control Panel」、映像確認用の「SmartView 4K」や映像確認用の「Video Assist 12G HDR」のほか、コンバーター製品などを使用しました。

また小規模の配信用に、「ATEM Mini Proスイッチャー」や「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K」も複数台使用。また、イベントの様子の撮影にも「Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K」が使われました。

講堂でコンサートを配信する環境

参加対応局の石橋聖輝さんは、「私は配信やカメラ周りの担当で、ATEMスイッチャーのベーシックな機能は2021年の早稲田祭の時に勉強していました。 今回、Blackmagic Designのカメラに関しては初めて使ったのですが、連動がスムーズでかなり使いやすかったと思います」と話してくれました。カメラ4台を使用して配信した大ホールの企画も、ATEM Camera Control Panelを使ってカメラの調整や映像の切り替えをスイッチャー側で操作できた点がとても使いやすかったと評価をいただいています。

中ホールでも同様に、Blackmagic Pocket Cinema CameraとATEM Mini Proスイッチャーで配信が行われました。どちらの講堂でもカメラは基本的に定点カメラとして設置して、実際の操作はそれぞれ1名または2名で担当し、ズームや色調整をスイッチャー側で操作しました。

石橋さんは講堂で開催されたオーケストラのコンサート配信について、「照明によってホワイトバランス、つまり、白が正しい白に見えなくなってしまうことがあります。それをリアルタイムで調整できる点がすごく高性能だと感じました」と語ってくれました。

リアルタイムでホワイトバランスを調整できる

早稲田祭の様子をDaVinci Resolve Studioで編集

また、今回は早稲田祭のプロモーションビデオも作成されました。Blackmagic Pocket Cinema Camera 4Kを使って広報制作局の中川莉沙さんが撮影し、「DaVinci Resolve Studio」で編集、初めてカラーコレクションにも挑戦しました。

「他の編集ソフトを使って動画を編集をしたことはありましたが、カラーコレクションまでやったのは今回が初めてでした。色の調整は難しかったですが、ソフトウェア自体は使いやすかったですね」と中川さん。星野さんは早稲田祭を振り返り、「当初の想定よりも高いクオリティで配信を実現することができました」と話してくれました。

コロナ禍で大学のイベントも変わっており、オンライン配信自体はめずらしいものではなくなりました。しかし、映像配信の役割を担う学生は年々変わっており、学生が扱いやすい配信機器を整備するのは大切だといえます。早稲田大学では、そんな環境の中、学園祭を多くの人に見てもらおうと主体的に映像配信に関する知識やスキルを学んでいく学生たちの姿が印象的でした。

荒井 幸子(Blackmagic Design)